ブラッドハウンド探偵は優れた嗅覚を持っている
これがこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。
キム・ヒヨンが警察庁の会議室に入ると、机の上にはすでにいくつかの資料が並べられていた。
被害者は三人。
全員、高齢者。
そして――
その子どもたちのスマートフォンの解析結果。
担当の刑事が、やや困ったような顔で言った。
「共通点らしい共通点は、ほとんどありません。ただ……」
彼はタブレットを操作した。
画面にチャットのログが表示される。
すべて、英語だった。
“Special spring discount.”
“Limited offer.”
“Best Korean skincare products.”
どこにでもある、営業メッセージだった。
「被害者の子どもたちは、それぞれ別の都市に住んでいます」
刑事は続けた。
「年齢も、職業もバラバラです。互いに面識もありません」
少し間を置いて、彼は言った。
「ですが三人とも、同じ会社から化粧品を購入していました」
沈黙が落ちた。
キム・ヒヨンは画面を見つめた。
「……化粧品?」
あまりにも取るに足らない共通点だった。
被害者たちは老人。
化粧品を買っていたのは、その子どもたち。
事件との関係があるとは思えない。
だが――
それでも。
今のところ、それが唯一の共通点だった。
「会社の名前は?」
「Aurora Global Cosmeticsです」
ヒヨンはメモを取った。
小さな手がかりでも、無視する理由はない。
どれほど些細でも。
翌日。
キム・ヒヨンはソウルのオフィスビルを訪れていた。
“AURORA GLOBAL COSMETICS”
入口のガラスドアに、シンプルなロゴが貼られている。
受付の女性が頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
ヒヨンは警察手帳を見せた。
「少しお話を伺いたいのですが」
数分後。
彼女は小さな応接室に案内された。
しばらくして、ドアが静かに開く。
「お待たせしました」
入ってきたのは、若い男性だった。
落ち着いた表情。
控えめな服装。
「ソ・ジュンです」
彼は軽く頭を下げた。
「オンライン販売チームで働いています」
キム・ヒヨンも軽く会釈した。
「キム・ヒヨンです。少し質問させてください」
「はい、どうぞ」
ソ・ジュンの声は穏やかだった。
ヒヨンは資料を取り出した。
「この三人の顧客を覚えていますか?」
ソ・ジュンは紙を受け取り、少し目を通した。
「……はい」
「私が対応した顧客ですね」
彼は自然に答えた。
「うちの会社では、社員全員が英語でやり取りします」
「海外の顧客が多いので」
彼は少し肩をすくめた。
「チャットで商品の紹介やセールの案内を送るのが、主な仕事です」
「正直に言うと……」
少し苦笑した。
「かなり単純な仕事ですよ」
ヒヨンは彼の顔を観察した。
視線。
声。
仕草。
どれも自然だった。
不安も、動揺も見えない。
「顧客と直接会ったことは?」
「ありません」
ソ・ジュンは首を振った。
「基本的に全部オンラインです」
「世界中の人が顧客ですから」
日本。
中国。
東南アジア。
ヒヨンは静かにうなずいた。
すべて、理にかなっている。
普通の会社。
普通の仕事。
そして――
普通の青年。
不自然な点は、どこにもない。
ヒヨンは資料を閉じた。
「ご協力ありがとうございました」
「いえ」
ソ・ジュンは丁寧に頭を下げた。
「何かあれば、いつでも連絡してください」
ヒヨンは会社を出た。
外では、人々が忙しく歩いている。
彼女は立ち止まり、空を見上げた。
化粧品会社。
それが事件と関係あるのか。
それとも――
ただの偶然なのか。
まだ、何も分からなかった。
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