第二章幕間 第4話
『お兄さん。また会いましたね』
「そうだな。メッセージ見たか?」
『見ました……けど読めない字があったのでお姉さんに教えてもらいました』
「そりゃ……悪いことしたな……それでどうする?一度画面越しに顔合わせしてみるか?」
『はい!お姉さんが言っていました。"私の家族はシルヴァにとっての家族だ"って。私も色んな人のこと知りたいです』
「そっか……ならちょっと待ってな」
夏輝はスマートフォンを回転させると画面を3人に向けた。栞達が覗き込む画面には、銀髪にグレーの目をした10歳ほどの少女が映っていた。
「夏輝君……この子が?」
「そうだ。若干の人見知りもある。気をつけてやってくれ」
それを聞いた栞は、小さく手を振りながら自己紹介する。
「こんにちは……時間的には……こんばんはかな。夏輝君のお姉ちゃんをしてます。栞です。よろしくね」
「やっほー。アタシが2番目の姉。名前は玲。よろしく」
「最後が私ですね……神山家三女の 神山 華恋 と申します。よろしくお願いいたします」
『あの……えっと……はじめまして……私の名前は、シルヴァ……です。よろしくお願いします……!』
シルヴァの返答に栞は小さく拍手する。
「ちゃんと挨拶できるなんていい子ね。それだけで花丸あげちゃうわ」
栞のシスコンモード発動を検知した夏輝は早々にスマートフォンを自分の下に戻すと、シルヴァに聞く。
「さて……どうするシルヴァ?無理にとは言わないし、いきなり全員に会えなんてことも言わない。1人ずつ段階を踏んででも構わない。シルヴァ、君はどうしたい?」
シルヴァは画面外に目をやる。おそらくそこには芽衣がいるのだろう。数秒後、何かを決意したようにシルヴァは夏輝に告げた。
『……私は、会ってみたい……です。少し怖いですけど……お兄さんの家族なら……大丈夫だと思います』
「そっか、了解。ボス?2日後に華恋を連れて桜華に行くんだけど、その帰りに寄ってもいいか?ラッキーとライラックも連れてくけど」
「構わないぞ。どうせなら桜華までベティーを出す。それにどのみち行かなきゃならないところがあってな……』
「マジ?助かる……というか行かなきゃならないところってどこだよ。イカれメカニックのとこか?」
『いや、違う……そろそろベティーが腹ペコでな……』
「燃料費で頭抱えんなよ……スペック決めたのボスだろ……とりあえず2日後行くからな。詳細な時間は追って連絡する」
『わかった。ではな』
『バイバイ……です』
「またな」
そう告げると夏輝はビデオ通話を終了した。
「で……実際話してみてどうだった」
「いい子ね……凄惨な過去がありながらあれだけ素直なのは……きっと芽衣さんの努力の賜物ね……」
「アタシもカウンセラー関係に興味あるから調べたことあるけど……見た感じだと夏輝。アンタ、かなりあの子に気遣ってるね」
「まぁな……正直、俺の言動の何がトリガーになるかわかんねぇし……基本コミュニケーションは紙飛行機飛ばしてる」
「だから最近事務所に紙ゴミが多いのね。累さんと掃除してる時やけに紙飛行機が多いと思ったの。夏輝君のせいだったのね……」
「円滑なコミュニケーションの為だ」
「全く……他のやり方もあるでしょうに……」
雅は呆れたように夏輝に告げる。その後、緑茶を一口飲むと華恋に問いかける。
「華恋ちゃんは、学校で何かあるの?」
「はい。生徒会の業務が少々ありまして……夏休み明けから行事が続くのでその準備があるのです」
「華恋、確か生徒会長だっけ。アイツも華恋くらいしっかりしてると、私が毎回尻叩かなくてもいいからありがたいんだけどねぇ……」
そうボヤく玲の言葉を聞き夏輝の脳内には生徒会長である親鸞 司の人の良さそうな顔が思い浮かぶ。
(あの人は行事とか式関係の時とか挨拶するけど、終わったら毎回"シャンとしろ"って姉貴にケツ叩かれてるよな……姉貴、鬼嫁か?まぁ……これ言えば"死"一択だから言わないけど……)
生徒会長で思い出した夏輝は華恋に問いかける。
「そういえば華恋は、今中学3年生だろ?進学どうすんの?そのままエスカレーター方式で付属高校行くのか?」
「いえ、私は外部受験で兄様達と同じ高校に行きます。既にあの学校で学べることは全て学びました」
「傑物すぎんだろ……」
「生徒にそんなこと言われたら教師の方崩れ落ちるわよ?少なくとも私はそうなるわね」
「そんなこと言える中3アタシ知らないんだけど……」
「じゃあ華恋ちゃんは、来年から後輩になるんだ」
「でしたら呼び方も変えるべきでしょうか……?」
「別に変えなくてもいいんじゃね」
「そうは参りません。学生と家族の境目はハッキリさせておくべきです」
「………」
華恋のその一言に黙り込むことしかできない一同。理由は簡単で自分達がそのあたりハッキリさせてないからである。
「じゃあ俺と雅のことなんて呼ぶんだ?」
「兄様は兄様のままです」
「矛盾しとる……」
「雅義姉様は……どうしましょう……雅先輩?でしょうか」
「ぐっ………!」
華恋の答えに胸を押さえる雅。どうやら他人行儀の呼び方がめちゃくちゃ刺さったようだ。それを見て夏輝は華恋に叫ぶ。
「雅が死んだ!この人でなし!」
「勝手に殺さないで……結構心にキたけど……」
予想以上のダメージを受けている雅を横目に夏輝はさらに華恋に告げる。
「それにしても、学ぶものは全て学んだって……エスカレーター方式全否定じゃねぇか」
「進学させてくれた母様と父様には申し訳ないのですが、やっぱり兄様や雅義姉様と学生生活を楽しみたいのです」
「まぁ、母さんも親父も文句は言わないだろうな」
「どちらかというと、あの2人なら歓迎しそうよね」
「"やりたいことはやったもん勝ち"ってお父さんよく言ってるものね」
「それに私にはやるべきことがあるのです。雅義姉様のアシストという重大任務が」
「何のアシストだよ」
「それは言えないのです。我々女性陣の秘密なのです」
「えぇ……俺だけ蚊帳の外……」
「兄様は外であり中心なのです」
「なんだそれ……意味わかんねぇんだけど……」
「兄様が気づかなくても、これから嫌でも気づかせるので大丈夫ですよ」
「えぇ……?」
頭を捻る夏輝をよそに神山家の夜は更けていくのであった……




