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第三章 第19話

弥美の病院へと入院する事になった2人。しかし真に大変だったのはこの後であった。まずはオルカの処遇。オルカは国際指名手配されていた海賊グループでほぼ全員を生きた状態で逮捕できたのは大きな収穫だったそうだ。これから国際的に大掛かりな捜査が始まるらしい。なんでもH.T.Gとも関わりがあったらしくオルカの魔の手が海から消えるのは遠そうだ。だが確実に解決に向かって前進したのはいい事だ。シルヴァにもいい報告ができるとはボスの談。

 次に雅。お見舞いに来た2人にこれでもかと泣かれていた。特に茅葺。自分が誘った手前、雅が殺されたらどうしようかとかなり思い詰めていたらしい。


「雅〜!生ぎでだぁ〜!良がっだ〜!」


「麻里奈ってば……大袈裟よ」


「大袈裟なんかじゃないわ。雅ちゃん。私達も一部始終を見ていたから。本当に生きてて良かった……!ところで……」


 美雨は夏輝を見ると聞く。


「神山君は一体何者なの?」


「俺?俺はただのアルバイト……なんだけど……この事は黙っててくれると助かる」


「そう……色々と聞きたい事はあるけど、命の恩人にそう言われちゃ仕方ないか。いつか聞かせてね」


「時期がきたらなー」


「なんだかはぐらかされた気がするわね」


「あはは……夏輝君はいつもこうだから……」


 呆れ笑いでそう答える雅に対し夏輝は不本意そうな表情であった。

 次に大変だったのは夏輝。夏輝も大層泣かれた。特に栞に。やっぱり誰かに泣かれるのは心にクる。これから無茶は、なるべく(当社比で)控えようと決意する夏輝であった。


「私がニュースを見てどれだけ心配したと思ってるの!?電話しても出ない、メッセージに既読も付かない……」


「あの時の栞は凄かったよ。ずっとソワソワ落ち着かなくて。アタシが"夏輝は簡単に死なない"って言っても聞く耳持たずでさ。もうちょっとドッシリ構えればいいのに」


「そういう玲姉様もずっとソワソワしてらっしゃいましたよ?もちろん私も兄様のことが心配でした」


「うるさいよ。華恋」


「あはは……」


 華恋が三者三様の様子を暴露したところで栞の矛先は雅に向いた。


「雅ちゃんもです」


「え……?」


「何をしたか聞きました。立ち向かおうとする勇気は素晴らしいです。けれども無茶と無謀は違います。雅ちゃんの行動は勝算のある無茶ではなくその場でなんとかなるという希望に賭けた無謀です。それに関してはお姉ちゃんとても怒っています」


「はい……すみませんでした……」


「でも、ボスはよくやったって言ってたしそこまで言わなくてもいいだろ?」


「元はと言えば夏輝君が原因では?」


「ウソだろ……飛び火した………」


 病室にはしばらく栞のお説教が続くのであった。

 栞は説教をある程度終えると、弥美に呼ばれて病室を後にした。栞が出た後、華恋が唐突に言った。


「兄様、兄様!私も兄様のように強くなりたいです!」

 

「なっ!?ダメダメダメ!そんな危ないことお兄ちゃん許しませんよ!」

 

「そうよ!あんなことするのは夏輝君だけでいっぱいよ!?」

 

「そうだね。華恋は夏輝より頭いいんだから、そっち方面の方がいい。あんなイカれたことコイツだけで十分よ。これ以上増えると栞が倒れる」


 突然の告白に全員で止めにかかる。しかしそれも華恋の悲痛な叫びで消えた。


「それならば……それならば誰が兄様を守るのですか!」

 

「それは……」


 その疑問に言葉を失う雅と玲。その疑問に答えたのは病室に入ってきた人物であった。

 

「心配しなくてもいいさね」

 

「芽衣伯母様……」


 芽衣は夏輝を見ると部屋を出る様に促す。それを見た夏輝は、大事な話と判断し病室を出ていった。

 

「夏輝の事はちゃんと私らが守ってるから。華恋は他の皆と夏輝の帰る家を守ってやりなね」


「ですがそれでは……兄様が……」


「それともなんだい?夏輝はそんなに弱く見えるのかい?」


「!?」

 

 芽衣の煽る様な疑問に、華恋はあらん限りの声で答えた。

 

「いいえ……いいえ!兄様は誰よりも強いです!誰にも負けません!」

 

「その通りだ。それなら尚更、帰る場所を守ってやりな」


 芽衣の答えに悔しい様な、悲しい様な不思議な気持ちを抱く。そんな華恋を抱き寄せて雅が言った。


「私も同じ気持ちになった事あるよ」

 

「雅義姉様……」

 

「でも残念だけど、私達じゃどう足掻いても無理。でも支えてあげる事ならできるでしょう?」

 

「それはそうですが……」

 

「夏輝君言ってたの"帰る家があるなら腕が千切れようが足がもげようが必ず生きて帰ってくる"って」

 

「私は兄様は五体満足でないと嫌です」

 

「私も同じ事言った。そしたら"善処する"って」

 

「兄様らしいのです。でも兄様なら何が起きても必ず帰ってきますよね」

 

「えぇ……もちろん」


 しばらくしてから戻ってきた栞と夏輝。華恋はまたも単刀直入に夏輝に問う。


「兄様はどうしてこんな事をするのですか?」

 

「お前達を失わない為」

 

「でもそれで兄様がいなくなるのは嫌です」

 

「それでもお前達がいなくなる方が俺は嫌だ」

 

「お互い様……ですね」

 

「そうだな」

 

「ならばせめて無茶をする前に私達の事を思い出してくださいね」


 そう華恋に言われた夏輝はいつもの言葉で誤魔化そうとするができなかった。

 

「善処する」

 

「善処ではなく約束してください」

 

「……わかったよ。俺の負けだ。約束するよ」


 世界最凶の海賊を葬った青年も妹の言葉には弱かった。華恋は夏輝の腕や足を見るとしみじみと言う。


「兄様の体は傷だらけですね。この傷一つ一つが兄様の努力の証なんですね……」


「そうなるかな……」


 歯切れの悪い返答をする夏輝。それもそのはずで、内心は(沙羅先輩とはっちゃけて吹き飛ばした時の切り傷擦り傷が大半とは言えんよなぁ……)

 なんて思っているのだから。華恋がまるで騎士の様に感じている兄の傷は大半が爆破オチやその場のノリによる怪我であるとは華恋も思ってもいないのだ。それを感じた夏輝は言葉を濁し誤魔化したのであった。

 夏輝と雅の入院生活はまだまだ長引きそうである。

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