EP 04 遭遇戦
空から赫い光と共に特例上位ランカーが現れた。
「うっそだろぉ……」
どうしてこんな人気の少ない公園にやってきたかはわからない。俺もバカじゃない、わざわざ人の少ない都市のはずれに位置する公園を選んだのだって他のファイターから勝負を挑まれて動作確認の邪魔をされたくなかったからなのに。
「わざわざランクSのファイターがどうしてこんな過疎ってる公園に?」
アーマーファイトが盛んなのは都心部、人が集まるのも都心部、ならばファイターは自然と都心部に吸い寄せられ他のファイターと戦う。つまり都心部の方が多くのファイターと戦えてFPが稼げる。だからわざわざこの公園にくるのは何か理由があるはずだ、何かしらのイベントやら何やらと。
少しの沈黙の後、赫星戦騎は口を開く。
「……ここは景色がいい」
そういうと姿勢を低く構えて飛び上がり、赫い炎を纏った足で飛び蹴りを放つ。
「うお!」
正面からの不意打ちの飛び蹴りを躱わす、高速で着弾した赫星戦騎はゆっくりと起き上がり構える。
「…は、ははーん。さては景観スポットを独り占めしたいってわけか?ランクSなのに小せえ野郎だな!」
俺の言葉に対して真正面からの正拳突きで返答する、図星のようだ。
それにしても速いな、スタイリッシュで”静"と"動"が混ざらず両立している。それゆえに緩急のついた動きは実際の速さ以上に速く見える。
そして理解した、なぜこいつらが"Sランク"と呼ばれているのか。
「ハァ…ハァ…。だいぶ慣れてきたぞ……!」
「ではスピードを上げましょう…」
目の前から赫星戦騎が消え、次の瞬間には顔部に綺麗に蹴りが入る。
こいつは装甲の性能以上にそれを完全以上に使いこなしている。あの爆弾野郎と比べると明確に違いがわかる。装甲の機能を必殺技として使っているのに対し、こいつは装甲の機能を自身の戦闘の補助として使っている……!!。
「そっちがその気なら……!!」
デンタリウスの装甲の機能「吸気変換」、さっき試しにゲージを上限まで貯めた、コレで巻き返す。
「"吸気変換"!デンタリウス最大稼働!!」
装甲各部に走る青いラインが光り輝く、そして。
「そこだぁ!!」
装甲全体のスペックが底上げされた状態の俺は赫星戦騎が繰り出したパンチを紙一重で避け、カウンターで繰り出した右拳が赫い隕石の顔を捉える。
「一発入った!」
そう叫んだのも束の間、大したよろめきも見せずに俺の背後に回り込み、エネルギーを纏わせた一撃が俺の胸部中心に命中し、吹き飛ぶ。
「一撃程度でこの装甲が砕けるわけないでしょう……」
赫星戦騎の声は一貫して低く落ち着いた紳士的イケボ……。正直腹立つ。
このままトドメを刺すかと思ったが、やつは俺に背を向けて去ろうとしている。
「……トドメ刺さねえのか?」
「自身より低いランクは倒してもFPの入りが少ないのでやる人は少ない。まぁそれでも格下キラーなんてものが現れるのですが」
装甲の時限強化も切れ、唯一の勝ち道も消えた。しかもトドメ刺すまでもないと。
「……いつか渾身の右ストレート入れてやるよ」
地面に倒れ伏しながらもそう言う俺を見つめ。
「…楽しみにしています」
そう言い空の彼方に飛び去っていく奴の声はどこか嬉しさを含んでいた。
〜翌日〜
「よし!一から鍛え直しだ!!」
考えるに俺はまだ装甲と釣り合っていない。昨日の戦いも途中から息切れし出していたし、俺に必要なのは"体力"だ。
ネットでトレーニング方法を調べ、それをもとにメニューを組み立てた。服もこのままではだめらしいので服屋でトレーニングウェアを購入し着衣。
まずは筋トレ。腕立て腹筋スクワット、筋トレは筋肉を限界まで追い込むのがいいらしい。昨日の公園付近で始める、ここは人が少ないので気にすることなく運動ができる。
「次にランニング……」
軽くストレッチを済ませ、走り出す。呼吸を整えてスピードは一定に保つ。
そしてこれらをするにあたり最も大事なこと、それは「毎日やる!」。
アーマーファイトと別にトレーニングという項目が一日の中に加わった。だが日を通して約二ヶ月、筋トレもできる回数が増えてきたしランニングも速いペースでも息切れしにくくなった。
ある日の夜、部屋(賃貸)で寝ようとしたがどうにも眠れない。なので俺は軽く走ろうとジョギングしに家を出た。
都市部の物件は家賃が高いので少しはずれたところの家賃が比較的安めのマンションの3階を借りており、ここから公園まではだいたい15分ちょいでつく。 この辺りは夜はとても静かで車も少ない、割と山に近い場所なのでたまにタヌキも見る。
「そういやこの時間帯はいるのかな」
俺がいつもランニングを始めるのは大体夕方だ、そして毎日夕方になると公園のベンチに一人女の子が座っている。公園は都心部に比べて標高の高い場所にあり、公園からは都心部の光景が見える、あの赫い奴がいい景色と言うのもわかる。
今は夜で星がチラチラ見える、時間帯が違うだけで同じ場所でもここまで光景が変わることを知る。
もうかれこれ二ヶ月、毎日見る。灰色の髪を伸ばし、服装の違いあれど毎日同じベンチに腰掛けている。目線は常に遠くの都心部、たまに寝ている時もある。
いつものように通り過ぎようとした時、何気なくベンチの方を見ると少女と目が合う。
(そういえば真正面から顔見るのは初めてだな)
なんて考えていると少し形のあるゴミを踏んだ、この一瞬俺は自分が走っていることを忘れていた。
(まずい…!)
「へぶ!!」
体勢を立て直そうとした動きが返って足をさらにもつれさせ、顔面から地面に叩きつけられる。
我ながらなんと情けない姿というかなんというか、鼻先を擦りむいてしまった。
「え……と大丈夫?ちょっと待ってて……」
そう言うと少女はポーチから絆創膏を取り出し、俺に渡してくれた。
「よかったらコレ使って」
「ありがとう、感謝してもしきれない……」
こんな醜態を前にノータイムで絆創膏を渡してくれるなんて絶対いい人だ。
「やっぱり慣れない時間帯に出歩くものではないな。中々寝れなくて、気晴らしにここまで走ってきたんだが……」
少し間隔を空けてベンチに座る。公園に生えた木々がまるで絵画の額のような役割を果たし、奥の都市部の光景を収めている。
「いい景色だなぁ…」
思わず声が漏れてしまう。
「夕方になると夕日が建物のガラスを照らして、また違う景色が見れるよ」
「なら朝、日の出の景色も見ておきたいな」
「朝まで起きる気?じゃああたしも」
そうして俺たちは共に日の出を見るためにベンチに座る。
「せっかくだし名前教えてよ。あたしはユナ」
「グリスだ、昨日ついた」
「昨日!?」
互いの名前を教え合い、他愛ない会話で夜明けまで乗り切ろうとしたが二人とも睡魔には敵わず、ふたたび目を覚ます時には太陽は真上に位置していた。
キリのいいとこでまとめたく、長くなってしまいましたことを謝罪したい。




