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第三章幕間 第3話

「ぐぬぬぬぬ…………!」


「うにゅにゅにゅ…………!ていっ!」


 夏輝の奮闘虚しく、遂にメカニックはツナギの上半身をはだけさせた。はだけさせてしまった。上半身の下着1枚になったメカニックはご満悦そうな顔をすると両手をあげて喜ぶ。


「にゃはははは!涼しい〜!」


「こうなるだろうと思ったよ………」


「うにゅ〜……コレも邪魔!」


「下着を脱ごうとするな!それはライン越えだ!」


「文句の多いクソガキらなぁ〜!わかった!揉みたいのか!揉みたいんだな!そうかそうか!お前も男の子だらぁ〜!」


「ちっげーよ!お前が大人としてはしたねーから言ってんだよ!ボスーー!助けてくれーー!」


 胸に手を無理矢理固定された夏輝は遂に自分1人では限界と判断。芽衣に助けを求めた。


「ん〜〜〜?無駄無駄ぁ!こうなったわらしは芽衣しゃんも止められないから〜!」


「だぁれが止められないって?」


「へ?」


 メカニックが振り向くと"ゴッ"と鈍い音が響く。光を眼鏡に反射させた芽衣からの拳骨を食らったメカニックは、頭から煙を出しながら夏輝の上に倒れ込んだ。


「ばたん……きゅう……………」


「ふぅ……悪いボス。助かった」


「全く……透子め……アレだけ飲む時は注意しろと言っているんだがな………」


 夏輝はメカニックの女性。"東雲 透子"をソファーに寝かせると自身も別のソファーに体を沈める。


「めっちゃ疲れた………」


「コイツの相手が務まるのはお前だけだからな。仕方ないさ」


「アンタの後輩だろ………毎度毎度めんどくさい絡み方されるの嫌なんだけど………」


「うむ………酒癖の悪さと融通のきかない性格がなければ機械工学の権威どころかノーベル賞も余裕のはずなんだが………いかんせん曲がった事が大嫌いだからな……自身の信念を貫き通す反動と言ったところか」


「振れ幅のクセ!ったく……しょうがねぇヤツだな……」


 やれやれと言った表情で夏輝は透子にタオルケットをかけるのだった。そのタイミングで謙也が戻ってくる。


「終わった?」


「終わった?じゃねーよ!この裏切り者が!」


「いや〜……流石にこの場面を杏梨に見られるのはちょっと……」


「それは………そうだな。正論すぎる………」


「耳が痛いな………」


「芽衣さん。準備ができましたわ」


 腕を組み唸る夏輝と芽衣の元に累が来る。芽衣は累から二言、三言話すと夏輝と謙也にここで待つように言う。2人は顔を見合わせた後、大人しく待つことにするのだった。

 数分後、芽衣が2人の元に戻ってくる。後ろには浴衣を着た雅と杏梨がいた。


「どうせ夏祭りに行くんだ。少しくらい洒落た方がいいと思わないか?」


「おぉ………雰囲気あるな。さては累さん張り切ったな?」


「2人共めちゃくちゃ似合ってる!」


「そう……かな……」


「謙也……ちょっと見過ぎ………」


 少し恥ずかしそうにはにかむ雅は黒髪によく映える白地に紺の染め絞りが描かれたもの。帯は紺色である。髪型は編み込みを纏め、簪で留めている。

 対して彼氏に苦言を呈す杏梨の浴衣は黒地に淡い赤色に杏の花が描かれているもの。杏梨の髪にある金のメッシュがよく映えていた。帯は赤色である。髪型はシニヨン。こちらも雅とお揃いの簪で留めている。

 雅は夏輝の前に立つとおずおずと問いかける。


「どうかな……?」


「いいと思うぞ。可愛いし似合ってる」


「……!?……えっと……ありがとう……」


「おい、なんだアイツの無自覚スパダリムーブは」


「芽衣さんの教育では?」


「私ではないぞ。おそらく育った環境がそうさせたんだ」


「女所帯ゆえの功罪ですわね……」


 自然な流れで褒め殺しをする夏輝を見てヒソヒソと芽衣と累が話す。傍では杏梨に可愛いと連呼していた謙也が照れ隠しで口を塞がれていた。


「アレが健全なカップルだと思うが?」


「夏輝君と雅さんがそうなるのはもう少し先かと……」


「前途多難だな」


「そうですわね」


 その時、ソファーの上にいる人物がモゾモゾと動く。そちらを見れば起きた透子が伸びをしていた。


「んにゃ〜〜〜………!よく寝た……!」


「マジかよ……予想より起きるのはえーぞ!ボス!ちゃんとトドメさせよ!」


「無意識のうちに手加減してしまったか………」


「ん〜〜〜………あ、いた!」


 透子はキョロキョロと周りを見回すと夏輝を見つける。目があった夏輝は逃走を図るがあっけなく捕まってしまった。現在の透子は上半身に下着1枚。もがく夏輝の顔をそのまま胸に埋めると透子は告げる。


「まら話は終わってらいぞ〜!」


「こっちは終わったんだって……!離せよ……!息ができねぇ……!」


「このまま窒息しちゃうか、わらしに謝れ!」


「事実を述べて謝る理由がわからん!」


「ちょ………ちょっとちょっと!ストップ!ストップ!」


 慌てて制止する雅の眼前には理解できない光景があった。上半身下着1枚のツナギを着た女性が夏輝の頭を胸に埋めているのだから。

 芽衣は夏輝と透子を引き剥がすと透子を羽交締めにする。


「らにするんですか〜!離してくらさい!」


「透子……飲み過ぎだぞ……」


「こうでもしらいとやってられないですよ〜。あのクソガキ、言ってはならないことを言ったんれすよ?」


「夏輝君……何言ったの?」


「言ったというか……メールしたというか……」


「内容は?」


 雅の笑顔による尋問で夏輝は大人しく内容を吐いた。それを聞いた雅は短く告げる。


「夏輝君。ギルティ」


「!?」


「えっと東雲 透子さんとおっしゃいましたか……?本当にごめんなさい。私がこの"バカ"はキッチリ教育しておきますから……!」


「マジか……どストレートにバカって言われた……」


「んむぅ〜………"嫁さん"がそういうなら……任せる!でも次はないからな〜!」


「次もするけどな………」


「夏輝君」


「ウス」


 雅に詰められた夏輝は大人しく正座していた。

 先ほどの透子の発言に累、謙也、杏梨はヒソヒソと発言するのだった。


「今、あの人"嫁さん"って言ったぞ ……」


「雅は気づいて………いや気づいてるわね。耳がすごく赤いわ」


「順調に外堀が埋まっているようで何よりですわ」

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