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第四章前編 第1話

※第四章がアホほど長くなりそうなんで前、中、後の三編構成で進めさせていただきます。

遅筆で申し訳ありません。

夏祭りから数日後、いよいよ夏休みも終盤。夏輝と雅はいつもの様に事務所にいた。最も2人共、夏休みの課題などは全て終わらせており、特にやることがないから遊びに来ていると言っても過言ではなかった。


「暇だ………」


「そうだね……」


「課題も終わらせたし……仕事もねぇ……マジでやることがなぁ〜い」


「ふふっ……荒事がないのはいいことですわ」


 間延びした声でそう告げる夏輝に対し、麦茶を配膳しながら累が答える。ふと夏輝は気になっていた事を累に聞く。


「そういえば、累さんは上流階級出身でしたっけ」

 

「えぇ」

 

「なんでこんな仕事を?」

 

「おい夏輝。こんな仕事言うな。目の前に雇用主がいるんだぞ」

 

「正直、家に関しては弟に任せればいいので。私は私のやりたい事をすると言って飛び出しましたわ」

 

「マジかよ。お転婆わんぱくお嬢様すぎる」


「行動力……」


 まさかの返答に驚く2人。続けて雅が問いかける。

 

「ご家族に何か言われなかったんですか?」

 

「昔からこうでしたから何も」


「私も彼女が来た時は度肝を抜かれたが、今ではいなくてはならない存在だ。戦力的にも経営的にも……な」

 

「会社の生命線すぎる……確かに来客対応とかその他諸々累さんがやってますしね……おい、それでいいのか経営者」

 

「正直、累がいなければウチは成り立たん」

 

「ダメじゃねぇか!」


 芽衣の返答に思わずツッコむ夏輝。続けて沙羅へと問いかける。


「沙羅先輩は?昔はどんな感じだったんです?」


「私は……こういう性格だから……昔からお友達が少ないんだ……」

 

「これまたヘビーな話題っすね……俺も友達そんないないですけど」

 

「1人は好きだけど……ずっとは……ね。気が滅入っちゃう……」

 

「俺達は同僚なんで友達とは少し違いますからねぇ……まぁ、でも心配しなくても少なくとも1人いますよ」

 

「誰……?」


 沙羅が夏輝に問いかけると夏輝は指を指す。その先には勢いよく返事する者が1人。

 

「私ですね!」

 

「あ……雅さん……」

 

「いつでも連絡してくれていいんですからね!友達なんですから!」

 

「!えへへ……ありがと」


 はにかみながら答える沙羅。その後の話題は職業柄、各人の戦闘スタイルへと移行した。夏輝は累が操るワイヤーを"ミョンミョン"と触りながら言葉を溢す。


「累さんのワイヤーって中々に脅威では?」

 

「一本では弱くとも束なれば強くなりますし、何より静かなのが気に入っていますわ」

 

「色味も艶消しの黒で、探知は困難……こりゃ中々の凶器ですね」

 

「縛ってもよし、吊るしてもよし、鞭のように叩きつけてもよし、切り刻んでもよし。使い方は無限大ですもの」

 

「ワイヤーが張り巡らされた部屋に一歩踏み込めば累さんのテリトリー……蜘蛛の巣みたいですね……」


 思わずそう呟く雅に対して累が答える。

 

「ならば私はさしずめ女郎蜘蛛と言ったところですわね」


「怖ぇぇ………ところで実際のところ下準備もなくワイヤー使ってますけどどうやってるんです?」

 

「それは教えられませんわ。乙女には秘密の1つや2つあった方が魅力が増しますもの」

 

「この人ホントに底が読めねぇ……」


 夏輝が思わず身震いする中、雅が累に聞く。


「そういえば、累さんは暇があるとよくあやとりしてますよね」

 

「えぇ。物心ついた時から好きなんですの。一本の糸であらゆるモノを表現できる、それに指先のトレーニングにもうってつけですもの」

 

「もしかして自由自在なワイヤー捌きはここから……?」

 

「無きにしも非ずですわね」


 ぼかした様な答えをする累に対して夏輝が告げる。

 

「実際、戦闘中の累さん見てるとワイヤートラップは確実に蜘蛛なんですけど、指の動きは音楽を奏でているみたいな感じします。ピアノ弾いてる様な……戦場における伴奏者……?」

 

「戦慄ならお任せを」

 

「字間違ってません?」


「フフフッ……さぁ……?どうでしょうね……」


「やっぱこの人怖ぇって!」


 身震いしながらそう叫ぶ夏輝。雅は沙羅に視線を移し問う。


「沙羅さんはどんな戦い方なんですか?」


 その問いに答えたのは夏輝。現場の実働部隊として行動を共にするため、沙羅の戦い方はよく知っていた。


「沙羅先輩の戦い方って独特なんだよ。建物の2階とか3階くらいなら平気で飛び降りるし」


「え゛」

 

「着地にコツがあるんだよ……」

 

「この前なんて、SMGの制圧射撃の後、相手を足場にしてその相手を撃って次に飛び移るみたいなこともやってたし、相手の主力格の横薙ぎ一閃をスライディングで交わしながら至近距離で腹撃ちなんか普通無理」

 

「練習すればできるよ……」


「練習……」

 

「あまりにも離れ業すぎる……でも見てて思うんだよ。そういうのって無自覚に体のリミッターを解除してやってて、知らずの内に負担が蓄積してるパターンがある」

 

「今のところ異常はないよ……?」

 

「それでも心配なんですよ。もっと体を大事にしてくださいね。怪我すると雅が泣きますよ」


「そうですよ。それはもう周囲が引くくらい[

 

「えへへ……それは困るね……」

 

「沙羅さん、何笑ってるんですか。全く……」


 またもはにかむ沙羅。それを見た夏輝の顔はどこか優しい顔つきであった。そしてやはりと言うか、最後に話題に出るのは芽衣であった。雅から問われた夏輝は少し言い淀む。


「ボス……ボスはなぁ……圧倒的リーチの足技なんだけど……素のスペックが高すぎてもはや言う事ほぼない。つまんねー」


「おい、夏輝。今のは聞き逃せんぞ。つまらないとはなんだつまらないとは」


「だってボスが戦うと秒で決着つくじゃん。俺達の出る幕ねーよ。一対一戦闘も一対多戦闘も圧倒するしさ」


「そんなに……!」


「まぁ、それだけ強いのがわかってるから俺達も背中預けるんだけどな」


「当たり前だ。私はお前達を死なせるつもりはない。殿は任せておけ。無論、娘であるシルヴァもだ」


 そう告げる芽衣の表情は、圧倒的強者の余裕と絶対的守護者、そして母の顔つきであった。

 時は流れ夕刻。商店街で対人恐怖症の克服がてらお手伝いをしているシルヴァのお迎えに向かった累、沙羅、雅が戻ってきたタイミングで、芽衣が夏輝に告げた。


「夏輝、お前に良いものをやろう」


「良いもの……?なんか嫌な予感するんだけど」


「そう身構えるな。悪いものではない」


「………信用できねぇ……」


 半ば疑いの目で、芽衣から封筒を受け取った夏輝。中を見ればそこには思いもよらないモノが入っていた。

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