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第三章 第3話

商店街から戻って来た夏輝は早々にシルヴァを栞達に預けると、1人キッチンへ向かう。換気扇を回し、買ってきた食材をある程度仕分けする。茄子、ピーマンを水で手早く洗い、人参と玉ねぎの皮を剥く。人参は軽く水で洗い、輪切りにする。玉ねぎはスライサーでスライスした後、辛味を抜くために酢水に漬ける。夏輝は人参をまな板の上に並べると、型抜きを行う。


「ただ食うだけより、見た目も楽しい方がいいだろ」


 誰にともなく呟き、型抜きを終えると水に漬けておく。茄子はヘタを落とした後、横半分に。皮の部分に網目状の切り込みを入れ更にそれを縦半分にした後、もう一度半分に切るとこれもボウルの水の中へ。上から変色防止の為にキッチンペーパーを被せる。ピーマンは縦に割った後、水で流しながら内部にあるタネとワタをヘタごとむしりとる。全て取り除いた後、ザルにあげ水をきった後、縦半分に割りそれを大体一口サイズにカットしていく。粗方終えた夏輝は南瓜と対峙する。南瓜を大体同じ大きさになるように三等分〜四等分にするとそのまま大きめのサイズにカット。煮ると形が崩れて小さくなるからである。南瓜はまな板の上に置いておき、冷蔵庫から合い挽き肉を取り出すと、脂を引き十分に熱した鍋に投入。最初からほぐさず片面がある程度焼けて、ハンバーグのようになったタイミングでひっくり返しほぐす。ある程度火が通った段階で南瓜と水を投入し煮る。こまめに灰汁を取りつつ様子見だ。


「とりあえず、こんなもんだろ。後は時間の流れに任せるか。この隙に米洗っちまうか」


「ごめんね。遅れちゃった。シルヴァちゃんの荷物どうするかで栞さん達と話し込んじゃって……」


「いいさ。気にしなくて」


 夏輝は手早く米を洗うと炊飯器に入れ、スタートボタンを押した後、冷蔵庫の野菜達を見る。


「キャベツ……レタス……後、缶詰のコーンがあったな……シルヴァにサラダ作ってもらうか……雅手伝ってやってくんね?」


「OK。先にキャベツだけ切っちゃうね」


「よろしく」


 まな板を洗い、雅にパスする。受け取った雅はキャベツを取り出すと華麗な手捌きでものの見事に千切りキャベツを作り出した。


「はえーな……俺には無理だわ……」


「経験の差……ってやつかな。夏輝君もできないわけじゃないでしょう?」


「できるのはできるけどそこまで早くは無理」


 夏輝はフライパンにバターを引くと玉ねぎを投入しひたすら炒める。その傍で鍋の様子を見て灰汁を取り水分を加え、火加減の調整も行う。


「あ……茄子の素揚げやってねぇじゃん……玉ねぎの後やるか……」


「ピーマンは?素揚げするの?」


「いや、バーナーで炙る」


「やってしまおうか?」


「頼んだ。火傷するなよ」


「わかってます」


 雅は耐熱皿にピーマンを並べると、バーナーを起動する。皮目に軽く焦げ後が付く程度に炙りそのまま冷ます。


「鰹節と麺つゆ漬けるとうめぇんだよな……コレ……」


「確かにね……でも今日は違うものになるんでしょ?」


「そりゃもちろん」


 夏輝は人参と炒め終えた玉ねぎを入れると更に煮込む。夏輝は玉ねぎを炒めたフライパンを片すと揚げ物鍋にある油を熱する。


「油通し?」


「おう。素揚げにしようかとも思ったけど、茄子は水分多いしベチャベチャになって美味しくなくなっちまうからな。中華のやり方にするわ」


 穴杓子に茄子を取るとその上から熱した油をかける。その後、網とキッチンペーパーを敷いたバットにあげ油を切る。南瓜に火が通ったのを確認すると残りの具材を全て鍋に入れる。具材が浸るくらいの水分になったタイミングで火を止めると夏輝は戸棚から一つの袋を取り出した。パッケージには"カレールー"の文字が。ここで夏輝は、隣でゆで卵を作る雅に聞く。


「シルヴァ、中辛いけると思うか?」


「あぁ……どうだろう……本人に聞いてみる?」


「味見してもらって聞けばいいか」


 夏輝はそう結論づけると、カレールーをドバドバと鍋に入れる。ある程度入れたところで粘度をチェックすると冷蔵庫から一本のチューブを取り出し、中身をぶちまける。夏輝がぶちまけたのは豚の脂。いわゆる"ラード"と呼ばれるものであった。曰く"合い挽きは脂が少なくてコクが足りないからよく突っ込む"とのこと。その後、クミン、コリアンダー、ターメリックなどの複数のスパイスを少し加え、スプーンで味を確認した後、雅にもスプーンを渡す。同じく味をチェックした雅は親指をあげた。


「シルヴァー!手伝ってくれー!」


 夏輝がそう叫ぶと、階段を降りてくる複数の足音。どうやらシルヴァを2階に案内していたようだ。キッチンの入り口に顔を覗かせたのはシルヴァと栞。玲と華恋は先にダイニングについていた。


「えっと……どうかしましたか?」


「お手伝いを頼みたくてな。できるか?」


「はい」


「いい返事だ。ならこっちに来てくれ」


「その前にコレ着けた方がいいんじゃない?」


 栞がそう言うとシルヴァにエプロンを着せる。夏輝はそれを見て頷くと手招きする。シルヴァを踏み台に乗せると、そこには人数分のサラダボウルと千切りキャベツ、芯を取りざっくりと切られたレタスと缶から開けた状態のコーン、四等分にされたミニトマト、輪切りのゆで卵、それからローストしたベーコンが並んでいた。


「綺麗です……」


「そう?これからシルヴァちゃんにはサラダを作ってもらいます。でもその前にしっかり手を洗ってね」


「はい」


 雅と共に手を洗うシルヴァ。その姿を向かいにあるカウンターから栞が撮影していた。夏輝はといえば黙々と洗い物をしている。

 雅は最初に手本を見せる。キャベツを一盛り分取りボウルに入れると、その上に手でちぎったレタスをのせる。その後適量のコーン、ミニトマト、ゆで卵、ベーコンを盛り付けるとシルヴァに見せる。


「こんなふうに盛り付けてね。それぞれの量は……そんなに細かく気にしなくていいよ。大体同じくらいで大丈夫だからね」


「わかりました……!頑張ります……!」


 シルヴァは雅と同じ手順で盛り付けてゆくが、手の大きさが元々違うので少々悪戦しているようである。なんとか盛り付けを終えたシルヴァは、不安げに雅と夏輝を見る。


「OKよ。完璧ね」


「………」


 夏輝は何も言わなかったが、シルヴァに向かって親指を立てる。それを見たシルヴァはより一層手伝いに励んだ。全てのサラダボウルを盛りつけ終えると夏輝はラップをかけた後、冷蔵庫に入れる。ちなみにカレーの味は大丈夫なようだった。


「先にシルヴァ達は風呂入ってきたらどうだ?俺は最後でいい」


「そうだね。行きましょう、シルヴァちゃん」


「はい」


 手を繋いで浴室へ向かうシルヴァと雅を見て、夏輝は栞に言う。


「栞姉も行ってくれるか?雅を信用していないわけじゃないが、やっぱり近くに大人は欲しい」


「そう……わかったわ。シルヴァちゃんのこと大切にしてるのね」


「そりゃな。ボスの家族は俺達の家族でもあるだろ。ボスが俺達のことを気にかけてくれるように。それから雅にも言ったけど、シルヴァの体を見ても何も言うなよ。シルヴァが話すまで」


「えぇ……わかったわ。お姉ちゃんに任せておきなさい」


「頼んだ」


 その一言と共に夏輝は浴室へ向かう栞を見送るのだった。

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