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第二章幕間 第3話

シルヴァはしばらく固まった後、ポツポツと話し始める。


『私は……お姉さんのことをお母さんと呼びたいと思っています……でもそんなことが私に許されるのかわかりません……』


「どうして?」


『私と一緒にいた3人は、まだお姉さんのお友達の孤児院にいます。その子達がまだ家族が見つかっていないのに私だけが家族を持ってもいいのかわからないんです……!私は偶々、運が良かっただけで……本当なら他の子と一緒に売られていました……!そこを助けてもらって……もう幸せでいっぱいなのに……これ以上幸せになったら怒られるんじゃないかって……!』


 シルヴァは画面の向こうで泣いているようだった。そんな言葉を聞いて夏輝が言った。


「ん〜……厳しい言い方をするけど……外野のことなんかどうでもいいぞ」


「夏輝君!」


「シルヴァ。よく思い出せ。他の子達はシルヴァが幸せになると怒るのか?嫌な言葉を言ってくるのか?もしそうならそこまでの友情だったってことだ」


 シルヴァが息を飲む。しばらくしたのちシルヴァは言った。


『そんなこと……言わない……!あの子達はそんなこと絶対、言わない!』


「わかってんじゃねぇか。ならシルヴァがボスを受け入れない理由は?残ってるか?」


『ない……』


「じゃあ、決まりじゃねぇか。無理に呼べ。とは言わないけど、たぶんボスも心のどこかで呼んでくれることを期待してると思うぞ」


『そう……ですか?』


「もちろん。俺が保証するよ。あ、でももし呼ぶんだったら俺がいる時にして」


『どうしてですか?』


「ボスの泣き顔を写真に撮る。いつも俺ばっかり割を食ってるから、偶には反撃したい」


『えへへ……考えておきます……お姉さんが呼んでるのでもう行きます。また今度。バイバイ』


「おう。今度な。バイバイ」


 向こうの通話が切れたことを確認すると夏輝も通話を終了した。スマートフォンを机に投げ出すと夏輝は言う。


「焦ったぁ〜!シルヴァ泣かせたかと思ったわ」


「半分泣いてたけどね……夏輝君は言葉がストレートすぎる」


「オブラートに包んでもいいことねぇだろ」


「時と場合によるでしょ!」


 雅に諌められながら夏輝は時計を見る。既に夕刻を少し過ぎた頃であった。夏輝と雅は階段を降り、リビングに向かう。


「晩飯作るかぁ……」


「夏輝君の日だっけ?」


「いや……ただ華恋が帰ってきたから俺しか作り手いねーなって。たぶん姉2人は華恋で遊んでるからな」


 リビングに入れば案の定、華恋は栞と玲に挟まれて身動きできずにいた。それを見た夏輝は冷蔵庫を除くと3人に声をかける。


「なぁ、晩飯何がいい」


「私はなんでもいいよ〜」


「アタシも。食べられるならなんでもいい」


「は?じゃあコンビニ飯でも食ってろ駄姉」


「は?ぶっ殺すぞ、愚弟」


「こっわ……華恋は?」


「私は……兄様の作った肉じゃがが食べたいです」


「それは構わんが……日本料理が得意な華恋の舌を唸らせるかはわからんぞ?」

 

 「日本料理は得意ですが……それは懐石料理や伝統料理だけであって、家庭料理はあまり……」

 

「そうか?家庭料理も割と得意だろ?」

 

「作れるのは作れますが……やっぱり、姉様や兄様、それから雅義姉様が作ってくれるものの方が好きです」


 はにかみながらそう答える華恋を見て、栞と玲が動く。

 

「玲ちゃん!財布は持った!?」

 

「当たり前だよ!行くよ!栞!」


「はぁ〜〜ッ……!今日は好きなもん作ってやる……」


「私も手伝うから、なんでもいいわよ……」

 

「本当ですか!やりました!」


 そこには妹1人に壊滅させられた姉弟の姿と無邪気に飛び跳ねる華恋の姿があった。

 栞と玲が買い出しから戻ると夏輝は手早くリクエストの品を作り全員で卓につく。


「やはり兄様のご飯は美味しいです」


「左様で。お口に合って何よりだ」


「アンタ、煮物系作るの上手いよね。なんか特別なことでもやってんの?」


「いや別に。強いて言えば調味料は思い切ってドバーッと使ってるくらい」


「そんな感覚派なやり方でよくもまぁこんな繊細な味付けできるわね……」


「慣れだよ慣れ」


 食事を終え、一息ついた時華恋が言った。


「そういえば兄様。実は2日後に午前中だけとはいえ学校に戻る用事がありまして……学校まで一緒に着いてきてくれませんか?」


「2日後……2日後か……いいぞ。ついでだしその時に、ボスの娘に会ってみるか?」


「いいですね!是非!」


 その会話に口を挟んだのは玲であった。


「ちょい待ち。夏輝、今なんて言った?芽衣さんに娘?」


「あぁ」


「あの人いつの間に結婚したの?」


「してねぇよ。これには色々あってな……」


「お姉ちゃん達が聞くのはダメな理由?」


「ダメってわけじゃねぇけど……めっちゃ胸糞悪いぞ?」


「兄様。それでも私は聞きたいです」


「他は?」


 栞と玲も首を縦に振る。それを見た夏輝は、シルヴァのことを話す。人身売買で連れてこられたこと、そこを芽衣が救ったこと、身寄りも戸籍も国籍もないこと、今度、ラッキーとライラックに合わせると約束したこと。全てを話した。栞や玲、華恋がしばらく黙り込むには十分すぎる内容であった。


「そんな経緯で……」


「その連中は?アンタ達が潰したんだろ?」


「当たり前だろ。俺達は義に反することは許さない組織だぞ。全員、今は塀の向こうにいるよ」


「その子は芽衣さんの娘なのよね?」


「詳しい手続きは聞いてないからわからん。でもボスは娘って言ってる」


「なら私達の身内。いわば家族ね。今度華恋ちゃんと会うんでしょ?私達も連れて行ってくれない?」


「う〜ん……」


 夏輝としては会うのは賛成だが少しの懸念点があった。それは大挙して押し寄せた場合、シルヴァがパニックになる可能性があること。しばらく悩んだ夏輝は結局、会わせてもいいかは芽衣に確認するべきだとの判断をくだした。


「ちょっとボスに確認してみる。男性恐怖症と軽度の対人恐怖症あるから、いきなり大人数で行くのは向こうがどうなるか予想がつかない」


 芽衣にメッセージを送ると着信がきた。どうやらビデオ通話のようだ。夏輝が応答をタップするとスマートフォンの画面に映ったのはシルヴァであった。

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