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EP 07 殲滅、排除、ロストヘルクレス

 黒い群れの正体は巨大な虫の大群だった。それもただの虫じゃない。


「こいつら…!分裂して()()()いる!?」


 拳を繰り出して向かってくる虫を砕くが、それと同じくらいかあるいはそれを凌駕する勢いで一匹が二匹、二匹が四匹と増え、黒い群れは嵐のように渦を巻きながら俺を取り囲む。


「そうくるなら……。"吸気変換"!!」


 エネルギーを充填し、最大稼働状態に移行。一時的な倍速がかった速度で片っ端から虫を砕いて回る。


「増える数より多く潰せばいい!!」


 その時、虫たちの動きに異変が生じた。さっきまで無秩序に攻撃を仕掛けていた虫が全員空に飛び、何もせずに滞空している。


「「「ギュアアァァァAAAaアァォォ」」」


 けたたましく一匹が叫び、それに続いて他の虫も叫びだす。あたりは不快な羽音と虫の鳴き声に包まれる。


 攻撃の合図でもなかった、虫たちの視線はどこか別の方向に向いており、鳴き声には恐れが含まれているようだった。


「あの野郎……最後にラボごと爆破しやがった。お陰でこの害虫の処理という二度手間な仕事が増えた」


 黒い装甲に白のライン、頭部には特徴的な鋭い角、それは昆虫の甲殻を模したような装甲で、その見た目は俺と同じ"ヘラクレス"のようだった。


 その手には大きな角が握られており、端の方を見ると力づくで引きちぎったのがわかる。そして、虫が彼を恐れているのがわかった。


「……なるほど、アイツが言ったのは()()()()()()


 その目線は俺の方へと向けられていることに気づく。


「なるほど、お前がボスの言っていたやつか。ならばここで引導を渡してやる!!」


 周りの虫には目もくれず、真っ直ぐこちらに向かってくる。


「ま!?待て待て!?この状況がわかって……」


『ゲネシスブレイク!』


 俺の言葉は一切聞き入れずに拳を振るう、白と黒のエネルギーを纏ったそれは見ただけで「ヤバい」と本能が訴えるほどに殺意に満ちていた。


 バゴォン!


 拳は空を切り、発生した風圧は暴風の如く。


「構えろ、腑抜けたお前をこの世から消してやる」


「殺意がカンストしてやがる!!」


「キィィィィィ!!!」


 「黙れ!!」


 無視すんじゃねぇと言わんばかりの剣幕で突っ込んできた虫たち、だがヘルクレスの攻撃で一切粉砕する。


「その様子じゃオリジンにすらいたってないか。だとすると本当に記憶が抜け落ちているのか」


 こいつの態度と発言からして記憶がなくなる以前の俺を知っているような口ぶりだ。


「タランデル降下強襲作戦」


「?」


 突然、謎の単語を口にしだす。


「アイロニアン作戦、ロロクラス攻防戦、カンブリディア上陸作戦。サンドワーム討伐作戦……」


「急に何言い出してんだ?」


「作戦名は効果なし、じゃあ……」


「ナンバーズ計画」


("ナンバーズ計画"?どこかで聞いたことがあるような……)


 俺の思考に電流が走る、視界が電源を落としたテレビのように切れ、古い記憶・消えた記憶が再び芽吹く。


 前は戦火の焼け野原だったが、今回はどこかの施設のようだ。

 奥へと続く暗い廊下を歩く、足音が遠くまで響き反響し、少し不気味だ。


 歩いた先には鉄で出来た重々しい扉、上には「この先機密領域」と赤文字で書かれた札。


 扉が開き、続く廊下をまた歩く。扉の先の廊下はより暗く、不安を煽る。


 暗い廊下の先にはもう一つ扉があった。


コポ……コポポ…


 水の音…と言うよりは気泡が浮き上がる音が聞こえる、この扉の奥からだ。


「は、ハハ……嘘だろ……」


 円柱状の水槽、培養ポッドとも言うそれが部屋中に無数に存在しその中には人、髪色は違えどその顔はどれも"俺"に似ていた。


 やがて視界が歪み、元の景色に戻る。戦闘中に別のことに気を取られる・即ち……。


「……腹を貫くつもりでやったんだが……」


 気がつくと壁に叩きつけられており、腹部には鈍い痛みが走っている。逆流した血が口から溢れ出す。


「腐っても俺たちは戦闘用の人造人間、その傷も数十分で治る。だからその頭を砕く」


 こちらにゆっくりと歩いてくる。口調はかえって穏やか、だが構えた右手からは殺意を感じる。


 装甲は形を保つ力を失い、破損した腹部から消えていく。確かな殺意をその手に宿したやつの前に剥き出しの生身が投げ出される。


「そこまでだ」


 ヘルクレスの前に二つの影が現れる。小さな騎士のようなロボット二機が浮遊しながら剣を構えてヘルクレスを牽制している。


「ナイトレギオン、警戒を解くなよ。他のレギオンは虫の掃討or撃退に回れ」


 同じ見た目の小さなロボットがたくさん飛び交う。それを操る、指揮しているのは奥に見える軍帽を被り派手な外套を纏っている装甲、この街3番目の実力者、ランクS03"アルファ・オーダー"。


「ずいぶんと逃げ足が速いな……もう見失うとは」


 あれから事態は驚くほどの早さで収束していった。俺も事情聴取を小一時間受けてすぐに解放された、気がつけばもう日が暮れ始めている。


「あ、グリス!」


 遊園地を出た先でユナと再会した。ユナには自身がアーマーファイターであることの説明を簡単にし、今日1日の振り返りをしていた時。


「……ねぇグリス。今から時間ある?」


「どうした?」


 俺の何気ない質問に微笑みながら。


「見せたい物があるの!」


 そう言った。



大変お待たせしました!年末で仕事が忙しいのと物語の構想を練っていたらアホみたいに時間かかってしまいました。ここからは構想練りながらの制作になるので更新が長くなってしまう可能性が大いにあります。

 暖かい目で見守って欲しいです!

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