いつか
これがこの物語の最終回です。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。
廃工場の内部。
キム・ヒヨンと警官たちは、暗闇の中へ踏み込んだ。
崩れかけた床。
軋む鉄骨。
湿った空気。
「分かれて捜索!」
ヒヨンの指示が飛ぶ。
その直後——
物音。
影が動く。
「いたぞ!!」
次の瞬間。
——銃声。
閃光が走る。
ソ・ジュンの手下たち。
四方から現れる。
激しい銃撃戦が始まった。
「カバーしろ!!」
警官たちが応戦する。
ヒヨンはその隙に身を低くし、別の通路へ滑り込んだ。
(時間がない……!)
遠くで銃声が響く。
仲間たちが時間を稼いでいる。
ヒヨンは走った。
奥へ。
さらに奥へ。
やがて——
一つの部屋に辿り着く。
扉は半開き。
中に、人影。
ジ・ウ。
椅子に縛られている。
そして、その前に——
ソ・ジュン。
「……来たか」
静かな声。
ヒヨンは銃を構えた。
「終わりよ、ソ・ジュン」
彼は、わずかに笑った。
手には——バール。
次の瞬間、二人は同時に動いた。
激しくぶつかり合う。
金属音。
バールが振り下ろされる。
ヒヨンはそれを避け、引き金を引いた。
——発砲。
弾丸がバールを弾き飛ばす。
床に転がる。
ソ・ジュンの体勢が崩れた。
ヒヨンは距離を詰める。
さらに一発。
弾丸が肩を貫いた。
「っ……!!」
血が飛び散る。
だが——
ソ・ジュンは倒れない。
再び組み合う。
取っ組み合い。
その中で——
ヒヨンの銃が暴発した。
弾丸が壁に突き刺さる。
コンクリートが砕け、深い穴ができた。
一瞬の静止。
ヒヨンの視線が、その穴に向く。
そして——
床に落ちていたバールを掴んだ。
次の瞬間。
ヒヨンは、それをソ・ジュンの肩の傷口に突き刺した。
「がああああああ!!」
絶叫。
そのまま——
壁へ押し込む。
バールが、壁の穴へとめり込む。
ソ・ジュンの体が、壁に固定された。
動けない。
逃げられない。
ヒヨンは息を荒げながら、ジ・ウの元へ駆け寄る。
縄を解く。
「大丈夫ですか!?」
ジ・ウはかすかにうなずく。
だが、立てない。
ヒヨンは彼女を背負った。
遠くで、警報のような音。
(爆発まで、時間がない……!)
ヒヨンは出口へ向かおうとした。
そのとき——
背後から声。
「なあ……キム・ヒヨン」
ソ・ジュンだった。
血に濡れた顔で、笑っている。
「この物語で……」
「“善”は誰だ?」
「奴らか?」
「それとも——」
視線が、ジ・ウに向く。
「その女か?」
「お前の背中にいる、その“老いた側”が?」
「ええ?!」
ヒヨンは、立ち止まった。
一瞬だけ。
そして——
振り返らずに言った。
「私は——」
「彼女を選ぶ」
短い言葉。
だが、迷いはなかった。
ヒヨンは走り出す。
その背中に——
ソ・ジュンの叫びが叩きつけられる。
「終わらないぞ、キム・ヒヨン!!」
「いつか——」
「誰かが、俺の続きをやる!!」
「いつか!!」
「必ずだああああああ!!!!」
ヒヨンは振り返らない。
ただ、走る。
出口。
外の光。
警官たち。
その瞬間——
爆発。
轟音がすべてを飲み込む。
炎が夜を裂く。
廃工場は、完全に崩壊した。
数時間後。
病院。
ジ・ウはベッドの上にいた。
包帯に覆われているが、意識はある。
ドアが開く。
エジュンが、ゆっくりと入ってきた。
腕にはまだ包帯。
だが、立っている。
「……母さん」
ジ・ウの目が見開かれる。
「エジュン……!」
二人は抱き合った。
ヒヨンはその様子を、少し離れた場所から見ていた。
何も言わない。
ただ——静かに目を閉じた。
事件は終わった。
だが——
本当に、終わったのかは分からない。
それでも。
この瞬間だけは——
確かに、守られたものがあった。
——終わり。
最終回を楽しんでいただけたでしょうか。最初からこの物語を応援してくださった皆さんに心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
ちなみに、この物語の続編を執筆中で、近日中に公開予定です。タイトルは「ブルーブラッド」です。
この物語を楽しんでいただけたなら、私の他の作品もぜひ応援してください。




