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7/12

邪悪な人々は、ずっと昔にその闇の魔法を開発した。

これがこの物語の最新エピソードです。楽しんでいただけたら嬉しいです。

警察庁の取調室には、重たい空気が流れていた。


机の向こう側に、三人の若者が座っている。


最初の三人の被害者――

その息子たちだった。


 


キム・ヒヨンは静かに椅子に座った。


これまでにも、彼らには何度も話を聞いている。


しかし今日は、少し違った。


 


ヒヨンには、一つの仮説があった。


 


「もう一度、確認させてください」


 


彼女は穏やかな声で言った。


 


「皆さんが高校を卒業した日のことです」


 


三人は顔を見合わせた。


 


ヒヨンは続けた。


 


「その日、あなたのお母さんは来ていましたか?」


 


一人目の青年がすぐに答えた。


 


「はい」


 


二人目も、うなずいた。


 


「もちろんです」


 


三人目も言った。


 


「母は、卒業式のあとに僕を抱きしめてくれました」


 


彼は少し笑った。


 


「おめでとうって言ってくれて……」


 


三人とも、その日の思い出を自然に語った。


 


嬉しそうな声。


 


大切な記憶。


 


ヒヨンは黙って聞いていた。


 


そして、ゆっくりと封筒を机の上に置いた。


 


「……では、これを見てください」


 


封筒の中から、数枚の写真を取り出す。


 


「これは、皆さんの高校の卒業式の日に撮られた写真です」


 


ヒヨンはそれぞれの前に、一枚ずつ写真を置いた。


 


その写真は、各高校の校長に連絡を取って手に入れたものだった。


 


三人は写真を見た。


 


そして――


 


表情が変わった。


 


写真の中の彼らは、確かに写っていた。


 


卒業式の会場。


 


制服姿。


 


クラスメートたち。


 


だが。


 


三人とも、どこか沈んだ表情をしていた。


 


そして――


 


誰の隣にも、母親の姿はなかった。


 


取調室の空気が凍りつく。


 


「……おかしい」


 


一人の青年がつぶやいた。


 


「そんなはずない」


 


別の青年が写真を震える手で持ち上げた。


 


「母は……来ていた」


 


「絶対に」


 


三人目の青年は、写真を見つめたまま動かなかった。


 


やがて。


 


彼の呼吸が荒くなった。


 


「……違う」


 


「違う」


 


次の瞬間。


 


三人はほとんど同時に椅子から崩れ落ちた。


 


床にしゃがみ込み、頭を抱える。


 


「……おかしい」


 


「思い出せない」


 


「どうして……?」


 


取調室には、混乱した声だけが響いていた。


 


キム・ヒヨンは、その光景を静かに見ていた。


 


胸の奥で、冷たい確信が広がっていく。


 


(やはり……)


 


誰かが。


 


彼らの記憶を、書き換えている。


 


だが――


 


どうやって?


 


ヒヨンには、まだ分からなかった。


 


 


数日後。


 


ヒヨンは大学の図書館にいた。


 


高い本棚の間を歩きながら、資料を探している。


 


テーマは一つ。


 


記憶操作。


 


洗脳。


 


人間の記憶を書き換える技術。


 


普通なら、そんなものは存在しない。


 


だが――


 


もし存在するとしたら。


 


ヒヨンは古い研究報告書を手に取った。


 


表紙には、英語でタイトルが書かれている。


 


「International Historical Review: Cold War Psychological Programs」


 


ヒヨンはページをめくった。


 


そして。


 


ある名前に、目を止めた。


 


 


“Program Mnemosyne”


 


 


ミネモシュネ計画。


 


それは、旧ソビエト連邦で秘密裏に研究されていた心理実験プログラムだった。


 


目的は――


 


人間の記憶を操作すること。


 


催眠、薬物、心理誘導を組み合わせ、


被験者に偽の記憶を植え付ける。


 


ヒヨンはゆっくりと読み進めた。


 


冷戦時代。


 


ソビエト連邦は、この研究の一部を中国と共有していた。


 


当時、中国は共産圏の同盟国だったからだ。


 


だが。


 


ソビエト連邦が崩壊したあと。


 


この研究がどうなったのかは、誰も知らない。


 


いくつかの歴史家は、こう推測している。


 


その資料は、西側諸国の情報機関によって回収され、


極秘資料として保管されたのではないか――と。


 


ヒヨンは本を閉じた。


 


静かな図書館の中で、彼女は考えていた。


 


もし。


 


もし誰かが、この研究の情報を手に入れていたら。


 


そして、その方法を理解していたら。


 


普通の人間に。


 


偽の記憶を植え付けることも、不可能ではない。


 


ヒヨンは窓の外を見た。


 


夕暮れの光が、街を赤く染めている。


 


(もしそうだとしたら)


 


(この事件の背後にいる人物は……)


 


想像以上に、危険な存在かもしれない。


 


だが。


 


その人物が誰なのかは――


 


まだ、分からなかった。

このエピソードを楽しんでいただけたなら幸いです。次のエピソードも近いうちにアップロードします。

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