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第三章 第17話

ロープの巻き取り音に気づき、振り返ったキラーホエールの目に映ったのはブーツの裏側だった。夏輝は両足でキラーホエールの顔を蹴り飛ばすと再び臨戦態勢に入る。


「このクソガキが……!」


「死んだと思ったか?あいにく、こっちには幸運の女神の加護があってな。さぁ来いよ」


「舐めるなよ……!」


 キラーホエールが放ったストレートを持ち前の動体視力と反射神経で回避すると顔面に1発、拳を叩き込む。よろけたところですかさず前蹴りを打ち込むがキラーホエールは倒れない。


「ほぉ……やってくれるじゃねぇか」


 切れた口の端から流れる血を拭うと、キラーホエールは先程よりも重く、素早い打撃を繰り出した。回避を試みる夏輝。しかし先程からのダメージが蓄積しているのか体が上手く動かない。回避しようとすると足に微かな痛みが走り反応が遅れる。最後の足掻きとして、僅かに打点をずらすが顔に1発貰ってしまう。よろけたところで続けて膝蹴りが腹に突き刺さった。思わず膝をつき倒れ込む夏輝。しかし闘争心が消えることはなかった。


「ぐっ………!ゲホッゲホッ……!テメェは絶対逃がさねぇぞ……!」


「しつこい野郎だ……止められるものなら止めてみろ」

 

ボロボロで床に転がる夏輝にキラーホエールは吐き捨てるとそのまま屋上に向かう。

 

「待ちやがれ……!」


 満身創痍の夏輝も立ち上がるとキラーホエールの後を追う。その影を見る者がいた。対岸にいる雅である。雅は目の前にあるタワーに登るとテラスを通って見張り台のあるタワーへ向かうルートを見る。しかしその経路は倒壊したウォータースライダーによって完全に塞がれていた。焦る雅であったがすぐに深呼吸し自身を落ち着ける。


 (落ち着きなさい、私。今行っても足手纏いになるだけ。必ずどこかにチャンスはある。今は夏輝君を信じて待つ)


 雅の目は夏輝とキラーホエールが出てくるであろうタワーの最上階にある見張り台に向けられていた。


 見張り台ではキラーホエールが無線機を片手に旗を振っていた。旗を振る相手は水上飛行機。このまま高飛びを目論んでいるようだった。


「おぉ〜い!俺はここだぁ〜!」

 

「逃がさねぇぞ!」


「まだ生きていたのか……まぁいい。ここで引導を渡してやる!」


「させるかよ!」


 ジリジリと睨み合う2人。先に動いたのはキラーホエールであった。放たれる素早く重い拳。キラーホエールは、先程と同じ攻撃手段を選んだ。夏輝からすればそれは"味を占めた慢心"以外の何物でもなかった。拳を軽々と回避すると、ローキックで右膝を蹴る。全ては芽衣の

 "どんなに硬い鎧を着ていようとも、図体が大きかろうとも関節は弱点だ。積極的に狙え"

 との教えである。回避に至っても"行動が一瞬遅れるのならば、その一瞬を切り上げて行えば問題ない"との考えだった。その考えは正解だったようだ。

 体勢を崩したところで、夏輝は思い切り股間を蹴り上げる。


「…………!?」


「生物学上、男なら皆そこは弱点だからな。遠慮なく狙わせてもらうぞ」


 前屈みになるキラーホエールを前蹴りで蹴り飛ばせば、積み上げられているポリタンクに衝突した。タンクの中身がキラーホエールにかかる。この独特な匂いは……発電機用のガソリンであった。


「このクソガキ………!こうなればあの小娘と共に地獄に送ってやろう!まずは小娘からだ!」


「やめろ!」


 キラーホエールは、屋上に配置していた4連装のミサイルランチャーを持つと雅に照準を合わせる。すかさず背後から飛びつきミサイルを挟んで組み合いになる。場所は見張り台から迫り出した非常用飛び込み台に移動していた。


「この……!離せ!」


「ぐっ………!」


「この………!」


 組み合いの最中、1発のミサイルが発射された。ミサイルは大きく軌道を逸れ、プールに着弾すると大きな水柱を立てた。降り頻る水飛沫の中、思わず雅は物陰に身を隠す。それを見た夏輝はキラーホエールと立ち位置を180度逆にすると銃口を外に向ける。


「小賢しい……マネを!」


 またも発射されるミサイル。今度は海に着弾し爆発した。夏輝はランチャーを無力化することを第一目標とするとまたもキラーホエールの膝を折る。銃口が斜め上を向いたタイミングで更に1発。場外に飛び空中で爆発した。そして最後の1発が手摺に叩きつけられた反動で発射された。今までと違ったのはそのミサイルが何かに被弾した音。その音に気を取られた夏輝はランチャーで顔を殴られ、地に伏せてしまう。


「クッソ………船にでも当たったか………」


「散々手間かけさせやがって……!」


 キラーホエールはランチャーを投げ捨てると、刃渡の大きいナイフを取り出す。万事休すか……夏輝が死を覚悟した時、何かが近づいていくる音がする。キラーホエールも気づいたようでそちらを見ると夏輝に吠える。


「テメェ……!俺の飛行機に当たっちまったじゃねぇか!おい……待て……!来るな……来るなぁぁぁぁ!」


 キラーホエールの叫びも虚しく、煙を上げる飛行機はリゾート地の壁を突き破りプールに不時着水した。

 これでオルカの野望は潰えたかに思えた。だが夏輝に対する恨みが晴れることはなかった。

 

「こんのクソガキがぁ!俺の計画を邪魔するだけじゃなく飛行機まで壊しやがって!」

 

キラーホエールはナイフを床に転がる夏輝の足に突き刺すとさらに抉る。


「ぐあぁぁぁぁ……!」

 

「俺様を止めるか!?その足じゃ無理だろう!」


 キラーホエールは夏輝の腹を蹴り飛ばす。蹴られた夏輝は飛び込み台の取手にに辛うじて両手でぶら下がっている状態だった。キラーホエールは夏輝の手を踏む。


「この海の支配者を決めよう!勝つのは海賊か!腑抜けた人間か!」


 キラーホエールは夏輝の片手を蹴り外す。遂に夏輝は片手で自重を支えることとなった。


「ぐっ………!クッソ………!」


「死ぬがいい!俺の邪魔をしたことを!海の底で悔やむがいい!安心しろ。あの小娘もすぐにお前の元に逝かせてやる……まぁ、俺の妻になってからだからいつになるかはわからんがな」


 キラーホエールはナイフを大きく上に振りかぶった。もはやここまでか。夏輝が死を覚悟した時、聞こえたのは雅の声だった。


「ねぇ!貴方!」

 

「なんだ!」


 キラーホエールが声をした方を見れば対岸から照明弾の銃をを構えた雅が真っ直ぐ自分を捉えていた。

 恐怖で手が震える……しかし迷っている暇はない。真っ直ぐ、力を抜いて自然に引き金を引く。芽衣の教えを思い出し引き金を引くと照明弾は真っ直ぐに男へと飛んでいった。照明弾が直撃したキラーホエールはガソリンを浴びていたのも相まって服が燃え取り乱す。その隙に夏輝は這い上がると、痛む足を引きずりキラーホエールを待ち構える。


「あ……!熱い……!熱い……!クソ……!クソォ!こうなったらお前だけでも道連れだ!」


「餞別だ……1人でいけ」


「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 夏輝はベストをキラーホエールの顔に投げつけると視界を塞ぐ。視界が消えたことにより混乱し突進してくるキラーホエール。夏輝は手摺を掴み、体ごと外に投げ出し回避。キラーホエールはそのまま飛び込み台からプールに落ちていった。

 キラーホエールがプールに落ちたのを確認した夏輝は見張り台に大の字に倒れると大きく息を吐き呟いた。


「終わったか……とんだ災難だったぜ………」


 こうしてオルカの野望は海の底へと消え去ったのだった………

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