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Transmigrate to Dragon  作者: 八部伍型
9/15

09 重傷

この度はTransmigrate to Dragonを開いて頂きありがとう御座います。

 間が空いてしまって申し訳ございません。2週間ほど研修と言う名の監禁されてました。それではお楽しみいただけたら幸いです。

「う、う~ん・・・。」


 ケーフィヴが目を覚ますと見慣れない天井だった。

 ここはどこだ?と寝ぼけながらも思い、身体を起こそうと・・・


「いたたたたたっ><」


 身体を起こそうと腹筋に力を入れたら、上半身がピキィと例えようの無い痛みに襲われた。

 身じろぎすると更に痛みが長引くのでジッと痛みを我慢する。

 15秒位だろうか、なんとか痛みが引いてきた。


「ふぅ~、って、いたたた。深呼吸でこの痛みか・・・。どうなってるんだ?」


 見慣れない部屋の中で、身に覚えのない痛みに首を捻っているとガチャッと戸が開く音がした。

 ミリィがお盆に桶とタオルを持って入ってきた。

 そして、そのまま俯きながら、こちらに歩いてくる。

 俯いて歩いているからか、まだケーフィヴが起きている事に気付いていないようだ。

 なんとなくそのまま見ていたら、ベットまであと5,6歩と言う所で目が合った。


「・・・っ!」


 バシャアッ


 ミリィは目が合った瞬間ビクゥッと、まるで信じられない物でも見たかのように目を大きく開け、硬直しお盆と取り落とした。


「お、おい、ミリィ。落としてる落としてるっ。」

「・・・ケ・・、ケーフィヴ様・・・、お目覚めに・・・?」

「え?う、うん、ついさっき起きた所だけど、それよりもミリィ、このじょうた・・」

「お、お嬢様達にお伝えしてきますっ!」

「え?ちょっと!ミリ・・ィいたたた。・・・こぼしたまま片づけもしないで・・・、あんなに慌てて・・・。何がどうなっているのか聞きたかったのに・・・。」


 しばらくするとミリィが開けっ放しで出ていったドアの向こうの廊下からパタパタと急ぎ足で近づいてくる音が聞こえた。


「ケーフィヴ!」「ケーフィヴッ!」「「「ケーフィヴ様っ」」」


 それぞれが自分の名前を口々にしながら、慌てて入ってきた。


「ケーフィヴ・・・、よかったわ。本当に目を覚ましたのね・・・。」


 まず、メラニーが左の目じりから、涙を零しながら声をかけてきた。


「メラ姉・・・、うん、もう大丈夫だよ。」

「もうっ!何がもう大丈夫よっ、4ヶ月も目を覚まさなかったくせにっ!」

「えっ!俺、そんなに寝てたの?イェ姉?」

「本当ですよ、ケーフィヴ様。あなた様は登校初日にいきなり瀕死の重傷を負われまして、それ以来ずっとお伏せになられていたのです。」

「ペリィ・・・。そうか・・・俺は瀕死だったのか・・・。」

「ええ、本当に危ない状態でした。幸いにして、発見は早かったのでASM協会《われわれ》でなんとか一命を取り留める事が出来ました。ケーフィヴ様がお目覚めになられたので、ひと安心です。完治までは竜族の治癒能力を以てしても、まだまだかかるかと思われますが・・・。」

「あっ!そうだって、いててててぇ・・・。」


 重傷を負った時の事を思い出して、思わず起きようとしてしまった。


「ちょっと、ケーフィヴ。無理しないの!あんたはまだ重傷なんだからっ。」

「ああ、ありがとう、イェ姉。思いだしたんだ、その重傷を負った時の事。正確に言うとその直前の事だけどね。」

「そう・・・、思いだしたのね・・・。それで、その・・・貴方に重傷を負わせた女性なんだけどね?」

「あ、やはり、あの時の火竜族の女性にやられたんだ・・・。」

「え?う、うん、そうよ。それで左上半身の骨は粉々にされて内臓破裂。竜族でなかったら、ううん。ケーフィヴは雄の中でも割と強い方だったのね。たぶん、そのおかげで何とか生き残れた・・・。本当によかったわ・・・。」

「メラ姉、ありがとう。今は起き上がれもしないケド、もう大丈夫だから。ね?」


 ベッドの横の椅子に腰かけて、涙を流すメラ姉に右手をなんとか差し出すと、両手で包んでくれて頬ずりしてくれた。嬉し恥ずかしい。


 そんな様子を見ていたハシャが声をかけてきた。


「お嬢様方。ケーフィヴ様もお目覚めになられたばかりですし、あまり無理をさせてはいけません。今回はこの辺にしておいて、またご夕食の後にでも伺いましょう。」

「そうね、無理させちゃ元も子もないし。さ、メラ姉。ケーフィヴをゆっくり寝かせてあげよう?」

「え?!うん、そうね。ごめんなさいね、ケーフィヴ。またあとで様子を見に来るわね。」

「あ!・・・うん、分かった。確かに疲れたかも・・・。また、あとでね。みんなありがとうね。」

「ううん、ケーフィヴが無事で何よりだよ。」

「ええ、何度も言うけれど、本当によかったわ。」

「当然の事をしたまでです。それでは、お大事に。」

「ケーフィヴ様、ちゃんとジッとしててくださいね?」


 カチャン。

 ドアが閉まった。

 みんなそれぞれ声をかけてくれてから出ていった。

 聞きたい事や気付いた事がいくつもあったのだが、頭の中でまとめきる前に切りあげられてしまった感じだ。

 自分には突然の事でも、みんなにしたら4ヶ月ものことだしな・・・。

 勢いに押し切られちゃっても仕方がないか。

 ここが、姉達の屋敷だってことも分かって安心したし。

 少し寝て、起きたらキチンと整理しておこう。

 夕食の後にまた、来てくれると言っていたしね。




◇ ◇ ◇




「ケーフィヴ起きてるー?」


 ガチャリとノックもせずに、相変わらずちっちゃい姉が入ってきた。

以前はショートカットでボーイッシュな印象だったが、最近もう少し延ばしてツインテールにしている。

 カワイイ。純粋にかわいい。愛でたくなる感じだ。


「む!ちゅっとケーフィヴ!なんか変な事考えてなかった?今!」

「まさか!相変わらずのイェ姉だなって思っただけだよ。」

「ふむ・・・、まぁいいわ。それより調子はどう?」

「目覚めた昼と変わらないよ。半日も経ってないしね。相変わらず身体は動かせないけれど、ジッとしていれば痛みとかはないから。」

「そう・・・。頭痛とか眩暈とかは?」

「それもないね。今のところは。」

「ならいいわ。早く直しなさいよね。制服だってちゃんとアンタに合うの用意したんだから。」

「ははっ、そういえば、制服を取りに生徒会室に行ったんだったね。」

「うっ・・・、そ、そうよ。だから早く直しなさい。もうすぐ、メラ姉も来ると思うし。」

「そうだね。・・・そういえば、この4ヶ月はどうだった?なにかあった?」

「え?・・・そうね、アンタの事を除けば特には・・・。まぁ、今回の件で、アンタは学校で一躍有名になったけどね。登校初日にいきなり瀕死だーって。ムカつくけど、まぁ事実だしね。何も言えなかったわ。」

「そ、そうなんだ・・・。イキナリ目立っちゃったな・・・。俺自身は何もしてないんだけど・・・。」

「まぁ、相手も相手だったしね・・・ハァ。」

「そうそう!あの女性は誰なの?火竜族だよね?髪の毛赤っぽかったし。」

「あ、うん・・・、えっとね、あの人はね・・・。」

「彼女は私の親友よ。気分はどうかしら?ケーフィヴ。」

「「メラ姉!」」


 なんかイェ姉が言い辛そうにしていたら、そんな答えと共にメラ姉が入室してきた。


「親友?」

「そう、親友よ。私が入学してからのね。・・・その・・・恨んでる?彼女の事。」

「ううん、特には。確かにちょっと、いや、かなり痛かったけど、俺も彼女に悪い事しちゃったし。」

「!そう!それよ!ケーフィヴ、あなた、彼女に何をしたの?彼女に聞いても黙ったままで何も教えてくれないし・・・。ただ、私の弟だっていったら、ひどく驚いてごめんっていうだけで!」

「メ、メラ姉!落ち着きなよっ。」

「ああ、ごめんなさい、イェニファー。ケーフィヴも。あんなルミオールを見たのは初めてだったから・・つい・・ね。」

「そっか、彼女、ルミオールって言うんだ。素敵な名前だね。」

 

 そう言った瞬間、二人の視線が厳しくなった気がした。


「あ、あの何か気に障る事言った?」

「いーえ!べっつにぃ。ね、メラ姉。

「ええ、そうね。」

「そ、そう?ならいいんだけど・・・。」

「・・・メラ姉、気付いてないんじゃない?ってか、知らないのかも。」

「そのようね。でも、そういえば、生徒会室に行く前にいるかどうか聞いてきた様な気がするわ。まぁ、それはいいわ。それで彼女に何をしたの?私たちが生徒会室に入ってから、そんなに時間は経ってなかったと思うのだけれども。」

「あー、えっと、そのーね。」

「なによ!ハッキリしない!」

「わっ!ちょっとイェ姉!っていたたた。はぁはぁ・・・。話はできるけど、身体はホントに痛いからやめて・・・。」

「あ、ご、ごめん。でも、さっさと話しなさいよね!」

「わ、わかりましたっ。えっと、その順を追って話すと・・・生徒会室の前で待ってたら彼女が声をかけてきたんだ。確か・・・「何をしてるの?」って言われたと思う。扉が開けっ放しの生徒会室を廊下から見ていたからね。それで何と答えようか迷っているうちに、いつの間にか彼女が近づいていて、もう一回「何をしているの?」って聞かれたんだ。なんか顔が赤かったし怒ってるみたいで・・・。で、その時まだ身体は生徒会室の方を向いていたから、ちゃんと彼女の方を向いて弁明をしようと振り返った時に・・・その・・・彼女の胸に手が当たっちゃって・・・。気が付いたら、今日って所・・・かな。」


 最後の方はしどろもどろになりながら、怪我のせいで頭を掻けないのがちょっと恨めしく思いながらなんとか答えた。


「そう・・・彼女にそんな事したの・・・。」

「わっわざとじゃないよ!」

「まぁ・・・、彼女に触っちゃったのなら仕方がない・・・のかなぁ?」

「イェ姉・・・、いくらなんでもちょっと触れただけで殺されては・・・ちょっと・・・。」

「相手が相手だから仕方がないの!ケーフィヴ、アンタほんとにルミオールって名前に聞き覚えはないの?」

「え?う~ん・・・、そもそも竜族の知り合いもいないからねぇ・・・、知っていたら覚えていると思うんだけど・・・。」

「彼女のフルネームはね、ルミオール・ヴァルトハイム。私達の学校の生徒会長よ。」

「え!?生徒会長!!」

「そう、生徒会長。それで私は副会長としてお手伝いしているの。」

「え!?副会長!!?」

「そう、なまじ力がありすぎると妬まれたり、恐れられたりされてしまうからね。もうずっとお手伝いしているの。」

「力があり過ぎる・・・。そうか・・・天界・魔界と一人で互角に戦えるっていう最強の竜族・・・。それが彼女か・・・。」

「ええ、そうよ。だからね、ケーフィヴ。あなたの説明を聞く限りでは、多分、彼女は怒って殴ったのではなくて、身体に触れられて、恥ずかしくて引っ叩いてしまったのだと思うの。彼女、大多数の雄達には恐れられて近づく事はおろか、話しかけられる事すらあまりないのよ。だから、ね。彼女を恨まないであげて・・・。」

「もちろんだよ、メラ姉。それにさっきも言ったよ。恨んでないって。」

「ありがとう、ケーフィヴ。そうね、確かに言っていたわね。うふふふ。」

「うんうん。いい話だ!」

「イェ姉、何まとめてんのさ!あはっはは。」

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お読み頂きありがとう御座います。

更新を待ってくれていた方・・・は、いないかもしれませんがお待たせいたしました。楽しんでいただけたでしょうか。今後はあまり間を開けないよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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