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三題噺 『渋谷 マグロ 富士山』

作者: 稀山 美波

三題噺シリーズ第一弾。 友達からテキトーに選んでもらった単語三つを題材に、話を作ります。 暇つぶし程度に読んでいただけたら幸いです。

 




 眠らない町、渋谷。

 

 ネオンサインと車と人の欲望が渦巻くこの町は、人々に希望や夢を与える。

 先進国日本のど真ん中という超次世代都市の中、僕は今後の人生を左右するであろう重要な選択を迫られていた。この選択の先に待つのは、死か、はたまた絶望か。とりあえず分かっていることは、どちらを選ぼうと、僕にとっては二つとも茨の道でしかないということだ。

 

「こっちか……、いやでも……」

 

 僕の名前は、佐藤太郎。

 名前の記入例の欄に書かれていそうな、とってつけたような名前だが、当て字やアメリカかぶれの名前がありふれたこの平成の時代では、逆に覚えやすいんではないか、と諦めにも似た感情を抱いている。

 

 画家を夢見て、家出当然で家を飛び出し上京した僕は、『東京=渋谷』という渋谷にとってしてみればはた迷惑な田舎者のイメージから、渋谷郊外のアパートで暮らしている。


 しかし、貧乏人にとってみれば、渋谷という町は非常に恐ろしく住みにくい。

 夜中のコンビニには、光に集まる夜の虫が如く、社会に反旗を翻す中高生がたむろしているし、基本物価が高いので買い物にも一苦労だし、なんといっても家賃が高い。

 あのボロアパートであの値段は、訴訟が起きてもおかしくないレベルだ。


 そんな僕の前には、二つの商品が並べられている。

 どちらも、今僕がいるスーパーの特売コーナーに陳列されている物たちだ。


「くそっ……」


 僕はおもむろに財布を取り出し、中身を確認する。

 なけなしの百円と十円と、申し無さ程度の一円たちが、むなしい音を響かせた。

 442円。

 これが僕の、全財産。今時、中学生でももっと持ってる。


 明日にはバイトの給料が入るので、残りの約400円をパーっと使ってやろうという魂胆でこのスーパーに足を踏み入れたという訳だ。

 給料日前、ビール片手におつまみを。このくらいの贅沢は許してほしい。

 そして、そのおつまみとなるものを捜し求めている訳だが、


「刺身か……、それとも鶏肉か……」


 僕の前に並ぶのは、マグロの赤身、つまるところの刺身とちょいと高級なお肉。

 僕はこれらふたつどちらを買うべきか、先ほどから小一時間ほど頭を悩ましている訳だ。

 どっちも買えばいいじゃんという心にもない台詞がどこからか聞こえてきそうだが、この二つは僕の全財産で買える最も高価な食品であり、つまりどちらかを捨てなければならない。


 神よ、よくもこんな試練を僕に与えたな。

 この選択の先に待つものは、どちらも間違い。何故かそんな気がした。


「どうしましたか?」


 どっちも盗んじまおうか、という邪な考えが頭をよぎったその時、ふいに後ろから女性の声がした。

 僕はビックリしながらも振り向くと、そこには僕と同じくらい……大学生であろう女の人が立っている。今時の軽い感じの若者とは違い、髪も染めず化粧もそこそこに、綺麗で清楚、といった印象を持たせる女性だった。


「何かお困りですか?」

「いや、それ程のことでは……」


 どうやら見た感じ、スーパーの店員ではないらしい。ただの世話好き、おせっかいな人だろうか。

 僕に話しかけるなんて、物好きな人もいたもんだ。

 それを見た僕は、妙案を思いついた。そこで彼女の方に振り向いて、こう尋ねてみる。


「あの、つかぬことをお聞きします」 

「なんでしょう?」

「マグロと鶏、どちらが好きですか?」


 自分で決めるのが難しいならば、人に決めてもらえばいいのだ。そうすれば、後悔した時の言い訳にもなるし、第一自分で選んでいないのだから自己責任もない。

 悪く言えば、彼女に丸投げした。


「はぁ……」


 彼女はまるで不審者でも見るかのような目でこちらを見ている。

 まずい。長時間考え込んでいたせいで感覚が鈍ったか。初対面の女性に『マグロと鶏』なんて質問、馬鹿げている。このご時世だ、痴漢とか言われても反論できない。


 しかし、僕のそんな不安をよそに、彼女は僕にサムズアップして、ニッコリ笑ってこう言った。


「マグロですね! 可愛いです!」


 彼女の感性を一瞬疑ったが、僕が刺身を買うのには十分すぎる理由になった。




          ◆




 マグロ好きな女性は、一条茜と名乗った。

 一条さんは、僕の質問の意図を聞くと大笑いし、僕がレジで刺身を買うところまでついてきてくれた。というか、もっと言うと、僕は今彼女とともにスーパーを出て、大通りを歩いている。


「佐藤さん、おもしろい人ですね」

「面白いとは……、初めて言われますね」

「東京へは、何をしに?」


 彼女はよく話し、よく笑うのでとても喋りやすかった。人見知りな僕が話しやすいというのだから、一条さんにはきっと、人をひきつける才能というか、能力が備わっているのかもしれない。


「……僕、画家を目指しているんです」

「絵描きさんですか! すごいです! 私、小さい頃からすっごい絵が下手で……」

「褒められたものではないですよ」


 彼女が話しやすいというのは、やはり事実のようで、気づけば僕はこの町渋谷と最近のスランプのことについて愚痴をこぼしていた。


 初対面の人に愚痴などどういうことだ、と思ったが、彼女相手だと何故か自然と心の声で話せるような気がしたのだ。そういう点でも、彼女には魅力があるのだろう。

 僕や渋谷の住人にはない、魅力が。


「親は実家の農業を継げとうるさくて、僕はそれが嫌で家を出ました。好きな絵が、どうしても描きたかったんですよ。でも、大学で学ぶ金もないし、かといって知り合いに先生やコネがあるわけでもないから独学……。だけど、うまくいかないもんですね」


 東京には友人が少ないせいだろうか、僕は久しぶりに、こんなに人と話ができたことに、なんとなくくすぐったい感覚を覚えた。

 知り合ったばかりの見知らぬ男に愚痴なんぞ聞かされて一条さんはきっと嫌な気分だっただろうが、彼女は一切嫌な顔せず僕の話を親身になってきいてくれる。僕には、それがたまらなく嬉しかった。


「最近では、絵を描くことさえも逃げだと思いはじめました。生きることから、親から、この町から逃げる為に絵を描いてるんじゃないか、って……。だから今は、ペンが握りたくても握れないんですよ」


 話終えて、彼女の方をむくと、僕の瞳を、渋谷に汚された瞳を覗き込むこむようにこちらを凝視していた。


 僕はなにをしているんだ。

 初対面の、それも女性にこんな身の上の話をするなんて。よっぽど疲れてるな。

 気まずくなった僕は立ち止まり、渋谷の空気に染まらずに生きる彼女がなんだか眩しくて、目をそらした。


「……すみません、つまらない話をしてしまって」

「そんなことないです! ……素敵だなって思いました」


 素敵? 今の話に素敵要素が含まれていただろうか。僕は不思議に思った。


「夢に向かって頑張る佐藤さん、すごいと思います! 私なんて……」

「いやいや、そう思える一条さんの方がすごいと僕は思いますよ」

「夢があるって、すっごく素敵なことだと思います。だから、絶対に夢を諦めないでくださいね」


 このまま絵を描くことを諦めて、実家に帰ろうかと思っていた僕の心情を読み取られたような気がして、僕はドキッとした。

 彼女がそう言うと、本当に頑張れそうな気がするから不思議だ。

 でも、もう絵は描けないんだろうな……、そう思い悩んでいた矢先、一条さんは何かを思いついたように、向日葵のように明るく笑い、こう言った。


「そうだ佐藤さん! 一緒にお風呂に行きませんか?」


 僕は、数秒ほど機能停止した。


 今、この女はなんと申した。風呂? 一緒に? 僕と?

 ちょっと待てよ、まだ僕達はそんな関係じゃないし、いやまだというのはそういう意味じゃなくて、いやでも一条さんと風呂とかちょっとちょっと、フヒヒヒなどと、当たり前のような疑問からピンクな妄想まで幅広く僕の脳内を駆け巡ったが、結局僕の口から出たのは、


「……は?」


 という、なんとも情けない返事だった。

 いや、これは仕方ない。だって、質問がおかしいんだもの。

 そんな僕の気持ちも知らずに、彼女は話を進める。


「お風呂です、お風呂! おっきなお風呂に入ったら、嫌な気持ちも忘れますよ!」


 いや確かに君と入ったら僕は気持ちがいいだろうけど、って僕は何を言ってるんだ。

 煩悩よ、消えろ。いいから出て行け。無断で僕の中に居座るな、不法侵入で訴えるぞ。


「私の実家、銭湯なんです。今日はサービスしますから、入っていったらどうですか?」


 あ、そういうことね。

 煩悩は、あっさりと僕の中から立ち退いた。





          ◆





 最初こそ断ったものの、彼女が改宗をせまる信者のように入浴を勧めるので、純情無垢なその瞳を見ては断りきれず、彼女が実家だという銭湯の前に僕達はたどり着いていた。

 その銭湯は、テレビの中で『昭和特集』 みたいな番組があると必ず出てきそう、そんな雰囲気をかもし出す、本格的な銭湯だった。日本では全滅したかに思われた煙突も、まだまだ現役だ。


「……渋谷にまだこんな銭湯があるなんて」

「意外ですか?」

「正直、驚きました」


 彼女のしてやったり顔を見て、正直にそう答えた。

 すごい。素直にそう思った。


 ここら一帯だけ渋谷でないような、いや、渋谷から拒絶された渋谷のような、とにかくそんな気持ちを抱かされる。こんな広いところで入る風呂は、また一味違うのだろうな。


 彼女に誘導されるまま、僕達は横開きのドアを開け、銭湯の中へと入っていった。

 そこには、これまた『これぞ銭湯』といった風景が広がっていた。

 番台、一昔前の自販機、木製のロッカー、その他もろもろ。僕にはなんだか新鮮で、本当に昭和人になったかのような錯覚に陥る。

 もうすっかり夕方を過ぎ、夜であるにも関わらず、客はいなかった。客はひとりもいないが、それがまた余計に哀愁を漂わせる。


「今日営業予定だったんですけど……、父が体調を崩しまして。早めに店じまいしたんです」

「え、お父さんのところにいなくて大丈夫なんですか?」

「はい、だいぶよくなったみたいです。あ、さっきスーパーにいたのも父がよくなったからなんです」


 その言葉を聞いて、少し安心した。

 一条さんが父親放っておいて買い物に行っちゃうような人ではない、と勝手に確信していたからだ。


「あ、今は営業時間外だけど、いつもは営業時間内だからお湯とかの心配はいりませんよ」


 そう言って店のことを話す彼女は、本当に幸せそうだ。

 きっとこの銭湯も、お父さんも、大好きなのだろう。親と大喧嘩して家を飛び出した僕には、なんだか少しうらやましかった。


「さぁ、佐藤さん! ごゆっくりどうぞ!」


 もうちょっと彼女の話を聞いていたかったが、一条さんがそう急かすので、僕は苦笑いを浮かべながら彼女と別れ、『男』と書かれたのれんをくぐった。


 脱衣所について服を脱いでいると、風呂の方から湯が湯を叩く音が絶え間なく聞こえ、なんだかそれだけで僕は泣きそうになる。

 上京してきて、人の優しさに触れたのはいつぶりだろうか。

 最後に人と楽しい会話をしたのはいつだろうか。

 あんな綺麗な笑顔を見せる女性をみたのは、初めてだ。


 どうせ明日からはまた辛い日々が始まるんだ、そう思うことで自分を保つことにした。そう思っていると、今日だけでも嫌なことを忘れたくて、僕は無性に風呂に入りたくなった。

 どうせ客もいないんだ。一条さんに甘えさせてもらって、湯船の中で泳いだりなんかしてみようかな。

 考えれば考えるほど、僕は風呂に入りたくなって、急いで服を脱ぎ、時代を感じるロッカーに服と携帯と財布をしまい込んだ。


 僕は、上機嫌で風呂場のドアを開け放った。

 そして、息を呑んだ。


「……」


 言葉が、出なかった。

 僕の目の前に広がってきた光景が、僕に息をさせる事すら忘れさせたのだ。

 それは、浴槽ではない。いや、十分風呂も大きくて気持ちよさそうなのだが、それ以上のものが、目の前にたたずみ、今僕の全視覚を奪っている。


「富士山……」


 浴槽の後ろ、僕の目の前に飾られた巨大な富士山。

 正確に言うと、巨大な富士山の、絵。

 日本が誇る最高峰の山、霊峰富士が僕の目の前いっぱいにひろがっていた。


「すごい……」


 テレビの影響で、銭湯の中には富士山の絵があると勝手に想像していたが、まさか本当にあるとは思わなかった。これほどのものとは、思わなかった。


 一応画家志望で絵をかじっている僕にはわかるが、この絵はすごい。

 何がすごいかと問われれば、何故か答えることができない。

 ただ、すごいということだけが、わかる。


 絵全体から作者の気持ちというか、絵に対する情熱というか、そのような熱い何か、人間的な何かが心に直接語りかけるように伝わってくるのだ。


「僕は……何を……」


 そう。僕はここにきて気づいたのだった。

 絵を描くことに大切なのは、名誉でも、名声でも、金でもなくて、ただ絵が描きたい絵が好きだという気持ちだけなのだ、と。銭湯という、絵に全く関係のないような場所で、大きな富士山の絵を通じ、ようやく僕は何か大切なものが見えた気がした。


「でけぇなあ……富士山……」


 僕は涙を流していることを自覚しないように、ひたすら湯船に潜り続けた。





          ◆





 僕は風呂から出ると、番台のところでコーヒー牛乳をもった一条さんに出くわした。

 彼女は僕にコーヒー牛乳を手渡すと、もう一本取り出して自分も飲み始める。

 それを見た僕も、テンプレ通り腰に手を当てて一気に飲み干した。


「いい湯でしたか?」


 すると、そう聞かれたので、


「うん、いい富士山だった」


 と正直に答えた。

 それを聞いた一条さんは、『お湯加減のこと聞いてるのにぃ』といたずらっぽい笑みを浮かべたが、すぐにいつもどおりの柔らかい笑みに戻った。それを見て、つられて僕も笑った。


 ちょっと可愛いと思ったのは、内緒だ。


「佐藤さん、目つきが変わりましたね」

「そうですか?」

「カッコイイです」


 お世辞だとわかりつつも、ちょっと嬉しかったのは男の性ってやつだ。

 それよりも、目つきが変わったというのが気になった。こんな短期間で目つきなんて変わるものだろうか。風呂に入って目がサッパリしただけだと思うのだが。

 しかし、自分の中で何かが変わったのには、気づいていた。


「あの富士山、父が書いたんです」


 それを聞いた僕は、ひどく驚いた。もう少しで腰を抜かすところだった。

 ええ! とうろたえる僕を見て、一条さんは微笑みながら話を続ける。


「父も絵が凄く好きで、あの絵も自分で絵の具やら何やらを揃えて自分で書き上げたんです」

「あれが素人の絵だなんて……」

「私が小さい時父が一生懸命あの富士山を描いてるのを見ましたが……、その時の父は今までにないくらい笑顔でした」


 そうだ。僕にも純粋に絵を描くのが楽しくて書いていた時期があったはずだ。それを、賞だ技術だ何だのと考えるうちに、絵は楽しむものではなくなっていた。


 一条さんのお父さんは、何にも縛られず、自分の書きたい絵を自分の描きたい通りに描いたから、あそこまで素晴らしい富士が出来上がったのだ。

 あの時感じた、絵師の情熱、何がうまいのかはわからないという気持ちはこれだったのだ、と僕は気づくことが出来た。


「佐藤さんも、何か気づけたみたいですね」

「一条さんと、一条さんのお父さんのおかげだよ」


 いつの間にか僕達は笑いあっていた。


 彼女にも、自然と敬語を使わなくなった自分に気がついたが、それもいいかと思える自分がいた。

 また、自分の描きたいと思う好きな絵を描いてみよう。

 渋谷にきて失っていたものを、この渋谷から一歩外に出た渋谷で僕は取り戻すことができた。


「私、佐藤さんの絵、見たいです」

「描くよ、僕。描けたら、一番に一条さんに見せるよ」


 そう正直な気持ちを伝えると、彼女は大きな返事と可憐な笑顔を僕にプレゼントしてくれた。

 それに僕も、笑顔で返す。


 飲み終わったコーヒー牛乳をゴミ箱に捨て、すっかり忘れて生暖かくなっていたマグロの刺身が入ったビニールを手に持って、出口の方へと歩いていった。これは、もう食えないかな……。

 こんなことなら、焼けばなんとかなる鶏肉にしておくべきだった。と思ったが、後悔はしていない。


 マグロは、彼女が選んくれたおつまみだし、なによりも、彼女が好きだといった魚だ。

 後悔どころか、彼女と僕を引き合わせてくれたことに感謝さえしている。


「今日は本当にありがとう、じゃあ帰るよ」

「はい! ……絵見せてくれるの、約束ですよ!」


 そんな彼女の言葉を背に受けながら、僕は彼女のように笑ってみせた。

 彼女の笑顔に少しでも近づきたい、そんな気持ちからだ。

 そして僕は去り際に足を止め、


「……また来てもいいかな?」


 と聞いた。

 彼女は待ってましたと言わんばかりに、


「はい!」


 と答えた。

 僕は胸の奥が熱くなるのを感じたが、「じゃあまた!」と後ろ姿のまま手を振り、銭湯を去った。


 

 帰り道、こんな気分が軽い帰路を初めてだと感じながら、薄汚れた渋谷の町を歩き続けた。

 一刻も早く帰って、絵を書き上げたい。


 どんなに下手糞だって、笑われたって、評価されなくたっていい。

 一条さんのお父さんが書いた富士山に負けないくらい、思い切った絵が描きたい。


 どんな絵にしようか……。そうだな、太陽のように笑う少女の絵が描きたい。

 その少女が好きだといった、マグロの絵も書きたいな。そうだ、銭湯でマグロと少女が楽しく泳いでいる絵、もしくは入浴している絵なんかどうだろう。その絵のバックに、その少女の父が書いた大迫力な富士山の絵を描いたっていい。


 絵のアイデアは、無尽蔵に湧き出てきて、とどまることを知らなかった。

 絵を描いて、早く一条さんに見せたい。

 そして、彼女が絵を見ている間、僕は湯船につかって時が経つのを忘れるまで富士山の絵を眺めていたい。

 そしてなによりも、彼女の笑顔がまた見たい、そう思った。




 今日は少しだけ輝いて見えた渋谷の光が、僕の帰り道を明るく照らした。



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