第四章前編 第4話
時は流れ後日。家の前には複数の人影があった。
「じゃあ、行くか」
「うん」
2人で行くのか……と思いきやそこにはさらに3人の影があった。夏輝は3人に問う。
「なんで姉貴達がいんの?」
「雅ちゃんからの援軍要請」
「華恋もか?」
「もちろん。兄様と雅義姉様いるところに私アリ。です」
「栞姉も?仕事は?」
「可愛い義妹の為に終わらせてきました〜」
「クソ優秀な教師め……」
どうして栞、玲、華恋の3人が同行するのか。理由は簡単である。
雅としては最初、夏輝と2人で行こうと思っていた。だが考えても見ると肝心の水着を見せなければならない。更には必要ないかもしれないが万が一……億が一に備え下着も購入するかもしれない。そう考えると夏輝が近くにいるのはマズい。非常にマズい。そういう事情により急遽、雅は栞と玲、それから華恋を召喚したのだ。
「それじゃ行きましょうか〜」
5人を乗せた車は栞の運転の元、ショッピングモールへと向かう。車内で玲が聞く。
「で?雅ちゃんが買う物は聞いてるけど、アンタは何を買うつもりなの?」
「ん〜?水着と服」
「あっそ。水着はいいけど、アンタ1人で服買いに行くんじゃないわよ」
「なんで……?」
「兄様は服のセンスがありませんものね」
「華恋、事実だけどストレートに言い過ぎ」
「俺は、動きやすければなんでもいいし……」
「だからってアンタはパーカー買い込みすぎ!」
「動きやすい、無難、何より安い。最高だろ」
「兄様……ルックスの無駄遣いですよ……」
「俺は平凡な人間だからいーの」
「私にとっては平凡じゃないんだけどなぁ……」
窓の外を流し見しながら、そう呟く夏輝に雅の言葉は聞こえなかった。
「とうちゃ〜く」
一行が着いたのはこの街で一番大きな複合ショッピングモールであった。入店すると開口一番、玲が夏輝に告げた。
「じゃ、アタシと2人は雅ちゃんの手伝いするから。アンタは1人で周りな」
「えぇ……?」
「服屋には行かないこと、いい?」
「結局、放置するなら別に1人で行っても……」
「行くな!いいな」
「ウス……」
夏輝の返事を聞くと栞、玲、華恋、それから雅は揃って消えてしまった。しばらく突っ立っていた夏輝だが、ため息を吐くと呟いた。
「とりあえず、必要なモン買うか……」
夏輝は1人マリンファッション関係の店へ足を向ける。入店早々、一目散にメンズの水着コーナーへ。適当なサーフパンツを流し見する。
「ま、これでいいか」
手に取ったのは黒地に白のワンポイントが入ったモノ。それをカゴに放り込むとあるモノを探す。
「お、あったあった……アイツ肌弱いからなぁ。軽く羽織れるモノ買っておいてやるか」
夏輝は先ほどのサーフパンツと同じデザインの薄手の耐水パーカーもカゴに放り込むとそのまま会計を済ませて店を出る。
入店から退店までの時間、僅か20分。爆速であった。
「服はわかんねぇ……というより服屋に行くなって言われたしな……姉貴達が戻ってきてから聞くとして……しゃあねぇ、本屋で時間潰すか……」
玲にメッセージで買い物が終わった事を報告すると、夏輝は時間を潰す為に1人本屋に足を向ける。
本屋に着いた夏輝が真っ先に向かったのはレシピ本のコーナーだった。レシピ本をパラパラと眺めながら誰ともなく呟く。
「ボスが近々、フレンチのコース料理やるって言ってたしなぁ……あの組織でそっち方面強いの俺だけだもんな……ボスはあんま料理しねぇし、累さんは……上手いけどその他で手一杯、沙羅先輩はお菓子作りなら一流のパティシエレベルだけど、コースはなぁ……うし、大体本の内容は覚えたかな。シルヴァ向けの絵本でも探すか……」
速読で内容を覚えた夏輝は本を棚に戻すと次に向かう。向かった先にあるファッション誌のコーナー……を華麗にスルーすると本の森へと消えた。
ところ変わって女性陣。4人は女性専門の水着店に来ていた。
「さてと……まずは水着ね」
「とりあえず、形からだね」
「ビキニ、タンキニ、ワンピース、オフショルダー、ホルターネック……色々ありますね」
「そうだね……」
「わぁ……!見て見て3人とも!こんなのもあるわよ」
3人が水着を見ていると、栞が一つの水着を持ってくる。手に持っていたのはスリングショットであった。
「栞、それは攻めすぎ」
「はわ……大胆ですね……」
「そんなの着れません!ほぼ紐じゃないですか!」
冷静にツッコむ玲、ほんのり頬を染める華恋、そして顔を赤くしながら叫ぶ雅。反応は三者三様であった。
「じゃあどうする?無難にビキニにしとく?」
「そうしたいんですけど……私肌が弱くて……日差しに当たるとすぐ赤くなっちゃうんです」
「たぶんそれ考えなくていいよ」
「どうせ兄様が上から羽織るモノ買ってると思いますよ」
「えぇ……どうしてわかるんですか……?」
「可愛い弟だもの」
雅達は揃ってビキニのコーナーへ移動する。様々な種類のビキニの前で雅を除く3人はアレコレ悩む。
「無難にホルターネックでいいんじゃない?」
「スタイルも良く見えるからそれがいいかもしれないわね」
「あの……私の意見は……」
「雅義姉様はいざって時にヘタれますからね」
「無難なワンピース選びそうだものね」
「うぐっ………」
事実なのでなにも言い返せない雅。実際、付き添いを頼んだのは無難なアドバイスをもらう為だったのだ。
「色は……やっぱり白がいいですかね?」
「雅ちゃんの黒い髪に映えるし、清楚系って感じになるものね……」
「安牌だね」
玲は雅に水着を渡すと淡々と告げた。
「じゃ、試着してきて」




