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第二章幕間 第2話

またも幹線道路をひた走るベティー。話題はもっぱら華恋からの質問が多かった。


「兄様。他の方々はお元気ですか?」


「あぁ。元気すぎて困るくらいじゃねぇかな」


「それなら良かったです。他に何か変わったことはありましたか?」


「変わったこと……ねぇ……特になかっ……いや、あるわ。ボスに娘ができた」


「え!?伯母様いつの間にご結婚を……?」


「はっはっは!違うよ。とある事情で引き取った子がいるんだ。歳は華恋の5歳下だよ。今度顔合わせをしようか。将来は華恋と同じ学校を受験させようと思ってるから、その時はよろしく頼むよ」


「わかりました。それで、兄様は何かありましたか?特に雅"義姉(あね)"様との関係などは?」


「雅?特に変わりはねぇぞ」


 期待を込めて聞いた華恋だったが夏輝の返事は素っ気なかった。


「華恋。コイツは他人の気持ちには目敏いクセに自分のこととなると気付かないからな」


「兄様は昔からそうなのです。そこがいいところであり悪いところです」


「なんか俺ディスられてない?気のせい?」


「気のせいですよ」


 夏輝の嘆きもスルーされる最中、ベティーは神山家の前で停車する。既に家のガレージには栞の車が駐車されていた。華恋に手を貸してベティーから降ろすとスーツケースを降ろす。家に入ろうとした時、芽衣が夏輝を呼び止める。


「夏輝。近々依頼がある」


「おぉ……了解。コレある?」


 夏輝は芽衣に対してファイティングポーズをとる。


「今のところない予定だが……備えておけ」


「了解」


 それだけ告げると芽衣はベティーで走り去っていった。それを見届けるとすかさず華恋が問いかける。


「一体、何のお話をされていたのですか?」


「次のバイトの話」


「雅義姉様から聞いてはいますが……お仕事の内容は?」


「ただの家事代行サービス」


 夏輝は華恋に仕事を誤魔化すと玄関を開けて、中に叫ぶ。


「戻ったぞー!華恋も一緒だ!」


「おかえり〜!ごめんね。夏輝君、急に頼んじゃって後で電車代渡すね」


「いや、いいよ。ボスに車出してもらったから。後で連絡入れておいてくれ」


 夏輝は華恋のスーツケースを持つと2階に上がろうとする。


「兄様!荷物は運びますので大丈夫です」


「いいよいいよ。久しぶりに帰ってきたんだから、栞姉達のおもちゃにされとけ。栞姉。俺ちょっとボスに電話してくる」


 背中からかかる栞の声を受けながら2階にある華恋の部屋へスーツケースを置いてやると、夏輝はスマートフォンを取り出し芽衣に電話する。数回コール音が鳴った後、繋がったがスマホから聞こえてきたのは別の声であった。


『もしもし……あの……どちら様ですか……』


「ん……?その声、シルヴァか。俺だよ。夏輝」


『お兄さんですか……?どうかしましたか?』


「ボスとちょっとお話ししたくてな。今いる?」


『今、お姉さんは……友達の"めかにっく?"の方とお話ししてます』


「そっかー……」


 ここで夏輝はシルヴァの声に怯えがないことに気づく。おそらく、面と向かって話すのは無理だが顔を合わせなければ話すことができそうだと感じた夏輝はある提案をする。


「なら、もう少しだけ俺とお話ししてくれない?俺もシルヴァのことちゃんと知りたいし」


『私のこと……ですか?』


「そ。俺はシルヴァのことまだまだ知らないからね。何が好きかーとか好きな食べ物とかね」


『私も……お兄さんのこと知りたいです』


「なら順番に色々質問してみようか」


 夏輝はスマートフォンをスピーカーモードにすると机に置き、そのまま夏休みの課題を始めた。最初に質問したのは夏輝であった。


「シルヴァは、何が楽しい?」


『私は……毎日が楽しいです。特にお勉強が1番好きです。少しずつお姉さんや累お姉さんの言うことがわかるようになってきました』


「マジか……その歳で勉強が楽しいのか……俺なんて毎日、黒髪のお姉さんに怒られてるぞ?」


『お姉さんが言ってました。"勉強は将来役に立つかどうかはわからないけどやってて損じゃない"って』


「正論すぎるな……耳が痛いぜ……」


『大丈夫ですか?』


「大丈夫大丈夫……」


 夏輝がそう返事すると次はシルヴァが質問した。


『お兄さんは何が楽しいですか?』


「そうだな……ウチで飼ってる犬と遊んでる時かな」


『ワンちゃん!お兄さんのお家にはワンちゃんがいるんですか?』


「あぁ、2頭いる。名前はラッキーとライラック」


 夏輝は2頭の写真を送る。シルヴァに画面を見ながら通話する方法を教える。少しするとシルヴァの声が聞こえた。


『わぁぁぁぁ!可愛いです!お兄さん、私この子達に会ってみたいです!』


「了解。次、事務所に行く時に連れて行くよ」


『本当ですか!?約束ですよ!』


「あぁ、約束だ」


 そう答える夏輝の顔はどこか優しい顔つきであった。その後も2人はお互いについて質問しあった。例えば好きな食べ物。夏輝の答えは"なんでも食べる。好き嫌いはしない"と答え、シルヴァは"未だ決められない。でもピーマンは嫌い"との答えであった。また芽衣がシルヴァに"夏輝の作るカレーは美味い"と教えたらしく、今度、作る約束もした。好きな色は夏輝が"赤"、シルヴァが"紺"。理由を聞けば芽衣の髪色と同じだからだそうだ。2人の質問ゲームは、夏輝が課題を一つ片付けるまで続いた。


「今日はここまでにしようか。またいつでも連絡してくれ」


『はい。なんだがお兄さんのことたくさん知れました。黒髪のお姉さんより詳しくなりましたか?』


「いんや……黒髪のお姉さんをあまり甘くみない方がいい。あの人は俺より俺に詳しい。シルヴァ、スマホの画面見てみ。現に今も後ろに……」


 夏輝がビデオ通話にすると、夏輝の後ろには雅が立っていた。


『わ!本当です!』


「な?言ったろ?」


「何をしてるのかと思ったら……シルヴァちゃんと話してたのね」


「今日はもうお開きだけどな……そうだ、最後に1つ聞きたいことがあるんだ」


『なんですか?』


「シルヴァは、ボスのことを"お母さん"って呼ばないのか?」


 その質問は夏輝がシルヴァを固まらせるのには十分であった……

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