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第二章 第2話

3日後、宣言通り如月は"Perfect Clearing"の事務所にマネージャーと訪れていた。


「ようこそ。"Perfect Clearing"へ。私が執行責任者の柏木 芽衣 です。それからこっちが……」


「補佐の 赤城 累と申します。よろしくお願いいたしますわ」


「これはご丁寧に……私、杏梨のマネージャーをしております。銀条 やまめ と申します。身辺警護を依頼するならコチラが一番だと伺いまして……」


 応接室で挨拶する大人組を尻目に夏輝達は、トランプに興じていた。


「夏輝君……どうする……?キープ?トレード?」


「迷うな……」


 今の夏輝の手札は8が2枚の11が2枚、Aが1枚。ツーペアでは弱いと判断した夏輝は攻めの選択をした。


「1枚、トレードで」


 ディーラーの沙羅にAを放出し、新たなカードを受け取る。受け取ったカードはクラブの8だった。これで手札は8が3枚の11が2枚。フルハウスだ。


「如月さんは……トレード……しますか?」


「ん〜……私は大丈夫です。勝負します」


 如月は真っ直ぐ夏輝の目を見る。余程自信があるようだ……いいだろう……フルハウスで驚くがいい……!


「じ……じゃあ……いくよ……オープン!」


 その掛け声と共に夏輝はフルハウスを叩きつける。


「フルハウス!」


 如月は夏輝のカードを見た後、ニヤリと笑うとカードを広げる。


「ロイヤルストレートフラッシュ。私の勝ちだね」


「ウッソだろぉぉぉぉぉぉ!そんなことあるぅぅぅぅぅ!?」


「じゃ、これは私のだから」


 頭を抱えて叫ぶ夏輝を尻目に、如月は賭け金として置いていた駄菓子を全て持っていった。


「マジかよ……どんな確率だよ……初手でロイヤルストレートフラッシュって……」


「0.000153%……だよ……」


「沙羅先輩……教えてくれてありがとうございますぅ……」


 不貞腐れたように机に伏せる夏輝に、如月が駄菓子を食べながら言う。


「それで、私が身辺警護を依頼する理由だけど」


「あぁ。そういや聞いてなかったな。理由は?」


「ストーカー。それも性質が悪いヤツ」


「具体的には?」


「SNSへの粘着は当たり前。大量のDMに執拗なリプライ。挙げ句の果てには掲示板まで。そして最近は……」


 如月は数枚の写真を夏輝と沙羅の前に並べる。覗き込む2人に映った写真はどれも盗撮と見られるものであった。


「こんなのが事務所宛に届くようになった」


「これは……」


「れっきとした……犯罪……だね……」


 夏輝は1枚の写真を手に取ると言う。


「これって学内か?どこから撮ってんだ。芸能科は基本的に立ち入り禁止のはずだろ?」


「そのはずだけど……現に撮られてるってことはどこかに潜んでたんだろうね……」


 杏梨は両手で自分の体を抱きしめると呟く。


「有名税だとしても……気持ち悪いわ……けれど……こうなっても仕方ないって……思う節もある……そう思わないと……受け止め切れないわ……」


「有名税か……"周りが勝手に言ってるだけだろ"と俺達が断定することはできるが……お前の努力を知らない俺達が軽はずみに言うべき言葉ではないよなぁ……」


「そうだね……でも、だからと言ってこんなことが許されるわけじゃ……ないよ……だから如月さん……こんなことされても仕方ないっていう考えは……捨てていいよ」


「沙羅先輩の言う通り。ウチに依頼して大正解だ。今頃、ボスの脳内では犯人の捕縛プランがいくつか出来上がってるだろうよ。安心しろ。この"環境"からは救ってやれる」


 夏輝は芽衣を見た後、再び杏梨に目を合わせて言う。

 

「ただ……俺達は心までは救えない……けど立ち直る手助けならできる。依頼者に寄り添ってこその家政サービス業だ」


 夏輝がそう言ったタイミングと芽衣達が応接室から出てきたのはほぼ同時であった。


「契約成立です。万事、我々にお任せください」


「よろしくお願いします。杏梨さん。行きましょう」


「OK」


 如月は立ち上がると、俺達を見回して告げる。


「それでは、よろしくお願いいたします」


 深々と頭を下げると、マネージャーと共に帰っていった。芽衣は2人が出ていったのを確認すると、俺達に告げる。


「依頼内容の説明だ。内容として、身辺警護、それから元凶の排除になる。身辺警護においては泊まり込みが予想される。依頼者は女生徒だから私達で持ち回りする。それ以外の担当は夏輝だ」


「了解」


「学園内、登下校時、それから仕事の現場にも追従しろ。向こうに許可は取ってある。仕事現場との折衷もアチラさんが手配するそうだ。加えて、今回は雅君を同行させろ」


その一言に夏輝が立ち上がる。


「どういうことだ……?アイツを巻き込むつもりか?」


「違わないが違う。今回、雅君を適用したのは依頼者の精神的な支えとしてだ。お前は良くも悪くもストレートすぎるからな。女性同士の方が打ち解けるのも早いし、些細な変化にも気づきやすい。ただ、雅君と依頼者2人では無防備すぎる。常にお前が同行しろ」


「守る対象が増えるだけだから、やめてほしいんだが……」


「仕方ないだろう。向こうはこの敏感な時に余計なスキャンダルはなくしたいらしいからな。私としても気持ちはお前と同じだ。彼女は協力者とはいえそれは建前だ。一般人を巻き込みたくはない。だがコレしか手段がない。わかってくれ」


 芽衣もかなり迷った決断だったようだ。それもそのはずで、雅と会ってからというものの芽衣も割と雅を可愛がってるところがあるからであった。


「納得はしてないが理解はした。ただ危険な目に遭わないように対策してくれ」


「無論だ。まぁ、雅君に話してから決めることになるが……」


「俺が話す」


「頼んだ」


 芽衣は改めて全員に指示を出す。


「もう一度言うが、依頼内容は身辺警護と元凶の排除。それぞれ資料は後で配布する。夏輝」


「実地調査だろ?はいはい。斥候やりまーす」


「累」


「私の伝手にインターネットに詳しい方がいますので、投稿者のログやアドレス。特定できるか聞いておきますわ。もしダメでしたらSNSのCEOが顔見知りですので協力してもらえるか確認いたしますわ」

 

「沙羅」


「警護ルートの構築と……学園と依頼者のマンションの見取り図を使った潜伏位置の把握……それから……警備システムの確認だね……任せて」


 芽衣は全員の顔を見ると告げた。

 

「よし、それでは任務開始だ」


 芽衣がそう告げると各々の役割の為に動き出すのであった。

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