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第2話

 3人横並びで学校に向かう。話の内容はもっぱら新入生と新学期についてだ。


「そういえば今年もあるのか?あの……なんだっけ……新入生と上級生の交流会?だっけか」


「New term partyのこと?」


「それ」


「今年もやる。正直めんどくさいんだけどね。特に生徒会としての手続きや外部との調整が」


「姉貴は去年もやったんだろ?」


「やったけど私は2年生だったからあんまり大掛かりに関わってはないのよ。ただ今年は最上級生、しかも副会長だから仕事量が去年の比じゃないの」


 ウンザリしたような言い方をする玲。


「でも立候補したの姉貴だろ?」


「立候補というよりも押し付けに近かかったよ。私以外にやる人いなかったもの」


「う〜ん、この」


 学校に近づくにつれ、高級車が増えてくる。


「そういえばアンタ、去年の交流会はなにしてたの?雅ちゃんは私達と一緒にいたし、何人かと交流してたのは見たけど。新入生は絶対参加だったでしょ?」


「俺?会場でタダ飯食ってた」


「アンタねぇ……そんなんだから雅ちゃん以外に友達できないんじゃない?」


「仕方ねぇだろ。俺には姉貴みたいなカリスマ性も雅みたいな人付き合いの良さと頭の良さもねぇんだから。この学校では異端児なの」


 到着したのは"私立白峰学園附属高等学校"俺達が通う高校だった。正門の近くには送迎の高級車が多く停車している。そう、この学校は会社の跡取りや令嬢が通う超上流階級学校なのだ。この学園には、進学科、一般・スポーツ科、そして芸能科があり、各スポーツの日本代表候補や芸能人も多く通っている。


「異端児って……そこまで自分のこと卑下する必要ないんじゃないかな。夏輝君も十分頑張ってると思うよ?」


「そうか?姉貴も雅も成績は学年トップクラスだろ?姉貴は進学科コースだし、雅は特待生で学費免除、姉貴も学費半額免除貰えるくらい頭いいし」


そう考えるとなんで雅は進学科コースに行かなかったんだろうか。今度聞いてみるか。

 

「でもアンタ、運動神経は抜群じゃない。この学校でも割とトップクラスに。なんか部活に入ったら?てか入れ。毎度毎度アンタを説得してくれって言われるのめんどくさいのよ」


「断ってるんだけどな。部活の"部"の言葉の時点で帰れって追い返してる。後、バイトがあるから無理」


「断り方を考えろって言ってんの。全く」


 校舎に入ればそれぞれの教室へ。この学校は、コースと学年で校舎や教室が別れている。3年の進学科は、3棟ある校舎の内の一番奥に位置しているから玲とはここでお別れだ。

 

「じゃ、アタシはこっちだから。雅ちゃん、また放課後」


「はい。また後で」


 姉貴と昇降口で別れ、俺達も教室へ向かう。向かっている途中に、廊下にいる他の生徒から視線と話し声を感じた。学年が上がっても変わらずか……そう心の中で愚痴る。それもそうだろう。

 頭脳明晰、眉目秀麗。父親は会社経営者、母親は父親の会社の敏腕顧問弁護士。そんな完璧美少女の隣に並んでるのは一般家庭出身の多少運動神経のいい普通の男。父親が公安系職、母親は妹が通う女子校の寮母っていうなんてことない普通の家出身だ。去年から事あるごとに庶民だと言われていたがまぁ事実だしな。と思っていると雅の声で思考は断ち切られた。


「聞いてる?夏輝くん」


「ん?悪い。ちょっと考え事してた」


「もう……今年の交流会は行くの?」


「2年からは自由参加だっけか。行けたら行くって感じかな。タダ飯は魅力的だけど」


「それ行かないでしょ。全く……」


 教室のドアを開けると、多くのクラスメイトがいた。

雅が教室に入るとあっという間に人に囲まれながら、自分の席に向かっていった。相変わらずすげー人気だな。彼女を横目に俺も自分の席へ着いた。まだ一時限目まで時間もあるし面白いことでもないかとスマホの画面をつけた時、後ろから衝撃を受けた。


「よぉ!夏輝!また同じクラスだな!」


「いってぇ……ちょっとは加減を覚えろよ。謙也」


 背中を思い切り叩いたのは、友人の"竜崎 謙也"だった。コイツは、高校ラグビー日本代表候補。パワーもあるし、ガタイもデカい。なぜコイツが同じクラスなのか。理由は簡単で、一般科とスポーツ科は混合クラスになるからだ。だから各クラスに日本トップクラスの実力を持つ高校生が多くいる。


「また、神崎さんと一緒に来たな。お前らいつも一緒だろ。確か、幼馴染なんだっけ?」


「そうだよ。誕生日も1ヶ月違い。アイツの方が1ヶ月早い」


「じゃ、お前の方が弟ってワケか」


「なんだよ、ソレ」


 呆れた物言いで返せば、龍崎は前の椅子を間借りして俺に言った。


「なぁ……ところで、この前の件考えてくれたか」


「この前の件……アレか。部活に入ってくれってヤツか」


「そうだ。お前中学の頃やってたんだろ?試合のビデオを見た。お前なら絶対に通用するからさ。入ってくれないか」


「悪いが無理な話だ。怪我したのも知ってるだろ」


「それはそうだが……」


「パスくらいなら付き合ってやるから、それで勘弁してくれ」


「そうか……だが俺は諦めないからな」


「好きにしてくれ」


 そう返した時、スマートフォンが震えた。画面に映っていたメールの差し出し人欄には"BOSS"の文字。


「ボスからだ」


「バイト先か?」


「あぁ、放課後来いってさ」


「家政婦のアルバイトも大変なんだな」


「それなりにな。仕事って意外に重労働だし、体のあちこち痛めるし。給料が低かったら即辞めてたぜ」


 そう話しているとチャイムが鳴った。時計を見れば8時30分を指していた。


「お、もうこんな時間か。じゃあまた昼休みにな!」


「わかったよ」


 謙也を見送り、午前の教務の準備をする。さて、長い1日の始まりだ。

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