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第四章前編 第17話

薄暗い照明の中、夏輝達が部屋に入る。そこにあったのはカプセル状の仮眠ベッド。2つはシャッターが開いているが1つは腕が飛び出した状態だった。飛び出した腕を観察した夏輝が言う。

 

「作り物だな……ほぼギミックはないと見ていいが……一応後ろにいろ」


 夏輝はシャッターを開ける。そこにはS.Kの名札をつけた死体があった。

 

「死んでたか……雅、タブレットをくれ」


 死体のそばにあるQRコードを読み込むとアイテムである"正気度回復薬"と共にS.Kの手記を手に入れた。

 2人は手記を見る。内容として書かれていたのは以下の内容だった。

 

『ここの主任(マッド・ドクター)はイカれている!私達のこともモルモットとしか思っていない!同期のアイツは栽培室に移動になった後、連絡が取れない!周りから知らぬうちに人が消え、新たな人員が補充されている。ここは一体なんなんだ……!俺には誰を信じたらいいのかわからない……!』

 

「こりゃまた……壮絶だな……」


 夏輝がそう呟けば、足音が近い。タブレットを見ると赤い点はすぐそばまで来ていた。

 

「隠れるぞ」


 夏輝は雅の手を引き抱き寄せると扉の死角に隠れた

 マッド・ドクターは部屋を覗く。その見た目は歪であった。身長は優に2メートルほど。身体はツギハギだらけである。首からは聴診器を下げボロボロの白衣を着ていた。手には棍棒。白衣にも棍棒にも血痕がこれでもかと付着していた。夏輝は雅を抱き寄せ、視線を遮る。

 

「作り物にしても……やりすぎだろ……」


 マッド・ドクターは、軽く部屋を見回すとそのままどこかに行った。

 

「ヤツはどこかに行ったか……雅、今のうちに移動するぞ」


 涙目でコクコクと頷く雅。夏輝は手を引くと次のポイントへと向かうのだった。


 夏輝達はマッド・ドクターの執務室へと足を運んだ。意外にも中は照明が点灯しており、荒らされた形跡はなかったが……綺麗すぎる故に恐怖を感じた。タブレットを見れば青く表示され、安全地帯であることを知らせていた。


「ここは入ってこないのか……雅、手分けして何かないか探そう」


「わ……わかった……」


 雅は名残り惜しそうに手を離すと、部屋の中を動き回る。同じく夏輝も部屋の中を見回してゆく。


「カルテ……議事録……陳情書に……人事異動の知らせ……手がかりになりそうなモンは見当たらねぇな……回復薬が多めに見つかったくらいか……」


「死亡証明書……コレ、もしかしたら何か手がかりになるかも……!」


「今回ほど銃が欲しいと思ったことはねぇな……」


「後は何かあるかな……コレは……手紙……?」


 雅がドクターの机の引き出しを開けると中には3通の手紙が入っていた。


「夏輝君!コレ」


「公的機関の死亡証明書……名前は……ドクターか?」


「死因は神経接続手術の失敗による"四股喪失"と"大量出血"って書いてあるね……」


「追伸……解剖後、死体の消息は不明。見つけ次第連絡を……なんかきな臭くなってきたな……もう一つは?」


 雅は3通の手紙を夏輝に見せた。手紙の中身を見た夏輝は言う。僅かに文字が違うが3枚とも酷似した内容であった。


「コレは……手紙……?いや恋文か……宛名はドクター宛……差出人は……?」


 手紙の差出人にはそれぞれ、 I、II、 III、とあった。夏輝の脳裏にある3人がフラッシュバックする。


「ナースからの手紙か……!あの三姉妹は同じドクターに恋していたってことか!」


「ならあのナース達が行っていたことって……」


「ドクターを生き返らせるパーツを集めてたってことだ」


「じゃあ……私達は……」


 雅の背筋に嫌な汗が伝う。


「生き返らせたってことは診察するだろうよ……患者は……俺達だ……!」


「………ッ!」


 その一言で雅は息を飲む。更に夏輝は近くにあった手術計画書とリストを発見した。


「計画書は……コンプリートされてるな……いや、待った。"不完全な為、至急移植する必要のある臓器アリ"……身体のど真ん中が強調されてるってことは心臓か」


「ね……ねぇ……リストにある心臓のところ……」


 震える指で雅が指差す部分を夏輝は読み上げた。

 

「心臓・体格と行動を鑑みるに少なくとも2名以上の心臓を定期的に移植する必要アリ。新鮮なモノを移植する必要がある為、生体移植が望ましい……書いてることヤベェなコレ……要はとっ捕まえて、腹ん中掻っ捌いて心臓貰うってことだろ……」


「なら……私達は患者兼ドナーってこと……?」


「いや少し違う……ドクターにとっては俺達は患者だが……ナース姉妹にとって俺達はドナーだ。つまり……」


 夏輝が結論を述べようとした時、微かに聞こえてくる音。徐々にこちらに近づいてくる。夏輝は念の為、雅をデスクの後ろに隠れさせるとドアに耳を当てる。聞こえてきたのは"コツ……コツ……コツ……"という音。やがて音は部屋の前を通り過ぎ聞こえなくなった。

 夏輝はなるべく静かに雅の元へ向かうと手を取り告げた。


「今の音、何だったの……?」


「おそらく……ヒールだ……少なくとも……ドクターじゃねぇ誰かが俺達を探してる。現状、ドクター以外に俺達を探したいのは……」


「ナース……」


「その通りだ。明るい場所にいれば正気度は下がらないがあまり悠長にもしていられない……移動しよう」


 立ち上がった雅は机の上に三姉妹への返信と思しき手紙を見つけた。夏輝も見ると読み上げる。


「私は君達の献身的な"動き"が好きだ。どれだけ騒がしくとも私の"声"に反応してくれる君達が好きだ。だから君達の気持ちには誠意を持って応えようと思う……か」


「一応、タブレットで写真撮っておいてくれ」


「わかった」


 タブレットで手紙を写真に納めると夏輝と雅は手を繋いで執務室を出て行った。この時、2人はこの返信がナース攻略に重要な情報であるとは思ってもいなかった……

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