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Transmigrate to Dragon  作者: 八部伍型
8/15

08 初日

Transmigrate to Dragonを開いて頂き、ありがとうございます。


 イェニファーはメラニーと共に住んでいる屋敷の前で仁王立ちしていた。

 イェニファーもケーフィヴを扉まで迎えに行きたかったのだが、前日になってメラニーが突然、「ケーフィヴを喜ばせる為に、どちらかが残って歓迎パーティをしっかりと準備しましょう。」と言ってきたのだ。

 その時は、盛大なパーティーにして驚かせようと思いついて、二人であれやこれやと盛り上がっていたので、すんなりと受け入れたのだが、どちらが残るかの勝負に負け、今日、実際に準備をしながらメイド達と「もう竜界についたかな~?」とか「もう、こっちに向かってるかな~?」などなど話していたのだが、「メラ姉とケーフィヴはどんな話をしながら来てるんだろう?」と思った時に気付いたのだ。

 もしかしたら、「道中ケーフィヴを一人占めする為に、嵌められたのでは?!」と。

 そんな疑問を抱いてからは、気が気でなかった。

 なんども迎えに行こうと思ったが、帰宅するルートや時間によってはすれ違いになる可能性もあるし、もう、すぐそこまで来ているかもしれないので我慢していた。

 そして、睨んでいた北の空に、二匹の竜が仲良く飛んでくる姿が見えた時、嫌な予想が的中したのを理解した。

 そして、すぐさまイェニファーも火竜に変身し、メラニーに向かって飛び立った。




 ◇ ◇ ◇




 ケーフィヴとメラニーは楽しく会話をしながら、青空を満喫し、幸せな時を過ごしていた。

 しかし、得てして、そのような時間は早く過ぎてしまうもの。

 メラニーの「あ、見えたわ。あそこが私達の住むお屋敷よ。」と言う言葉と共に終わりを告げようとしていた。


「え?あ、ああ。あそこの屋敷かぁ。もう着いたのか・・・。早いなぁ。」

「ふふっ、そうね。ゆっくり飛んできたけれど、あっという間だったわね。」


 と二人で惜しむような会話をしていたら、屋敷の方から、こちらに一直線に飛んで来る者があるのに気付いた。


「メっ、メラ姉!何か来る!!」


 警告するも言い終わる頃には、ハッキリと確認できる距離にまで近づいていた。


「イェニファー?!」


 メラニーが驚いた様な声を上げる。


「え!?」


 思わず左後ろ3歩の位置を飛んでいたメラニーの方に振り返った。


 振り返った瞬間、ゴオッと目の前をイェニファーの赤い身体が通り過ぎる。

 

 メラニーは間一髪、左に身体をひねり、回転して避ける。


 かわされたイェニファーは、反転して身体をこちらに向け翼を大きく広げ急停止。


 続けて口から大きなブレスを吐いた。


「メっ、メラ姉っ!!!」


 一瞬の出来事に、ケーフィヴは叫ぶ事しか出来なかった。

 無理やり身体を捻って、イェニファーの突撃を避わしていたメラニーにはブレスをも避ける事は出来なかった。


ドゴォォォオッ!!!!


「うわぁぁ!」


 ケーフィヴはメラニーに直撃したブレスの爆風で煽られる。

 なんとか姿勢を取り戻し、視線を爆心地に向けた。

 まだ、メラニーがいた場所は煙に包まれていた。


「メラ姉っ!!!」


 ゆっくりと煙が晴れていく。

 イェニファーとケーフィブは、ジっとその様子を見つめていた。

 やがて、煙が晴れる。

 メラニーは・・・



 無傷だった。

 平然とイェニファーと向かい合っていた。


「メラ姉っ!」


 ケーフィヴは駆け寄った。


「大丈夫よ、ケーフィヴ。火竜は火に強いんだから。イェニファーもそれが分かっていてブレスを使ってきたのでしょう?」


 メラニーはケーフィヴを安心させる様に微笑みながら、イェニファーの方に向き直って聞いた。


「当り前でしょう!それより、メラ姉っ!!これはどういうことよっ!!」

「え、えっと・・・これはね、その・・・」


 ケーフィヴはあんな爆発を発生させながら、二人が普通に会話しているのに驚いた。


「ちょっ、ちょっと、メラ姉!あんなブレス受けながら何、普通に話してるの?!イェ姉もいきなりあんなブレ・・ス。」

「ケーフィヴは黙っててっ!!!」


 ガあっっとイェニファーに吼えられて、ケーフィヴは首を竦んでしまった。


「落ち着いて聞いてね、ちゃんと馬車で迎えに行ったのよ?」

「じゃあなんで、仲良く二人で空を飛んで来たのよ?!」

「それは、俺が飛んでみたいって行ったからっ。」


 ケーフィヴは思わず、口を挟んだ。

 黙れと言われていたが、二人の姉が言い争っているのを見たくなかったからだ。

 さっきのブレスを見て、怖い気持ちもあった。


「・・・ふ~ん・・・。メラ姉、なんか言う事ある?」

「ごめんね、イェニファー。ありがとう。」


 そう言いながら、メラニーはイェニファーに近づいて行った。

 なにやら、小声で話をしている様だ。

 

 ・・・


 ずいぶん長い・・・。

 気にはなったが、ここは空気を読んで我慢した。

 さすが、俺。

 日本人は空気を読まないと!

 元、だけど。


 話し合いは終わったようだ。

 二人が飛んで近づいてきた。

 

「お待たせ。さ、行こ。」


 イェニファーの機嫌は一応、良くなった様に見える。

 わざわざ、また悪くする必要はないので、頷いた。




◇ ◇ ◇




 屋敷の前に降り立って、変身を解いた。

 厳密にいえば、逆なんだろうだけど。


 あんな爆発音が聞こえた筈なのに、誰も出てきていなかった。

 そんな屋敷の前で、改めてメラニーとイェニファーの二人が並んで立った。

 

「「いらっしゃい、ケーフィヴ。ようこそ、我が家へ!」」

「うん、お世話になります。」


 その夜は姉弟3人とメイド14人、イェニファー達が準備してくれたパーティーを夜遅くまで楽しんだ。

 ちなみにイェニファーは終始、ケーフィヴの横で機嫌良くはしゃいでいた。




◇ ◇ ◇



 

 そして、あっという間に穏やかな一週間が過ぎ、新年を迎えた。

 生活環境は変わったが、今まで通り、二人の専属メイドが手際良く仕えてくれていたし、姉達も気を使ってくれた為、問題になるようなことはなかった。

 それに年末とはいえ、竜族の世界には特に意味もない事なので、普通に学校もあったみたいだ。

 もっとも、二人とも全く登校してなかったが(笑)


 新年初日は朝はいつもより早く起きて、ペリィが来る前には着替え終えていた。

「おはようございます。ケーフィヴ様。さすがでございます。すでに、ご準備を終えていらっしゃいましたか。」

「おはよう、ペリィ。うん、今日から、学校だしね。楽しみなんだよ。」

「本当にお好きでございますね。」


 そして、食堂で姉弟3人で仲良く朝食。

 いよいよ学校ね、などと他愛もない会話をし、一度、自室に戻って、玄関に行くと二人の姉とメイド達が待っていた。


「遅いわよ!ケーフィヴ!」

「え?もしかして、二人も一緒に行くの?」

「ケーフィヴこそ、何言ってるの?当り前じゃない。」

「当り前って・・・、はい、そうですね。」


 言い争っていても仕方がないので、14人のメイド達に見送られて出発した。


「「「いってらっしゃいませ。」」」


 

「それで、二人ともその緑のマントは何?」


 そう、二人とも普段着の上からエメラルド色の短いマントというかケープを付けていた。

 後ろは肩甲骨を隠すくらいの長さで、まっすぐに揃っていて、前は両肩から一辺が20cmちょっと位の逆三角形が一つづつ付いていると言った様な形をしている。

 

「これ?これは制服よ。」


 イェニファーが、ケープを右手で摘まみながら答えてくれた。


「え?そうなの?俺、貰ってないけど・・・?」

「ええ、だから、学校着いたら貰いなさいな。」

「あ、そうなんだ・・・。よかった。忘れたかと思ったよ。」

「ばっかねぇ。あたし達やメイド達もいるのに忘れる訳ないじゃない。」


 そんな風に3人でピクニックの様に、2時間歩いて学校に着いた。

 時間は10:30頃だろうか。

 ほんと竜族の時間はのんびりしているとつくづく思う。

 なにせ、授業は10時から16時の間に1コマ1時間半を受けるだけでいいのだ。

 通学時間の半分だよ(笑)

 往復の時間の4分の一だよ(笑)

 まぁ、飛んでくればいいんだけど。

 

 学校の建物はそんなに大きくない。

 ”扉”の砦を横に割って、その手前だけ・・・位の大きさ。

 体育館もなければ、校庭すらない。

 柵もない。

 建物がぽつんとあるだけ。

 学校の建物の中に入るまで誰にも会わなかったし。


「なんか、想像と違って、かなり寂しい所なんだね・・・。」

「午前中だしねぇ。1時位になれば結構みんなくるよ?」

「そうね、みんなのんびりだから。」


 建物に入ると教師か?さすがに幾人か老人と言える位の人たちがいた。


「「「おはようございます。」」」


 3人揃って挨拶する。


「うん、おはよう。」


 すれ違いながら、ゆっくりとした口調で挨拶を返してきた。


「先生?」

「そうよ。教師役はね、基本的に5000歳以上の雄達が持ち回りで学校に詰めてるの。たま~に気が向いた雌も来るけど。」


 さすが、竜族の雌。

 基本的に働かないのね。


「それでは、まずは制服をもらいに行きましょう。こっちよ。」

「あ、うん。教官室に行くの?」

「教官室?ううん、違うわ。教師方の所に行ってもしょうがないし。基本的に何もしてはくれないよ?」

「え?そうなんだ・・・。じゃ、どこに?」

「生徒会室よ。」

「え?!」


 ケーフィヴは瞬間的に思いだしていた。


「せっ生徒会長って来ているの?」

「えっ?そうね・・・、どうでしょう?多分、まだ来てないと思うけど・・・どうかしたの?」

「え?うううん。なんでもない。」


 ケーフィヴは凄い勢いで首を振った。

 落ち着くんだ。

 生徒会長がいないなら、なにも慌てることはない。

 そう自分に言い聞かせながら、メラニー達の後に付いて行った。

 

 廊下を進み、階段を上り最上階の4階につくと、メラニーが一つの扉の前で振り返った。


「ここよ。」


 特に何の変哲もない木の扉だ。

 まあ、どれもそうだな・・・地球の日本の学校で言うなら、私立の校長室か理事長室かっていう位の重厚な雰囲気だが。

 そんな表札すら出ていない扉をガチャッと何の躊躇いもなく開けて入るメラニー。

 続くイェニファー。 

 そして、ケーフィヴは部屋に入ったメラニーとイェニファーに、ノックとか何もないの??とか思いつつ、何となく気後れして、部屋に入らずに廊下から眺めていたら、突如声がかかった。


「あなた、何をしてるの?」


 ケーフィヴ達が来た方と反対側、しかも、割りとすぐ近くからだった。

 髪の色は濃いオレンジ色と言おうか、少し薄い深紅と言おうか迷うような綺麗な色をしており、真っ直ぐなストレートロングで腰まで伸ばしており、前髪はいわゆる姫カットだ。

 少し眼元がキツそうな印象を受けるが、メラニーに勝るとも劣らない程の美人だった。

 言葉を返す事も出来ずに、思わず顔をじっと見つめてしまった。


 返事をしない自分にいらだってきたのか、ジッと見つめていたのが気に食わなかったのか、顔が紅くなり、こめかみの辺りがピクッと引きつってきた。


「何をしているか聞いているんだケド?」


 もう一度、しかし先ほどより低い声で繰り返されて、ハッと気づき、首が向いていただけだったのを向き直そうと身体を捻ったら、勢い良く捻りすぎたのか、右手が浮き上がり彼女の乳房の下辺りに当たってしまった。


 その当たったと思った瞬間、あっと言う間すらなく、視界の左下に陰がはしり・・・


ボキッゴキゴキゴキゴキィッッッ


 左わき腹から骨が砕かれる音が聞こえ・・・


 激痛と共に、今度は逆側の右半身に壁にぶつかったと思われる衝撃。


 ケーフィヴは廊下の壁をぶち破り、空中へ投げ出された所で気を失った。 

 



 

 

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お読み頂きありがとうございます。


3/17 何を思っていたのか、大事な設定を書き忘れていたので、修正。また、学校に着いてから450文字程度の加筆をしました。

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