第四章前編 第5話
試着室で雅は水着を自身の体に合わせてみる。確かに似合うのだろうが……いかんせん露出が多いように感じてしまう。
「下着と肌面積は同じはずなのに……」
そう呟きながら、シュルシュルと衣服と下着を脱ぐと水着を試着する。一拍深呼吸すると試着室のカーテンを開けた。
「ど……どうでしょうか……」
白いホルターネックタイプのビキニを着た雅が栞と玲、華恋の前に出る。
「似合ってるわぁ」
「アタシの見立てに間違いはなかったね」
「これなら兄様も褒めてくれますよ」
「そうでしょうか……でも……やっぱり露出が……ワンピースタイプに……」
自信なさげに話す雅に3人は近づくと告げる。
「何言ってるのかしら?」
「いい雅ちゃん。貴女の体は武器なのよ。それを活かさなくてどうするの?」
「雅義姉様はもっと推していくべきです」
「うぅ……」
3人にそう言われるが、雅はあまり自信が持てなかった。もちろん自分の身体に自信がないわけではないが……華恋はともかく栞も玲も発育が良い。そんな姉妹が周りにいるのに色仕掛けが通用するかと言われれば……と思ってしまうのだ。それを告げると3姉妹は雅に詰め寄った。
「いい?雅ちゃんはもっとグイグイいってもいいのよ?気付かないのはあの愚弟が悪いから気にしなくていい」
「そうね。もっと2人でいろんなところに行って、体験して、学んで仲を深めればいいのよ」
「その為なら私達は協力を惜しみません。家族ですから。応援しています」
「……ありがとうございます……頑張ります……」
「じゃあ、コレで決まりね。あ、言っておくけどアイツいつも澄ましてる割にテンプレに弱いから。こういう清楚系に白とかの組み合わせ好きだと思うよ」
「へっ……!?」
「じゃあコレは貰っていくわね〜」
「あっ……!?ちょっと栞さん!?」
栞は白いホルターネックビキニを着替えた雅の手からひったくるとレジへ。支払いを済ませると袋を雅に手渡し逃げ道を塞ぐ。
入店から退店までの時間45分。悩める女子のお悩み相談であった。
水着店を後にした4人はとある店の前にいた。
「さて……水着は終わりね。ここからが本番よ」
「そうだね」
「1番大事かもしれませんね」
「あ……あの……本当に行くんですか……?」
「もちろんよ〜」
栞が見る先はランジェリーショップであった。
「日和ってても意味ないからね。行くよ」
「犠牲なくして勝利なしですよ。雅義姉様」
「えぇっ!?あのっ……!やっぱり私……!」
「いいからいいから〜」
栞と玲に手を引かれ、華恋に後ろから押されながらショップへと入ろうとした時、玲が気づく。
「あ、夏輝から連絡きてたわ」
玲がスマホを見れば夏輝からのメッセージが。件名は"終わったから本屋で待機中"
「はぁ?アイツ早すぎだろ。アタシらと別れてから25分くらいしか経ってないぞ」
「夏輝君らしいわね」
「兄様は効率重視ですから……」
「この感じだとまだ服は選んでなさそうね〜。夏輝君、着れればなんでもいいタイプだし」
「服も仕事くらいちゃんとリサーチしろっての……ったく……」
玲はスマホを操作し、夏輝に返信すると雅に言う。
「じゃ、行くよ」
入店した後、それぞれ下着を確認する3人におずおずと雅が言う。
「あの……やっぱり下着はいいんじゃないですか……?」
「普段使いをそのまま持っていくつもり?ダメよ。そんなのお義姉ちゃん許しませんからね」
「今くらいの年頃なら勝負下着の一つや二つ持ってるもんじゃないの?悪いことは言わないから2セットくらい買っておきな」
「いざという時の手札は多い方がいいですよ。雅義姉様。いつも兄様もそう言っています。"自分の手札は多い方がいい。その分選択肢が増える"と」
「はい……」
3人の有無を言わせぬ物言いに丸め込まれてしまう雅。ある程度見た3人は雅の元に戻ってくると顔を突き合わせて相談する。
「種類はどうする?」
「無難なセパレートでいいと思う。ベビードールとかネグリジェタイプってアイツ嫌いなんだよ……」
「そうなんですか?」
「うん。偶にテレビとかでランジェリー特集みたいなのあるじゃん?アイツも仕事上、関わる事が多少あるらしいから見るだけ見るらしいんだけど……ベビードールとかネグリジェに対する嫌悪の顔ヤッバイの」
「兄様にそんな一面が……」
「玲ちゃん。理由は聞いたの?」
「うん。アイツ曰く"なんか……仕事柄、金に汚い権力者の傍にいる女性が着てるから……綺麗と言うよりも下品に見える"んだと。わからんでもないけどね」
「よく知ってますね」
「まぁ腐っても弟だしね。年子ってのもあるけど……1番年齢的に近いから」
4人は上下セットの下着コーナーへ到着すると各々良さげなものを探す。またも雅はただ見ていることしかできなかった。そんな時、またも栞がナニかを持ってくる。
「ねぇねぇ!こんなのはどうかな〜!」
栞が3人に見せた下着はいろんな部分が透けた物であった。もはや下着と呼んでいいのかわからないラインである。
「栞、さっきからトバしすぎ」
「はわわ……もはやコレを下着と呼んでいいのでしょうか……」
「無理です!無理です!絶ッッッ対無理です!そんなの着てたら痴女だと思われちゃいます!」
「うふふ。冗談よ。夏輝君、派手な露出好きじゃないものね」
栞はシースルーの下着を戻すと3人に聞く。
「そういえば、色はどうするの?」
「あ〜……そこ忘れてた。どうする?」
「派手な色は……雅義姉様には少し似合いませんね」
「ワインレッドとか大人っぽいけど雅ちゃんの透明感っていう良さが消える」
「あの……私は何色でもいいんですけど……」
おずおずと意見する雅に3人が噛み付く。
「何言ってるの?さっき話したでしょう?夏輝君はテンプレートに弱いんだから」
「となるとやっぱ白か……?」
「黒でシックにまとめてもいいと思いますよ」
「青や緑は……あんまりしっくりこないものね。いっそのことスポーツブラとショーツにするってのもありじゃないかしら?」
「どうだろ……雅ちゃんあんまりアクティブなタイプじゃないし……ギャップ狙えるかと言われれば微妙」
「ああいったものは、やはりスポーツする方やアクティブな仕事の方、ボーイッシュな方の方が似合いますからね」
「なんでこの人達は人の下着に対してこんなに熱くなれるんだろう………怖……」
雅を放置して話が進む恐怖を吐露した呟きは誰にも聞こえることはなかった。




