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第二章 第7話

夏輝達が正門に到着したタイミングで、ブラック・ベティーが滑り込んできた。夏輝は後部座席のドアを開けると自分と雅、そして杏梨の荷物を積み込む。その後、助手席のドアを開けるとドライバーである芽衣から投げ渡されたモノがあった。


「装備しろ。要人警護だ」


「了解」


 夏輝の手元には"銃"があった。ゴム弾の弾倉と安全装置を確認すると、夏輝は銃を腰に差し込む。2人に手招きし告げる。


「急げ。移動するぞ」


「わかったから……焦らせないで……」


「何気にベティーに乗るのは初めて……」


 呑気な2人を乗せると夏輝も助手席に座る。その時、夏輝はある事に気づく。


「ボス、対向車線。駐車中の青いセダン」


「気づいているさ。好きに撮らせてやれ。我々はその程度で攻略できん」


 芽衣はシフトレバーをDに入れると、事務所に向けて出発した。

 走る事20分程。通常なら10分程度だが、襲撃を避ける為あえて遠回りした。ベティーが、事務所の駐車場に滑り込み咆哮を止めた段階で2人を下ろす。2人が事務所に入るまで芽衣と夏輝は常に銃を挟んだ右腰に手を当てて警戒していた。


「さて……全員揃ったな。これより調査結果の擦り合わせを行う。まずは夏輝からだ」


「はいはい……5限目に尋問した男な。簡単に言うとだな……」


 夏輝は男が吐いたことを淡々とつげる。


 ・会社をリストラされ、家族に事実を話せない為、収入を得る為に参加した。

 ・校内の侵入ルートや撮影スポット、対象なんかは雇い主から教えられた

 ・雇い主とはメールのみで顔も見ていないし、声もわからない


「夏輝君が回収したスマートフォンとあの方のアカウントやメールを解析しました。メールの送り相手はプリペイド携帯です。よっぽど自分の足跡を残したくないのでしょうね。写真の保存先はおそらくロッカーにあるサーバーだと思われます。そこから他の人物が持ち出しているかと」


「結局は、あのロッカーをなんとかしないとダメか……一応、由梨には報告済みだ。既に更衣室は封鎖したとのことだ」


「流石、理事長。仕事がはえーな」


「現状話せるのはここまでだ。残りは機密事項になる……つまり……」


「私達は聞けないってワケね……まぁわかってはいたもの。そういう仕事だしね。隣の部屋にいるわ。終わったら呼んで」


「あ……私も……隣にいますね……」


 杏梨に続き、部屋を出ようとする雅に芽衣が言う。


「雅君。キミを排除するような事になってしまったのはすまない。だが我々はキミを信用していないワケではない。ただ……キミには危険な目に遭ってほしくないんだ……そこだけはわかってくれ……」


「えぇ……わかっています……皆さんが私を危険から遠ざけようとしていることも……何か出来ることがあったら言ってください」


 そう言うと雅は部屋を出ていった。部屋の中にはなんとも言い得ない空気が残っていた。ただ夏輝だけは思っていた。女性のフォローは女性に任せた方がいい……と。

 雅は隣の部屋へ移動すると杏梨の隣に座る。そのまま膝を抱え顔を埋めた。


「悔しいのかしら」


「うん……」


「自分が踏み込めない世界があることが?それとも役に立てていないことが?」


「どっちも……」


「そう……前者は仕方がないわ。神山がいる限り貴方はあちらの世界には踏み込めない。いつだって彼の優先順位の1番には貴方がいるもの」


「………」


「でも後者は違うわ。貴方は貢献できているもの」


「私に……何ができてるの……?」


「私の友達になってくれた。今日だけでも何度貴方に励まされたと思う?たぶん神山と2人だったら私は更に凹んでいたわ。アイツ、良くも悪くもストレートすぎるもの」


 その言葉に思わず雅は吹き出す。


「ふふっ……そうだね。夏輝君は昔からなんでもかんでも口に出るから……」


「えぇ……私は貴方が隣にいてくれて良かった。例えどんな結末になろうとも乗り越えられる気がするもの……」


「それは……この事件のこと?それとも龍崎君との関係のこと?」


「………どっちもよ……」


 そう告げる杏梨の頬には赤みがさしていた。

 隣の部屋では未だ調査報告が続けられていた。


「で?あの2人を追い出したんだ。歴としたやべー内容なんだろうな?」


「あぁ……非常にマズい。正直楽観視はできん」


 芽衣は真剣な表情になると3人に告げる。


「男のスマートフォンに、夕方メールがあった。依頼主と思しき人物からだ。内容としては正直どうでもいい。だが、最後の宛名が見逃せん」


 芽衣はホワイトボードに文字を書く。そこに書かれたのは"H.T.G"の文字。


「おいおい……コレ本気か?」


「本気も本気ですわ。間違いなく……」


「アイツら……だよ……たぶん今まで取り押さえた下っぱじゃなくて……中核メンバー……」


「おそらく、今回の事案。裏には世界的人身売買組織、"Human Trader Group"がいる。これは推測だが今回の依頼者を含む人物を拉致、そのまま売り飛ばすつもりだ。近いうちにな」


「盗撮写真は宣伝材料ですってか……?シャレになんねぇぞ……」


 夏輝のボヤキもそこそこに芽衣は続ける。


「私と累、沙羅で詳しい取引の時間帯や場所を抑える。わかり次第、ヤツらと戦う事になる。それまではいつも通り、気取られないようにしろ。明日は依頼人は仕事だ。雅君と共に付き添え」


「了解……そういえば累さん、SNSの方はどうだったんですか?アレもH.T.G絡み?」


「いいえ?そちらは単独犯です。名前、住所、電話番号や家族構成まで抑えておりますので、問題ないかと」


「"ショボい単独犯"と"世界的人身売買組織"ね……めんどくさいなぁ〜」


「諦めろ。コレが仕事だ。既に警察の方には連絡してある。この先、ヤツらの摘発には警察と共に動く。ひとまずは目の前の事に集中しろ。夏輝、明日の護衛頼んだぞ」


「はいよ」


「では、我々は依頼主を送ってくる。お前も雅君を連れてもう帰れ」


「了解」


 芽衣と累、沙羅は、杏梨を連れるとブラック・ベティーに乗り込み走り去っていった。それを見届けた夏輝は言う。


「とりあえず帰るか」


「えぇ、そうしましょう」


 2人は夕日に照らされながら帰り道を歩くのだった。

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