#14 どうしてそんなにコミュニケーション能力が高い⁉
僕が語り終えても、誰も言葉を紡がなかった。
紡げなかった、と言った方が正しいか。紡ぐための糸が、なかったと言うような。
最初に糸を見つけたのは、やはりと言うべきか、よすがだった。
「お母さんは、今は元気、……なの?」
「うん。元気にしてるよ」
「お金も、前よりは苦しくないよね」
「そうだね。それでも、まだ家計は苦しいけど……。それより、姫。大丈夫だった?」
「ふぇ? あ……あぁ~! うん。全っ然。めっちゃだいじょぶ」
顎に手を当て、得意気に姫が言う。……良かった、と、僕は心底安堵した。
「あ、もう出なきゃだ」
ふふ、と微笑ましそうにしていたよすがが、そう言えば、と言ったように時計を見、そう声を発した。
「ん……よし、じゃあね、王、姫ちゃん」
「えっ、よすがちゃん、もう帰っちゃうの⁉」
姫が名残惜しそうによすがを見る。……あれ、この二人、いつの間にこんな仲良く……?
「帰らないとお父さんに怒られちゃうからなぁ……。本当はもっといたいけど……」
よすがもそう名残惜しそうにする。
「また来たら?」
「えっ、……いいの⁉ やった、有難王!」
僕が助け舟を出すと、よすがは大袈裟な程に喜ぶ。姫も瞳を輝かせ、「お兄ちゃん有難ー!」と抱きついて来た。
「どういたしまして。ほら姫、よすが送るから支度して」
「えっ⁉ い、いいよ! こんな時間に……」
「『こんな時間』だからだよ。暗い中一人で歩いたら危ないよ? ……だから送る」
「よすがちゃん、お兄ちゃん割とけっこー頑固だからこうなったら諦めるしかないよ」
「う……。……有難、王、姫ちゃん」
観念したようにお礼を言うよすがに、僕と姫はニッと笑い、
「「どういたしまして!」」
と言った。
「ふわぁ、もう真っ暗だぁ。冬だねぇ」
「そろそろ雪降る頃じゃないかな」
「だね! あー、後二週間も経てばクリスマスかぁ。雪降ったらいいなっ」
「そうだねー! あ、王、姫ちゃん。クリスマスって、……何か予定とか、ある?」
よすがは指をもじもじさせながらそう僕たちに聞く。僕は少し考え、首を横に振った。
「ううん、ない」
「あっ、わたし友達とクリパするから無理だよ」
「そっかぁ……姫ちゃん一緒に遊べないのかぁ……」
至極残念そうによすがが言うと、姫は何故かニヤッと悪そうに笑った。
「うわー、悪い笑み」
「うっ、うるさいお兄ちゃん! ……ふふふ……クリスマスはどうぞお二人でお楽しみ下さいな~♡」
「「っ⁉」」
ニヤニヤしながらの姫の言葉に、たちまち顔が赤く、熱くなる。横を見るとよすがもで、気を紛らわせるためによすがを揶揄う。
「よ、よすが、めっちゃ顔真っ赤だよ?」
「う、うるさい! 王もだし!」
お互い顔を真っ赤にしながら言い合う僕たちに、更にニヤニヤとした笑みを深め、姫は、おっさんじみた声で
「やー、二人とも初心っすねぇ」
と言った。それにイラっと来た僕は、笑みを貼り付け「姫?」と呼んだ。そのニヤニヤ笑いがピキッと凍り付く。
「姫?」再度呼ぶ。「ちょーっとやりすぎかなぁって思うんだけど、どう?」
「……ごごごごごめんなさぁーいっ‼」
「じゃあまた明日、学校で」
「うん。有難、またね」
「うぅ……またね、よすがちゃん……」
「……。う、うんまたね、姫ちゃん」
翌日。
「あっ、皇! ちっと話いいか?」
「……? ん、別にいい、けど……」
朝教室に着くと、田所という名の男子生徒が話し掛けて来た。
「それで、話って」
「お、おぉ。あのさ……お前、常盤サンと付き合ってんのかよ」
「……え? え、うん……」
あれ、学校では周知されてなかったっけ。
「飯野たちから聞いて、さ……マジかぁ……」
田所はそう呟いてから、「有難な、皇」ときちんとお礼を言ってから去って行った。
「——あっ、皇君、よすがちゃん!」
「ん? あぁっ、さやちゃん、しいちゃん、きのちゃん! お早ーっ!」
……あの時は確か苗字呼びだった筈。なのに、今はもう名前呼び。女子という生き物はコミュニケーション能力が化け物である。
予鈴が鳴り、一日が始まった。
「王ー! ごっめーん、今日さやちんとしいたんときのぴーとお昼食べるから、一緒に食べれないや!」
……呼び方が……、どうしても、気になる。
「あぁ、分かった。大丈夫」
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