01 プロローグ
この世に天・地・魔界の三界あり。
いつから存在していたかは定かではない。
種族は主に天使族、人族(亜人も含む)、魔族、そして竜族の4種族。
天使族が天界に。
人族が地界。
魔族が魔界をそれぞれに支配していた。
竜族は三界すべてに存在し、いずれの種族にも支配されずにそれぞれに巣を作って住んでいた。
この世界の天使族と魔族は仲が悪く、この2種族の対立を主とする戦争は幾千、幾万年と続いていた。
人族は2種族の干渉やその時々の時勢、国の王の方針などにより、巻き込まれ参戦し続け、竜族は契約や呪いにより操られる個体を除き、基本的には静観していた。
しかし、いつまでも続く終わりの見えぬ戦いに竜族がついに本格的に参戦する。
そして、竜族の圧倒的な戦力により、竜族 VS 3種族という対立図ににもかかわらず、永かった戦争はついに終結を迎え、天・地・魔界の三界は竜族の支配下に置かれる事となる。
竜族の世界征服により三界はついに平穏な時代が訪れたのであった。
◇ ◇ ◇
「ふぃ~、今日も疲れたぁ」
この国の首都のひとつ北の県にある一人暮らしの3階建のマンションの105号室。
10畳1Kの自室に帰宅した梅崎 陽介は左手でネクタイを緩めながら右手に持ったカバンを自分のベットの上に放り投げた。
「いい歳こいたおっさんがハッスルし過ぎなんだよ」
二流製薬会社に勤める陽介は都内の大学病院の医師に自社の薬を買って貰う為、女好きな内科医を接待として吉原のソープに連れて行き、控室で約2時間P○Pでゲームしながら待っていたのだった。
もちろん自分も女の子と泡のお風呂に入ってもよかったのだが、指名しなければ6万と言う吉原では安い方だとはいえ、ほぼ家賃一カ月分に匹敵する金額を出してまでは・・・と言う思いもあったし、彼女いない歴7年と言う時間のせいか自分に自信がなく風俗に行っても最中にゴチャゴチャと色々と考えてしまってイマイチいい気持ちになれたためしがほとんどなかったので諦めて待つ事にしたのだ。
なので現在24時48分。終電間近の時間になってしまった。
「しまった・・・食うもんが何もなかったんだった・・・。くっそ~、帰りがけに寄ってくりゃよかったのに」
着替えて冷蔵庫を開けた陽介は、がっくりと肩を落としながら早く自宅へ帰りたい一心だった自分に文句を言った。
一番近いのはヤオ○ーで徒歩2分位だが当然この時間は閉店している。
次に近いのはコ○プとサン○スで両方とも24時間営業。
方向はま逆で徒歩7,8分だ。
どちらにしようか一瞬考えた陽介だったが、好きなプリンと焼き鳥が売っているサ○クスの方に行くことにした。
部屋着にしているトレーナーからジーパンに履き替え、上は面倒くさいのでそのままでジャンバーを羽織り、マフラーを首に巻いて外出した。
「う~寒い寒い」
独り言を呟きながら徒歩7分の距離を足早に歩いていく。
そしてサン○スの看板の明かりを見つけ、何故かほっとした思いを抱きつつ店内に入った。
雑誌が陳列されているのを左手に眺めながらドリンクコーナーに行く。
コーラを2本取り、弁当コーナーへ。
途中パンや総菜コーナーもチラッとみたが25時半も近いという時間のせいか、ろくな物が残っていなかった。
プリンもなかった・・・。
「プリンねぇし!せっかくサ○クスにしたのに・・・」
ぼやきつつもない物はしょうがないので、いくつか売れ残っていた弁当の中からひとつを選びレジへ行き精算した。
チラッとレジ横のホットスナックコーナーも見たが、やはり焼き鳥もなかった・・・。
「3点で804円になります」
店員が綺麗な女性で・・・とかそんな訳もなく同年代の男だった。
店の外に出るとふと星空が目に付いた。
「おお~意外と綺麗だな~。いつもこんなに星が見えてたっけな・・・?」
あまりの美しさに店のまん前にも関わらずにぼぉ~っと見上げてしまっていた。
だから
気付くのが
遅れた。
店の前を左右にはしる道路。
その右手から縁石を乗り越えトラックが突っ込んできた。
ヘッドライトの明かりのせいでよく見えなかったが運転手は気を失っているのか、首をだらんと下に向けていた。
シートベルトはきちんとしている様だ、ハンドルにもたれかかってはいなかった。
そこまではっきりと見えながら体は全く動かなかった。
だから必然的に陽介はトラックに轢かれ、トラックと一緒にサン○スの店内に突っ込んだ。
幸か不幸か、ガシャーーンと言う大きな音を最後に聞きながら、陽介は痛いと感じる間もなく即死した。
◇ ◇ ◇
陽介は目を覚ました。
しかし
(なんかよく見えないな・・・)
急に視力が落ちたのか、ぼんやりとした輪郭しか分からない。
起き上がろうとしたが体が動かない。
頭すら持ち上げれない。
手足をバタつかせる事はできるのだが・・・。
(俺は助かったのか・・・?)
驚くと同時にこんな体も満足に動かせない、目もろくに見えないこの状況ではあまり嬉しいとは思えなかった・・・。
(こんなほとんど動かせない体で生きていかなきゃならないのか・・・)
陽介が絶望を感じていると目の前ですっと誰かが覗き込んできたようだ。
「おい!目を覚ましたぞ!!」
男の少し陽気なハシャギ気味の声が聞こえた。
陽介は自分がネガティブな気分でいたからか男の嬉しそうな声にイラっときたが
(まぁ、よく考えりゃあんな事故に巻き込まれて生きてたんだから喜びもするか)
と思い直した所で気が付いた。
聞いた事がない声と今もさっきより近く覗き込んでいる男らしき人物の頭・・
(なんか髪の毛が真っ赤じゃね?それによく見たら瞳も・・・)
(どんな病院なんだ?!てか医者なわけないか・・・でも親戚や友人、会社等の知り合いに真っ赤な頭している奴なんていないぞ!)
そんな混乱している陽介をよそに真っ赤な髪をした男が話しかけてきた。
「初めまして、パパですよ~分かるかなぁ~」
「あらあら、マルセルったらそんな声で挨拶なんかして・・」
女性らしき声も聞こえた。
若そうな綺麗な感じの声でクスクスと笑っているような感じだった。
(い、いやっ!それよりパパっつたか?!親父なのか?!!こんな真っ赤に髪染めたのかっ?!!!)
陽介はますます混乱した。
「レナーテ、そんな事いうなよ。待望の男の子だぞ?嬉しくて舞い上がっても仕方ないだろう」
(レテーナ??え?!誰それ?明らかに日本人の名前じゃないし!)
「ええ、そうよね。男の子が産まれたのよね。男女どちらでも嬉しいことには変わりはないけれど、男の子だとやはりちょっと違うわね・・・」
(男の子が産まれた?これって・・・まてまて、落ち着け俺。)
「ああ、一族としても男子は数が少ないからな。格別だ。それにザスキア様に小言を言われずにすむ」
「ふふっ、それが本音なんじゃないの?まぁ、たしかにこの子が生まれてくれた事でお母様のメラニーとイェニファーへのあたりも弱まってくれればいいケド・・・」
「ああ、そうだな・・・。ザスキア様の男子が欲しかった想いは分からくはないからな。ご自身もレテーナしか授かれなかったしな」
(ふ~落ち着いてきたぞ。さっき男の方は明らかに俺に向かって話してたし、話の内容と状況から考えて・・・)
と考えているうちにもう一人視界に入ってきた。
男と同じ真っ赤な髪で一つにまとめて左肩から流している。
そして、腕が伸びてきて抱きかかえられた。
「ふふっわたしの顔を見てる。よしよし、ママですよ~」
「本当だ。じぃっとよく見てるなぁ」
(はっ!ガン見してしまった!さすがに胸に抱えられる程の距離だと顔もはっきり見える。やはり髪も瞳も真っ赤だけど、凄い美人だ。この人がママなのか・・・って言うか、なに普通に受け入れているんだ俺はっ。だがこれではっきりした。俺は小説やゲームによくある様に転生したんだ!)
読んでいただきありがとうございます。
2/26改稿 というか改行