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#3: ザ・バトラー・アト・ザ・ドア



コン、コン。


小さな音。


部屋の扉の方から。


一瞬、動きが止まる。


(……え?)


こんな時間に?


気のせい……じゃない。


「……誰?」


思わず声が出る。


静かな部屋に、やけに響いた。


一拍。


間があって。


扉の向こうから、落ち着いた声が返ってきた。


「失礼いたします、お嬢様」


知らないはずなのに。


どこか聞き覚えのある、低く穏やかな声だった。



コン、コン。


さっきよりも、少しだけはっきりとしたノックの音。


気のせいじゃない。


完全に、誰かいる。


(……どうする?)


一瞬だけ迷う。


こんな時間に訪ねてくるなんて、普通じゃない。


イベント?それともただの用事?


いや、この世界で「ただの用事」って逆に信用できないんだけど。


「……どうぞ」


結局、そう答えてしまった。


断る理由もないし、無視する方が不自然だ。


カチャ、と静かに扉が開く。


入ってきたのは


「失礼いたします、お嬢様」


落ち着いた声。


無駄のない動き。


そして、完璧すぎる所作。


(……あ、この人)


一目で分かる。


ただの使用人じゃない。


背筋が自然と伸びる。


年齢はそれなりにいっているはずなのに、姿勢は微塵も崩れていない。無駄のない黒の服。白い手袋。視線は柔らかいのに、どこか鋭い。


「アルフレッドと申します。夜分遅くに失礼いたしました」


やっぱり。


(出た、モブじゃないやつ)


ロゼリアの記憶が、名前を補完する。


家に仕える専属の執事。


そして


(絶対有能なやつだこれ)


なんとなく分かる。


こういうタイプは、大体全部見てる。


全部分かってる。


つまり。


(めちゃくちゃ危険人物では?)


内心で警戒レベルが一気に上がる。


けど、そんなの顔に出したら終わり。


とりあえず、平静を装う。


「構いませんわ。それで、何かご用件かしら」


できるだけ自然に。


できるだけ“ロゼリアっぽく”。


アルフレッドはわずかに頭を下げた。


「本日の件について、少々気がかりなことがございましたので」


(うわ、来た)


直球すぎる。


逃げ道なし。


心の中で盛大にため息をつきながら、表情は崩さない。


「気がかり、とは?」


「お嬢様のご様子が、いつもと少々異なって見えましたので」


さらっと言うな。


(やっぱ気づいてる!?)


一瞬、心臓が跳ねる。


けど、ここで動揺したら終わり。


むしろ、自然に返すしかない。


「……そうかしら?」


軽く首を傾げる。


余裕ありげに。


「ええ」


アルフレッドは迷いなく頷いた。


「通常であれば、あの場でお嬢様が大人しく引き下がることは考えにくいかと」


……ですよねー。


(そりゃそうだよね!元のロゼリア絶対キレるもんね!)


心の中で全力同意しつつ、外面は保つ。


「状況を考えれば、あの対応が最善と判断しただけですわ」


少しだけ顎を上げて言う。


いかにも“計算してます”みたいな感じで。


アルフレッドは、わずかに目を細めた。


(あ、これ探ってる顔だ)


完全にテストされてる。


怖い。


めちゃくちゃ怖い。


「なるほど」


短く、そう返される。


でもそれで終わらない。


沈黙が続く。


じっと、見られている。


値踏みされているみたいに。


(やばい、この人プロだ)


変なこと言ったら即アウトな気がする。


いやもうすでに怪しまれてる気もするけど。


「……お嬢様」


静かに呼ばれる。


その声は柔らかいのに、妙に逃げ場がない。


「本日のご判断、大変興味深く存じます」


(興味深いって何!?褒めてるの!?疑ってるの!?)


分からない。


全然分からない。


でも一つだけ確かなのは。


この人、ただの執事じゃない。


そして。


(完全に見られてる……)


逃げ場は、なさそうだった。

アルフレッドは、わずかに視線を落とした。


その仕草一つで、空気が少しだけ緩む。


……ように見えて、全然油断できない。


「本日の件につきましては、すでにいくつかの噂が広まり始めております」


(やっぱり)


早い。というか、早すぎる。


「内容は様々ですが……お嬢様が冷静に婚約破棄を受け入れた、という点に関しては、概ね一致しております」


「そう」


短く返す。


内心では、ちょっとだけほっとしていた。


少なくとも、最悪の方向には転がってない。


「困惑している者も多いようでございます」


「でしょうね」


思わず素で返しそうになって、ギリギリ抑える。


「……つまり、今はまだ判断が保留されている状態、といったところでしょうか」


アルフレッドの言葉に、小さく頷く。


(やっぱり、そんな感じなんだ)


完全にアウトではない。


でも、セーフでもない。


宙ぶらりん。


一番厄介な位置。


「今後の振る舞い次第では、評価が大きく変動する可能性がございます」


「……忠告、ありがとう」


素直にそう言うと、アルフレッドはわずかに目を細めた。


ほんの少しだけ。


さっきよりも、柔らかい気がする。


(……気のせい?)


「恐れながら申し上げます」


ふいに、彼が一歩だけ近づく。


距離が、ほんの少し縮まる。


それだけなのに、妙な圧を感じる。


「お嬢様は..」


一瞬、間があく。


静かな部屋の中で、その沈黙がやけに重い。


「……以前とは、随分と印象が異なって見受けられます」


来た


核心


でも、さっきより直接的じゃない


逃げ道を残してる言い方


「そうかしら」


あえて軽く返す。


「人は、変わるものではなくて?」


アルフレッドは、すぐには答えなかった


ほんのわずかに、口元に笑みを浮かべる


それが肯定なのか、否定なのかは分からない


「……左様でございますね」


それだけ言って、一歩下がる。


そして、いつもの完璧な距離に戻った。


「では、本日はこれにて失礼いたします」


すっと頭を下げる。


その動作は、最初と変わらず無駄がない。


扉の前で、彼は一度だけ立ち止まった。


振り返らないまま。


「――明日、殿下よりお呼び出しがございます」


(……は?)


思考が一瞬止まる。


でも、声には出さない。


「詳しいお時間は、朝に改めてお伝えいたします」


それだけ告げて。


今度こそ、静かに扉が閉まった。 


……しばらく、動けなかった。


(呼び出しって……なにそれ聞いてないんだけど)


いや、そもそもゲームでもこんなのあった?


分からない。


また、ズレてる。


静まり返った部屋の中で。


私はゆっくりと、息を吐いた。


(……やっぱり、全然楽じゃないじゃん)


そして、ふと。


さっきの最後の言葉が、頭に引っかかる。


以前とは、随分と印象が異なって見受けられます。


(……それ)


薄く目を細める。


「……どこまで気づいてるのよ」


答えは、まだ出ないままだった。


私はあまり地上波テレビを見ません(冗談です)。

でも毎週金曜日には、必ず楽しみにしている番組があるんです。午後11時~11時10分頃に始まって、午前11時50分~12時頃に終わるんですが、ミッドナイトからのデイリーニュースレポートを考えると、寝るのは午前1時頃になりそうだ。それはちょうど私の普段の就寝時間なんです。


著者の睡眠習慣:

23:00~23:30(就寝、起床は06:35)

金曜日 午後11時50分~午前0時00分(午前6時50分起床)

私は毎晩5時間40分から6時間睡眠をとります。

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