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第一章幕間 第4話

 数分後、事務所に戻ってきた夏輝はかなりゲッソリしていた。


「かなり絞られたようだな」


「だいぶな……あんな怒った雅見たの久々だわ……」


「全く……もう2度としないで」


「善処します……」


 戻ってきた2人に笑いながら芽衣が言う。


「仲が良くてなによりだ。それから、さっきの装備に加え、新しい社用車を採用した」

 

「新しい社用車?どんなの?」

 

「外に出ればわかる」

 

芽衣に連れられて外に出る2人。芽衣がガレージにあった大きなカバーシートを剥がすと、そこにあったのは黒塗りのSUVであった。


「大きい……ですね」

 

「おぉ!黒い!デカい!速そう!最高じゃん。コレなら移動する時も格好つくんじゃね」


 大きさに驚く雅と純粋な少年心でテンションが上がる夏輝に芽衣が説明する。

 

「気に入ったか。コイツは防弾、耐爆、強化フレームとV8エンジン。馬力は600を超えるぞ。更に室内にはドリンクホルダー付きだ」


「イカれてんのか。ニック・フュー○ーのクルマじゃねぇんだぞ。幾らしたんだよ」


「命を守れるなら安いモノだ」


 そう答える芽衣になんとも言えない2人。軽くため息を吐くと新たに夏輝が問う。


「そういや運転は?誰がすんの?」


「もっぱら私だろうな」

 

「どうしてですか?」


 そう尋ねる雅に芽衣が答える。

 

「簡単さ。夏輝は無免許、沙羅は足が届くか微妙だ。累なら運転できるかもしれんが……普段からロングスカートのメイド服だ。難しいだろう。消去法で私になる」


「もっと他の人のこと考えろよ……というか沙羅先輩……それでいいのか免許保持者……」


 夏輝はボンネットを開け、エンジンを覗き込む。一通り見回した後、芽衣にさらに聞く。


「ちなみにコレってオートマか?って過給機までついてるし……」

 

「どちらでもイケる。トランスミッションは8速だ」

 

「11000回転まで?」

 

「キッチリ回す」

 

「ボスのそういうノリのいいとこ好きだぞ」


「芽衣さんもマンガとか読むんですね……」


 少し驚いたように溢す雅。それを聞いた芽衣はさらに答える。


「私も日本のポップカルチャーは好きだからね」


 夏輝はクルマの周りをグルグル回る。フロント、サイド、バックに至るまで見て回っているようだ。


「グリルガードまで付けてんのか……装甲車かよ」


「ドラマで見る海外のパトカーみたいですね」

 

「人に当てる予定はない」

 

「当たり前だろ……下手すりゃ人死ぬぞ。障害物は?」

 

「コイツなら弾き飛ばしたほうが早い」

 

「それもそうか」


 夏輝はタイヤを叩きながら続ける。


「これパンク対策もしてんのか?」

 

「当たり前だろう。タイヤ一本破損した程度で動けなくなる軟弱モノなら要らん」


 キッパリと言い切る芽衣。


「軟弱モノ……」

 

「容赦ねーな。国内じゃやってくれなかったろ」

 

「だから海外から車体だけ輸入した」

 

「そーなのか……ならその他諸々のカスタマイズは?」

 

「メカニックに投げた」

 

「だろうな……マジかよ……コレ、自爆装置とか付いてねーだろうな」

 

「お前はアイツを何だと思ってるんだ」

 

「信頼できない変態技術者……」

 

「言い過ぎだ。もう少し手心を加えてやれ。自爆装置は無いが自衛用火器といざという時の加速装置は組み込んだらしい」

 

「加速装置ですか?」

 

「あぁNOSを積んだと」


「NOS?」


 語尾にハテナマークを浮かべた雅に夏輝が説明する。

 

「亜酸化窒素をエンジンに噴射して一時的に馬力を底上げするシステムのこと。それにしても……サーキットでレースでもすんのか。600馬力超えにNOS積んだらもはやその辺のスポーツカーより速ぇぞ」


 呆れたように溢す夏輝。するとクルマの至る所にセンサーとカメラが付いているのを見つけた。


「センサーとカメラ多いな」


「もちろんだとも。なんなら自動運転技術に誤発進防止装置もあるぞ」

 

「いやに現代的だな……」

 

「凶器を扱う上での事故防止はマナーだろう」


「凶器って自覚はあるんかい」


「試験の段階でコンクリートの塀をぶち破ったんだぞ?グリルガードは取り換えになったがコイツは無傷だった。……凶器以外の何物でもない」


「コンクリートを……!」


「やっぱやりすぎだろ……動力源は?環境に配慮してEVか?それとも水素か?」

 

「そんなわけないだろう。ガソリンガブ飲みだ」


 その返答に夏輝はテンションが上がったようだ。

 

「マジかよ!最高だな!」

 

「EVなどという軟弱技術に頼っていられるか」

 

「軟弱って……全国の自動車メーカーに謝った方がいいですよ……」


「そうだぞ、土下座した方がいいんじゃないか」


「事実だ」


「うわ……悪びれてねぇ……それでも大人かよ!」

 

「そうだぞ?それに手のかかる子の方が愛着が湧くだろう?」

 

「それはそうだが……今の時代、ガソリン代もバカにならんぞ」

 

「だがデカい馬力に排気ガスの匂い。好きだろう?」

 

「好きだけどさぁ……!」


「見た目だけではない。ブレーキ、サスペンション、ギアに至るまで全て強化してあるし、全体的な軽量化を施しつつ安全性も高めた」

 

「思ったよりもガッチガチのガチじゃねぇか」

 

「浪漫だろう?」

 

「……浪漫だよ!」


 そう告げる夏輝の声色は浪漫と現実の狭間で苦悩しているようだった。そして夏輝は一番気にかかっていたことを聞いた。


「それで……整備は?」

 

「メインは私がやるが……手伝いはお前だ」

 

「だろーな!仕様書寄越せよな!」


「あはは……」


 ガレージに雅の苦笑いと夏輝の叫びが響いた。

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