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第三章 第12話

放送を見た夏輝はS&Tリゾートのホテルから飛び出そうとする。しかし芽衣に羽交締めにされてしまった。


「ボス!離せ!」


「ダメだ!お前はW.Iリゾートに向かうつもりだろう!」


「当たり前だろうが!こんな時に指を咥えて見てるほど俺は我慢強くない!」


「気持ちはわかる!私も向かいたい。だが無策で行っても犬死にするだけだ!とりあえず落ち着け!私はお前に何を教えたのかを思い出せ!」


 芽衣の言葉で夏輝はある教えを思い出す。

 "いついかなる時であっても心は熱く、頭は冷静に。焦りは死であり油断は死神である"

 夏輝は脱力すると芽衣に言った。


「わかった………すまない。取り乱した……」


「気持ちはわかる。だが今は準備の時間だ」


「お話中のところ申し訳ありません。芽衣さん。状況は更に悪くなりそうでしてよ」


 累が持ってきたタブレットにはあるニュース番組の生放送が映っていた。その映像はなんとW.Iリゾートを上空から撮影しているものだった。


「マスコミめ……!視聴率欲しさに命を捨てさせたか……!」


「ボス……コイツら確実に死ぬぞ」


 映像では依然、リポーターが中継をしていた。


『ご覧ください。突如テロ行為を受けたW.Iリゾート上空です。プールには複数の船とジェットスキーと見られるものが停泊しています。また真ん中の……小島でしょうか。そこには強奪されたと見られるバルカン砲が設置されています。人質の姿は見えません。タワーには見張りと思しき人物が……何か筒のような物をこちらに向けています……アレは……』


 タワーの見張りにカメラを向けズームした瞬間、筒状の物から何かが発射される。次いで聞こえたのは爆音と悲鳴。そして画面は砂嵐に切り替わった。中継から戻されたスタジオも静寂に包まれていた。


「遂に国民に死人がでたぞ……」


「政府は動かないんですの?」


「おそらく対応は遅い。今の政権は責任のなすりつけ合いから始まる。国民よりも我が身大事さの方がおそらく強い。全く……反吐が出る」


 芽衣はタブレットの電源を落とすと夏輝に告げる。


「とりあえず、雅君と連絡を試してみろ。現地の情報が欲しい。政府や国家組織が当てにならない以上我々でやる。クルーザーに乗れ。出撃だ」


「了解」


 夏輝はスマートフォンで雅に"隙を見て連絡できそうならば連絡を。必ず助けに行く。待っていろ"とメッセージを飛ばすのであった。



 一方雅達は大ホールに監禁されていた。部屋の扉には武器を持った男達が固めており脱出は不可能であった。


「雅……これって撮影とかじゃないよね……」


「違うわ」


 大ホールのモニターには先程のキラーホエールの動画が流れている。キラーホエールがセキュリティチームの頭に銃を突きつけたのを見て、雅は2人に小さく叫ぶ。


「耳を塞いで、画面を見ないで!」


「えっ……?」


「どうして……?」


 2人の目線を無理やりモニターから外した瞬間、聞こえたのは発砲音と何かが倒れる音。会場ではところどころ悲鳴が上がっていた。続けて聞こえてきたのは爆音。モニターからだけでなく実際に外で爆発したような音であった。


「私達……もしかして皆殺される……?」


「麻里奈、滅多なこと言わないで。政府が何かしらの策を行うはず。警察や軍が動くはずよ」


「2人共。心配しなくて大丈夫よ。私、知り合いにとっても強い人達がいるから。絶対助かるわ」

 

「ホントに?」

 

「えぇ。本当よ」

 

その時雅のスマートフォンが震える。画面に表示されていたのは今、1番頼りになる人物の名前であった。メッセージを確認した雅は見張りにバレない用通話ボタンを押す。

 

「もしもし」

 

『もしもし。無事か?』

 

「うん……今のところは」


『今、どこにいる』


「ホテルにある大ホールに……従業員もお客さんも一緒に監禁されてる」


『何かわかったことはあるか?』


 雅はバレないように周囲を見回し続ける。


「見張りは皆、銃を持ってる。それから敵の配置だけど、出入口のドアに2人ずつ見張りがいる。全部で8人。それから他には………」


 そう伝えようとした瞬間、雅はスマートフォンを取り上げられてしまう。見れば見張りの1人が雅達を見下ろしていた。

 

「おい……テメェ何してるんだ?」

 

「………!」

 

「外部への連絡か?いい度胸だな。こっちに来い!逆らったらどうなるか教えてやる」


 男は乱暴に雅の腕を引くとスマートフォンを踏み潰し引っ張って行く。

 

「やめて!雅を離して!」


「そうよ!」


「邪魔するんじゃねぇ!お前らも纏めて撃ち殺されたいか!」


 銃を向けられ思わず、座り込む麻里奈と美雨。男は他の人質にも銃を向け叫ぶ。

 

「よかったな!テメェら。最初の生贄はコイツだ!オラ、さっさと来い」


 雅が連れて行かれたのはメインプールの中心にある広場。カメラの前に来ると目の前にはキラーホエールが立っていた。周りからは下卑た視線がまとわりつく。


「お前が外に連絡していた小娘か」


 キラーホエールは、雅を舐めるように見回すとタバコを取り出し告げる。


「吸うか?」


「いりません!」


「おっと……そうカッカするな。俺はお前と話がしたいんだ」


「私はあなたに話すことなんかありません!早く皆を解放して!」


「口では強がっていても体は正直だな。足も声も震えてるぞ?だがその根性は気に入った。貴様、俺の妻になれ」


「なっ……!?」


「貴様は見てくれも良い。どうだ?俺の妻になれば一国の王の妃となれるぞ?」


 雅は、キラーホエールを睨みつけると軽蔑した声で吐き捨てた。


「私はあなたのようなゴミクズに嫁ぐつもりなんかない!」


「ほぉ………」


「このクソアマ!」


 部下の1人が雅に銃を向けるが、キラーホエールに制された。


「やめておけ。弾が勿体無い。コイツは見せしめとして使える。ソレはしまっておけ。オイ、コイツを跪かせてカメラを回せ。公開処刑だ」


 雅は無理やり跪かせられる。目を落とした先には生々しい血痕が残っていた。その時、部下が2人の人物を連れてくる。


「そうだ。貴様の友人には特等席で見せてやろう。連れてこい」


「麻里奈……美雨……」


「雅……」


「雅ちゃん」


「安心しろ。コイツの脳ミソをぶちまけた後お前達もお揃いにしてやるさ」


「ボス。カメラが回りました。いつでもいけます」


「ご苦労」


 キラーホエールはカメラへ向けて告げる。


「この映像を見ている諸君。悲しい出来事が起きてしまった。この小娘は愚かにも外部へ俺達の情報を流そうとした。悲しいかな……政府の答えまで誰も殺すつもりはなかったが……裏切られてしまうとは……申し訳ない……とは思わんがこの小娘には生贄となってもらう。俺の新たな国への礎としてな……最期に言い残すことはあるか?」


「…………」


 雅は何も答えなかった。ただ目を瞑り今までのことを思い出していた。家族のこと、友人のこと、シルヴァのこと……何より夏輝のことを。


「こんなことになるなら……ちゃんと伝えればよかったかな……」


 雅の呟きは潮風にかき消され誰にも届くことはなかった。キラーホエールはリボルバーの撃鉄を起こすと銃口を雅の後頭部に押し付ける。しかし引き金を引こうとした時、ゲートで見張りをしていた部下の報告で動きを止めたのだった。


「ボス!ジェットスキーがすげぇ速さでこっちに向かってます!」

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