ぷろろーぐ
ホラー要素に力を入れたラブコメが書きたくて始めました。
おそらくぬるいものしか書けないとは思いますが、ギャグホラーといったような路線とは異なるので、ガチホラーが苦手な方はお気をつけて。
後々はそれなりにえぐい描写なんかもいれていこうと思っていますので、そちらもご注意ください。
では、全体的に生ぬるくなりそうですが、よろしければお付き合いください。
その図書室には、不思議な噂があった。
1.夜8時以降、その図書室で一人になってはいけない。
2.真っ赤な背表紙の本に、触れてはならない。
3.赤い文字で書かれた本を、開いてはならない。
4.欠番
5.図書カードの謎を追ってはいけない。
6.司書室の鏡に話しかけてはならない。
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急がなければ――
早く早く!
少女の頭を占めるのは、その一心であった。
時計を見れば、7時55分。
もう後5分で完全下校時刻となってしまう。
つまりは学園敷地内が無人になる。
実際には教師やら警備員やらがいるのだろうが、少女にそんなことは関係なかった。
今、自分がいるこの場所で一人になってしまうという事実が、酷く恐怖を与えていた。
早く早く!
ひたすら焦りは増していた。
早まる歩調の傍ら、すれ違う人影はない。
それもそのはず、部室棟付近ならまだしもここは特別棟。
行事も何もないこの時期、こんな時間まで校舎に残っている生徒など皆無であろう。
そういった事情は分かってはいたが、決して少女は走らなかった。
本音を言えば走りたかったのだろうが、彼女は走りはしなかった。
少女の持てる全力で、“歩く”のみ。
もしも万が一誰か生徒が残っていて、放課後の校舎を全力疾走する姿など見られては、自身の尊厳に関わる。
その懸念が、今すぐにでも走り出したい少女の感情を抑えつけていた。
ゆえに彼女はひたすら“歩く”。
無人の廊下には、当然明りなど存在しない。
あるのは非常灯の不気味な光のみ。
真っ暗な教室と薄暗く照らされる廊下の先。
自分の足音さえ響いて恐怖を煽る。
全く中が見えない教室を、少女は意識して視界から閉めだした。
そうでなければ今すぐにでも立ち止まってしまいそうだったから。
この暗い廊下で止まるわけにはいかないのだ。
もちろん、ここで引き返すわけにも。
そんな自身の難儀な性格を嘆く間もなく、少女は目的の場所に到着した。
『図書室』
その文字を目にした時の心境といえば、計り知れないだろう。
何より、真っ暗な校舎でその教室は煌々と明かりを放っていたのだ。
少女にとっては、その事実がどれほど心強かったことか。
自分以外の人間がいるというだけで、これほど安心する。
そんな感想を胸に宿し、少女は重たい扉を開けた。
真っ暗な校舎で、そこだけ光を放つ図というのも十分不気味であることなど、少女の頭からはすっかり抜け落ちていた。
そして、得てして怪奇が始まるのも、そういった“不気味な”場所であるということも――