04 変身
Transmigrate to Dragonを開いて頂き、ありがとうございます。
9月19日、ケーフィヴ・シュメルツァーは10歳の誕生日を迎えていた。
現在、身長140cm35kg。日本人の同い年と比べても、ほとんど変わらないと思う。
「「「「「誕生日、おめでと~!」」」」
「ありがとうございます。」
そして、その日の夜、夕食時に家族5人揃って誕生日会が開かれていた。
竜族にはクリスマスやバレンタイン、ハロウィンなどのイベント事はもちろん、お盆も正月もないようだ。ただ、誕生日と結婚記念日だけは、家族全員と夫婦二人でそれぞれ、欠かさずに毎年行っていた。
ちなみにこの世界の1年は前世の地球と微妙に違い、28日×13ヶ月で364日だった。
イェニファー「さぁ、ケーフィヴ。今夜はご馳走だよっ!いっぱい食べよう!」
ケーフィヴ「ありがとう、イェ姉。ホント、ご馳走だね。去年までの毎年も凄かったけど、今年はまた一段と豪華だ!」
次女のイェニファーとケーフィヴがそんな会話をしていると、母のレテーナと長女のメラニーが顔を合わせて、クスクスと笑っていた。10年経ってもレテーナは全く変わらず、メラニーもまたほとんど変化が見られず、155cm位の相変わらずの美少女だ。
イェニファー「ちょっと!何よ!二人ともクスクス笑ってっ!」
それに気付いたイェニファーが、なにやら恥ずかしかった様子で、顔をちょっと赤くしながら二人に言った。
レテーナ「あらあら。ごめんなさいね、イェニファー。元気な二人と、ちゃんとお姉さんしているイェニファーが嬉しくてね、つい・・・。」
メラニー「そうよ、それにケーフィヴは普段、大人しいというか、落ち着いているというか・・・、そんな所があるけれど、今は年相応に喜んでくれているようだったからね。」
イェニファー「そう?だったら別にいいケド・・・。さ、食べよ、食べよって、ちょっと!ケーフィヴ!あんた、もう、そんなにほうばってるの・・・。」
イェニファーが疑わしげな眼で二人を見てから、振り返るとケーフィヴはすでに食べ始めていた。
ケーフィヴ「もぐもぐもぐ・・・、ごくんっ、この肉おいしいよ。イェ姉。」
レテーナ「ふふ、本当に美味しそう。あたしもいただこうかしら。」
メラニー「ちょっと、お母様。もうすぐ臨月なのに、あんなお肉食べても平気なの?」
レコ「食べられる様でしたら、もう何を食べても平気ですよ。メラニー様。」
レコが相変わらず執事服で、身重なレテーナへ小皿に料理を取り分けながら言った。
メラニー「そう・・そうなのね・・・。それなら、あたしもそのお肉をいただこうっと。レコ、あたしにも取って。」
レコ「はい、畏まりました。」
むぅ・・・。どうやら俺は浮かれている様だ。確かに俺は、前世での30年間の記憶があるから、あまり子供っぽくはしゃいだり、我がままを言ったりする事が巧く出来なかったので、心配をかけていた様だ。どうせこの際だ、馬鹿になって10歳らしくはしゃいでおこう。っていうか、いよいよ竜になれる訳だし、俺も興奮しているのだろう。ああ、早く竜に変身してみたいっ。
マルセル「いやぁ~、本当にめでたいなぁ。ケーフィヴも今のところ健やかに成長してるし、4人目も産まれるしな。はははは。」
親父殿・・・やっと喋れたのか・・・。食事し始めてから、もう15分位経ってるぞ・・・。
レコ「本当に。100年足らずで4人もなんて、お二人の相性はとてもよろしかったんでしょうね。竜族の方は何千年と言う時間の中で、3人ないしは4人程しかご出産なさらない方がほとんどですのに。」
イェニファー「ふぅん・・・。普通の家はそんなもんなんだぁ。じゃあ、兄弟でもうんと年が離れちゃうねぇ。」
レテーナ「そうねぇ、確かに年は100歳、200歳と離れてしまうけれど気になる程ではなかったかしらね。うちは姉妹だけだったから、竜界で一緒に暮らしていたし。でも、両親と姉妹みんなで一緒に暮らせるなんてのは確かにいないかもね。」
メラニー「そうね、あたしも後20年たったら、実家の巣を出て竜界の学校に行かないと行けないし。イェニファーが来るまでの30年は一人暮らしで寂しいわね。」
マルセル「ま、まぁ!まだ先の事だし、今日はケーフィヴの10歳の誕生日だ。楽しくいこう!まだまだ皆、家族6人で暮らせるしな。なっ?」
なんか話が暗くなりかけていた所を、親父殿が無理やり引き戻した。
メラニー「あ、ごめんなさい!あたしったら!みんなと離れて暮らす事を考えたら急に寂しくなっちゃって・・・。ごめんね、ケーフィヴ。さ、食べましょ。明日には初変身なんだし。ね?」
ケーフィヴ「あ、うん。ありがとう。メラ姉。メラ姉も食べて。僕が取ってあげるよ!」
メラニー「あら、ありがとう。あたしの好きなのが分かるかなぁ?」
メラニーがちょっと意地悪な顔をして注文をしてきた。
むむ!ここは男を見せねば!!
ケーフィヴ「まかせてよ、メラ姉!」
レテーナ「よかったわね。メラニー。ケーフィヴに取ってもらえて。」
メラニー「ええ、ほんとに嬉しいわ。」
メラニーに喜んでもらえた!俺も嬉しい!
そんなこんなで、家族みんなでわいわい話しながら、楽しく過ごし、途中からは俺の提案でメイド達も一緒になって夜遅くまで騒いでいた・・・。
ちなみにうちのメイドさん達、全部で600人近くいるんだよね・・・(笑)
普段、一体どこにいるのだろう?
◇ ◇ ◇
翌朝、目が覚めると昼近かった。
両親の愛の巣には窓はないので、明るくなって眩しくて起きるという事はない。
なんでも、山の中の迷宮らしい。家から出しては貰えないので、山の外はおろか迷宮部分にも言った事はないので、レコからの聞きかじりではあるが。
「う~ん・・・。」
とベットの上で体を起こし伸びをしているとコンコンとドアをノックする音がして、ガチャっと開いてメイド服を着た女性が二人、入って来た。
「お目覚めですか?ケーフィヴ様。おはようございます。」
「ああ、おはよう、ぺリィ。今、顔を洗ってから着替えるよ。」
「はい、お手伝いいたします。本日は竜身の儀がございますので、こちらにお着換えになってくださいませ。」
と、なんと言おうか・・・、正装なのだろうか?これまた真っ赤な、タキシードみたいな服をもう一人、ペリィと一緒に入って来たメイドが持ってきた。
言いたい事や聞きたい事は色々あったが、両親や姉達が待っているとの事なので急いで顔を洗って着替えた。この10年でメイドに着替えを手伝って貰うことにも慣れました。
ぺリィは俺専属のメイドで小さい頃から世話してもらっている。レコを同じ魔族で、150cm位で、薄い黄緑色の髪をポニーテールにしている。胸はCかDだ。多分。
「ご準備出来ましたね。あとご紹介が遅れましたが、本日からもう一人ケーフィヴ様の専属が付くことになりましたので、よろしくお願いいたします。」
「ミリと申します。よろしくお願いいたします、ケーフィヴ様。」
「以前から屋敷内にはおりましたので、顔を見たこともあるかと思いますが、家人と直接お話する任務には就いておりませんでしたので、なにかといたらない事もあるかとは思いますが、よろしくお願いいたします。それでは参りましょう。竜の間で、皆様お待ちです。」
前を歩くペリィについて行く。ミリは俺の後ろについている。メイド達に前後に挟まれた状態で歩きながら、ちらちらと振り返り、ミリを観察してみたところ、・・・Bと見た!髪の毛は薄い紫色で、髪型はなんと言えばいいのか・・・。横は耳がすっぽり隠れる位に伸ばしていておかっぱの様に切り揃えられているが、後ろの方は背中にかかる位に伸ばしていて一つにまとめている。メイド達に前後に挟まれた状態で歩く。
しばらくそのままの状態で歩いていたら、家を出てしまった。
「ねぇ、ペリィ。どこまで行くの?家出ちゃったけど・・・」
「もうすぐです。迷宮とお屋敷の間に竜の間がございます。」
「そうなんだ・・・。」
家を出て、石だろうか?灰色の壁の通路を抜けると凄く広い所に出た。今いる所は天井にほど近い所で、多分、ここが竜の間なのだろう。一辺が100m位の正方形の空間だ。下を覗いて見ると今出てきた屋敷側に祭壇の様な少し高い段差があり、両親や姉達、十人くらいのメイドがいるようだった。
「遅くなりました。」
祭壇まで来るとペリィが親父殿に言った。
「うむ、御苦労。下がって皆と一緒に警戒を頼む。」
「はっ、畏まりました。」
そう言ってペリィとミリは祭壇を下りて行く。
「さて、ケーフィヴ。まずはおはよう。」
「おはようございます、父上。」
「ゆっくり眠れたか?」
「竜になれるのが楽しみで、少し夜更かしをしてしまいました。」
「ははっ、そうか。男だもんな。俺も初めて変身した時は興奮したもんだ。メラニーとイェニファーは淡々と変身して終わったからな・・・。やはり、女には分からんのか。さて・・・、おしゃべりはこの辺にして・・・と、まぁ、竜身の儀と言ってもここで一回、竜に変身するだけだ。どうだ?出来そうか?」
「どうだ?と言われても・・・。どういう風に変身するの?」
「ん~そうだなぁ・・・。今はもう、特に意識しなくてもなれるしなぁ・・・。800年近く前だし、忘れちまったなぁ・・・」
「ええぇ~。そりゃないよ、父上ぇ。」
「ケーフィヴ。」
「メラ姉。」
離れた所に座っているレテーナの脇にいたメラニーが、いつの間にかすぐ近くに来ていた。
「額の所に竜玉と呼ばれる器官があるの。そこへ変身しようと意識をすれば出来ると思うわ。」
「をを!ありがとう!メラ姉。」
「うん、頑張ってね。ケーフィヴ。」
さすが、大好きなメラ姉。使えない親父殿とは違いすぎるぜ。
「よし、じゃあ、頑張れよ。見守ってるからな。」
親父殿もレテーナの所まで離れていく。
それを見届けて、ケーフィヴはメラ姉のアドバイスに従って、額に意識を集中させた。
すると淡い赤い光に包まれ始めた。
「お!いい感じ。そのままそのまま。」
イェニファーの声が聞こえた。
一瞬、気が逸れたがそのまま集中してるとケーフィヴの身体が光に包まれ火竜の姿になっていた。
口から尾の先まで4m位だろうか。
まぁ、尾だけでも1m以上あるのだが。
恐竜のティラノサウルスの顔を細くシャープにして翼を生やしたような姿。
もちろん鱗は赤い。いや、紅い・・か。
だが、一番の違いのは、細長い口の上先端に付いている鼻のさらに上に、一本のブレード状の物が前方30度位の角度で付いているのだ。
長さは60cm位。
下手な刃物より切れそうだ。
「をを~!やったぁ~!あんな口の上の所に角が付いてるんだぁ~。」
「あらやだ。かっこいいわ。」
「おいおい、レテーナ。俺の方が格好いいだろう・・・?」
「ホント、頭の4本と口の上の角のとのバランスも絶妙で格好いい。」
みんなが口々に褒めてくれている。
ちょっとこそばゆい。
メイド達も歓声を上げて拍手してくれていた。
(これが竜になった感じかぁ。確かに力が漲ってくる・・・。今なら何でも出来そうだ。)
ちなみにこの後、この事を言ったら、イェ姉が竜になって(大きさは5m程でブレード状の角はなく、また他の角も短め。それ以外はほぼ同じだった。)相手をしてくれ、ボコボコにされた・・・。竜族は雌の方が雄よりも圧倒的に強いらしい・・・。
「イェ姉酷いよ・・・。」
「ふんっ、あんたが調子に乗って他の女の子にちょっかい出して、殺されないように教えてあげたんでしょ!感謝しなさい!」
だからってあんまりだ・・・。しくしく・・・。
お読みいただきありがとうございます。
3/2改稿 容姿とラストと少し追加しました。