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第6話

 写っているのは1人の女子生徒だった。服装を見るにウチの生徒だ。リボンの色から新入生だとわかる。


「どちら様?」


「あら、夏輝君。後輩なのにご存知ないのですか?」


「全員覚えてる訳じゃないですし、第一まだ会ったこともないですから」


「彼女の名前は"宗森 三笠"警察高官の娘だ。父親が警官で、ある企業と政治家の癒着を追っている。だが最近捜査から手を引く様に脅迫が届く様になったらしい。ご丁寧に娘の写真付きでな。普段は護衛の警官が送り迎えをしている様だが今回の交流会だけは護衛が外れる」


「俺達がその穴埋め?」


「その通りだ。すでに捜査はほぼ完了。証拠も揃っているから後は検察が起訴を行うだけだが、それに向こうも気づいたらしい。なりふり構わず行動を起こす可能性がある。気を引き締めていけ」


 なりふり構わずか……中々に厄介かも知れない。よく手負の獣には注意しろと聞くがアレと似たようなモノで失うモノがないヤツほど怖いのだ。芽衣は図面に目を落とし、続ける。累さんも沙羅先輩も真剣な表情だ。


「脅迫文って具体的な事書いてたのか?」


「一応な。まぁありきたりな内容だったよ。捜査を中止しろ。とか後悔することになるとかな。本当にお前達のイメージするものよりも幾分と幼稚に感じるレベルだったよ。ただ刃物で切り裂いた三笠嬢の写真が入っていたのは驚愕だったな。かなり向こうも焦ってそうだ」


 実物を思い出したのか鼻で笑う芽衣。それから真剣な表情に戻ると言った。


「大抵こういう場では金にモノを言わせるバカ共が羽目を外す傾向にある。酒、ドラッグ、etc……これら全てを防ぎ、万一発見した場合は然るべき場所に報告することが我々には義務づけられている。発見次第その場で制圧。スクールポリスに引き渡す様に」


「首突っ込みすぎるなってことか」


「そうだ」


「それから生徒から多少のちょっかいがあるだろうがいつも通りに対処してくれて構わない。やりすぎだと感じたら少しヤケドさせるといい」


「言って聞かない子には、体で覚えさせるしかありませんものね」


「累さん、顔が笑ってないんですけど……」


 偶にいるのだ。雇っている側が偉いと錯覚する輩が。特に累さんはその見た目も相まって非常にそういう手合いが多い。まぁ、本人もそういったことに慣れているのかどこか掴めない言動でひらりと躱すのだが。


「そういえば、この依頼は顔出しか?」


「どちらでも」


「了解」


「あら、お顔を隠すなんておもてなしの心が足りないのではなくて?」


「いや……そういう訳じゃないです。ただ……あんまり周りに顔バレしたくなくて……」


「もしかして……まだこのアルバイトのこと……家族にお話ししてないの……?夏輝君」


「えぇ……まぁ……はい」


 芽衣の顔を見ると、半ば呆れた様な表情だった。手で顔を覆うと俺に告げた。


「早めに言っておけと伝えただろう」


「言えるかよ!こんな危ないことやってるって!」


「まぁ、それもそうだが……じゃあ、今お前がこの仕事をしていることを知っているのは」


 芽衣が指折り数えた後、告げる。


 「私の姉さんとお前の父親……あとは学園長くらいか」

 

「うぇ!?学園長も知ってんのかよ!?なんで!?」


「お前がこの仕事をしながら通えるように少し根回ししただけだ」


 実際、ここでアルバイトをする様に仕向けたのは両親だし、学園に入学することになったのも原因としては両親なんだよな。普通の公立校を希望してたんだけど勝手に受験することになってたっぽい。まぁ、進学をテキトーに考えていた俺に非があるからなんともいえない。なんだかんだで楽しいし。でも学園長にまで知られているのは予想外。


「今週の金曜日。つまり3日後に向こうの学園長とスクールポリス、それから生徒会の会長と副会長とミーティングを行う。これは顔合わせも兼ねるからサボるんじゃないぞ。特にお前」


「えぇ……俺……?」


「サボるなよ」


「もしサボったら?」


「サボるな」


「わかった……というか顔合わせしないとダメか?」


「ダメだ。いざという時お互いに協力しなければならない。その時に敵か味方かわかりませんはマズイだろう。それに信頼できる者に背中は預けたい」


 ボスの言うこともよくわかるし、重要なことだろう……だけど……


「行きたくねぇ……」


「それから夏輝。お前は生徒会長に会ったことがあるか?」


「少し話したことがあるくらいだけど……いきなりどうした?」


「いや、こちらとしては資料として知ってはいるが実際のところどんな人物なのかと気になってな」


「そうだな……なんというか尻に敷かれるタイプだな」


「そうなのか?」


「たぶん……なんか毎回、姉貴に色々言われてるっぽい」


「なるほどなぁ……だが生徒会長になるくらいだから能力は申し分ないのだろう」


「そりゃな。学年トップだぞ?秀才だよ秀才。俺なんかとは違いすぎる」


「わかった。さて、今日はこのくらいだ。金曜日、忘れるなよ。では解散」


 ボスの一言で思い思いに別れる。それにしても気が重い。まぁ言わなかった俺が悪いけど。でもいつかは知られてしまうのだから、腹を括らねばならない。これが俺のやってる"仕事"なのだから。

 打ち合わせを終え、事務所を後にする。夕焼けの空が1つの不穏な影を落としていた。


 そんな俺を影から見る者がいることにはこの時気づいていなかった。

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