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第一章幕間 第3話

 ドロイドの一体が飛び上がり、ブレードを振り下ろす。夏輝は三節棍の両端をクロスに構え、これをガード。ブレードを押し返し、大きく腹に空間を作ったところで急所に両端で交互に打突。そのままの流れで顎を打ち上げ、脳へのダメージを狙う。たたらを踏み、ドロイドの体勢が崩れたタイミングで左手は変えず、右手のみを真ん中の節に滑らせるとフルスイング。ドロイドの金属ボディから鈍く重い音がした。遠心力による殴打は腹を捉え、ドロイドを軋ませながら後退させるのに十分な威力であった。


「ふむ……やはり有効打は多いか……」


 芽衣が見るモニターには、3体のドロイドが表示されており、その内の"No.1"と振り分けられたドロイドの腹部と頭部は赤く表示されていた。


「あの……これってどういうことですか?」


「あぁ。簡単に説明すると現実で相手が負っているであろうダメージを表示したものだ。あのドロイドは全て人間と同じ臓器や骨の部分にセンサーが取り付けてある。センサーの衝撃で相手が負うであろうダメージを算出、それに合わせた動きに変わるんだ。現に1の個体は足元がおぼつかないだろう?」


 雅が見れば、No.1の個体はふらついていた。


「アレは的確に脳にダメージが入った証拠だ。腹部には複数の骨折ないし内臓へのダメージがあるだろう。それでも致命傷ではないようにしているあたり、夏輝はやはり天才だ。もし現実なら相手は戦闘不能だ」


 芽衣はマイクをオンにすると夏輝に言う。


「1対1は終わりだ!次は対群戦闘だ!」


 芽衣はNo.1のダメージをリセットすると、No.2、No.3の個体とリンクさせる。これにより3対1の戦況が出来上がった。

 夏輝は三節棍をバトンモードにすると言う。


「オラ、ワクワクすっぞ!」


「全く……アイツは……」


「あはは……」


 芽衣と雅の呆れたような声が響いた。


「始めるぞ!」


 芽衣のその一言で次は3体同時に動き始める。様子見するかのように一定の間合いを保っている。


「人間じみた動きしやがって……気持ち悪い」


 夏輝はバトンモードにした三節棍の真ん中を保持していた。構え方としてはス○ー・ウォーズに登場するダース・モールと同じような構えである。


「さぁ……どう動くブリキ人形」


 最初に動いたのは左右の2体であった。交互にブレードを振るい、打ちつけてくる。夏輝はバトンの両端で器用に捌いていると、2体同時に斬りかかってきた。夏輝はバトンを水平にし、顔付近で掲げると受け止める。2対1の鍔迫り合いだ。


「ぐっ……クッソ……機械のパワーで押し付けるのは反則だろうがぁ……」


 ふと、後ろから迫る殺気。最後の1体が背後に回っていた。


「小賢しいマネしやがって……っらぁ!」


 正面の2体を押し返し、鍔迫り合い状態を解除するとすぐさまバトンモードから三節棍へ切り替える。体を半分回し、右手で先ほどの2体を、左手で背後から迫ったもう1体の攻撃を受け止める。


「舐めんな!」


 芽衣はその光景を見ると呟く。


「あの攻撃に気づくのか……つくづくお前には驚かされる」


「凄い……」


 雅は夏輝の戦いに魅せられていた……だが胸中には不安も渦巻いていた。新たな武器を手に入れたということは少なくともそれを使う"現場"があるということ。夏輝は何も言わずにいなくなるのではないか。結果として帰ってこないのではないか。そんなことを考えてしまう雅を見透かしたかのように芽衣が言う。


「そんなに心配しなくてもいい。夏輝はちゃんと帰ってくる。その為にこういったことをしてるんだ。それに自分の身は自分で守る。原則として私はそう言ってはいるが、私は上司であり、経営者であり、彼の伯母だ。部下の命を、甥っ子を守るのは私だ。みすみす身内を失うつもりはない。だから……安心しろ。私がいる限りアイツは死なせん」


「……はい」


 そんな会話をしていると画面は既に2体が沈黙したことを示していた。2体とも頭部と内臓に大きなダメージを負っていることがわかった。


「さぁ、最終局面だぞ。夏輝」


「頑張って……怪我しないでね……」


 雅の手は強く握られていた。


「今回の"ボス設定"はお前かよ……」


 夏輝は目の前のドロイドを見てボヤく。先程背後を取ったNo.3の機体であった。夏輝は構えをとりニヤリと笑うと言う。


「こい!」


 その一言で距離を詰めるドロイド、ブレードの振り方は刀を思わせる動きであった。夏輝は首を狙った横薙ぎを回避する為にバク転……するがワザと回りきらずに両足でドロイドの顔面を蹴る。その後、腕の力で元の状態に戻ると姿勢を下げ、バトンモードで相手の足を刈る。すぐさま立ち上がるとバトンを地面に立て、ポールダンスの要領で蹴り飛ばす。


「どうだ……!」


 足を掬われ、踏ん張りの効かないドロイドは派手に吹き飛ぶ。しかしドロイドも只では済まさない。すぐさま飛び起きると夏輝に急接近、猛攻を仕掛ける。


 「うぉっ……ヤッベ……!」


 先程とは比べ物にならない速さとスピード。たまらず体勢を崩した夏輝に、ドロイドの"拳"が刺さった。


「ぐはっ………!」


「夏輝君!」


 雅の呼びかけも聞こえず床に転がる夏輝。そこにドロイドの刃が迫った。


「チェックメイトだな」


「えっ……?」


 芽衣がそう言った瞬間、ドロイドの動きが止まる。雅が画面を見ればドロイドの耳の部分と目の部分が赤く表示されていた。


「残念だったな……奥の手は残しておくもんだぜ?」


 夏輝の左手には腕時計から変形したグローブがついていた。ドロイドには瞬間制圧用のフラッシュライトと高音が向けられていた。ドロイドが硬直した瞬間を夏輝は逃さない。バトンモードで相手の膝を折ると素早く後ろに回り込み、三節棍に展開。左右の節をドロイドの脇に通し、真ん中の節は胸の前へ。左右の節を交差させて締め上げれば拘束状態となった。そのタイミングで芽衣はドロイドを止めた。


「夏輝。終了だ」


「了解。成果は?」


「上場だ。使った際の初見はまた書類で提出してもらう」


「はいよ」


 拘束を解き、三節棍をバトンモードにした夏輝に芽衣が言う。


「それから」


「なんだ?」


「お前はいつもの"癖"で不意打ちの為に攻撃をもらっていたが……今日は見学者がいるのを忘れていたな?」


「あ……ヤッベ……」


「彼女から"おはなし"があるそうだ。覚悟しておくんだな」


 そう告げると芽衣はひと足先に試験室を出ていく。残されたのは冷や汗が止まらない夏輝と腕を組み、笑顔でありつつも額に青筋を立てている"お怒りモード"の雅であった。

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