#17 自分勝手な祈りをどうか許して
「また、……倒れちゃった、ね。……もうないと思ってたのに、さ」
まゆさんは、心なしか青ざめた顔で無理に笑った。そんな彼女に、僕はぎゅっと唇を噛み締めた。大事な妹が二回も倒れたんだ。それは、怖いだろう。
姫がもし二回も倒れたら? そんなことを想像するだけでも怖いのに、まゆさんはこうやって無理に笑っている。
……でも。それは、彼女自身にとてもストレスなんじゃないのか。
「……まゆさん、あの」
「あはは、大丈夫だよ王君。……ごめんね心配掛けちゃって。情けないな~」
「……っ、まゆさ、」
言い掛けるも、まゆさんが手ですっと制止して来た為う、と押し黙る。
「……まゆ」
槙人さんが聞いたこともない低い声でまゆさんを呼んだ。
その時だった。
「常盤さん、常盤よすがさんのご家族の方いらっしゃいますか?」
「「「!」」」
その言葉に、僕たちは一斉に立ち上がる。
真っ先に言の葉を紡いだのはまゆさんだった。
「っ、それで、よっちゃ……よすがはっ……⁉」
「はい。よすがさんですが、脈は正常に戻りました」
その言葉に、まゆさんと槙人さんは胸を撫で下ろす。僕も無意識に詰めていた息をほっと吐き出した。しかし、医師の次の言葉に、もう一度ひゅっと詰めた。
「ですが……まだ、意識が戻らなくて……」
「「「……っ」」」
「最悪の場合、このまま眠り続け……という可能性もあります」
言いにくそうに医師が放った言葉に、僕たちは呆然と立ち尽くす。
「ですから、入院となるかと。……常盤、さん?」
「あ……」
「、すみません、もう一度よろしいですか」
槙人さんが言うと、医師は柔和そうに微笑み、手を横に振った。
「いえ、お気になさらず。ご家族が亡くなるかもと聞けば、誰だってそうなりますよ」
「っ……有難うございます」
「えっ、あっ、有難うございますっ」
槙人さんが深く頭を下げ、まゆさんもそれに倣って頭を下げる。医師は、そんな二人に笑みを深め、「いえいえ」と言った。
「よすがさんは入院となるかと。ですから、必要な物を持って来て下さい。目覚めれば退院、と言うことになると思われます。よろしいですか?」
「……、はい」
医師の言葉をゆっくりと噛み砕く。
よすがが死ぬかもしれない——前、あの濃紺に花が咲いた日、よすが本人が言っていたことだ。
——僕は何も、覚悟なんて出来ていなかったんだな。
今更気づき、自分の馬鹿さ加減に嗤ってしまう。
僕はぎゅっと拳を握り締め、いつかの母さんのように硬い表情で医師の話を聞いた。
——どうか、目覚めて。
——僕の傍から、いなくならないで。
いつか母が倒れた時に思った言を、また思う。
この期に及んで自分勝手だな、と、乾いた笑みを漏らした。
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