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第一章幕間 第1話

 ある日、夏輝が事務所へ向かうとガレージに布のかかった大きな物体があった。


「なんだコレ……クルマか……?」


 それを横目に事務所に入る夏輝。事務所にはちょうど芽衣がいた。


「来たか。夏輝」


「あぁ。ってボスだけ?累さんと沙羅先輩は?」


「2人は所用でいない。後で戻ってくる」


 夏輝はその返答を聞きながらリュックサックをソファに放り投げると聞く。

 

「なぁボス。下にあるあのクルマなんだ?」


「後から説明するさ。少し見てくれ」


 芽衣は、夏輝を呼ぶと机の上の"あるモノ"を見せる。そこにあったのは、短い棒が3つ連なった不思議な武具であった。


「ナニコレ」

 

「これか?三節棍だ」

 

「三節棍?ヌンチャクとは違うのか?」


 夏輝がそう聞くと芽衣が説明する。

 

「ヌンチャクより1つ持ち手が多いのが特徴だな。更にコレは特殊な機構を採用することでワンタッチで棒術で使用できる一本の長モノにもなる」

 

「ほぇ〜……で、どっから持ってきたんだ?」

 

「私のブーツなんかも開発してくれてる同級生の技術者さ。ほら、お前も防弾スーツ作る時に会っただろう?」


 その一言で夏輝の脳裏に浮かぶのは、ツナギを着て両手にレンチとスパナを持ち不敵な笑いをする女性だった。

 

「げぇ!あのマッドサイエンティストかよ!」

 

「マッド言うな。私の知り合いだぞ。それにアイツは科学者じゃない。メカニックだ」

 

「初対面で人の体をベタベタ触ってくるヤツを正気とは呼べねーだろ」


「ううむ……正論すぎて何も言い返せんな……」


 芽衣は言葉に詰まる。夏輝は三節棍を持ち適当に触る。


「振り回すなら、地下のトレーニングルームに行け」


「わかってるよ。どうせこの後使うだろうし。お、このボタンで棒になるのか」


 夏輝が赤いボタンを押すと、三節棍は瞬時に一本の長い棒になった。


「長さ的には……俺とか累さんにはちょうどいいくらいだな。でも累さんは……服装的に厳しいか。沙羅先輩には長すぎるな……実質、俺専用じゃねぇか。コレ。伸縮は無理なのか?」


「流石にな。そこまでやると重量過多で動きに弊害が出るし、メンテナンスも面倒になる」


「それもそうか……この青いボタンは?」


「押してみろ」


 言われるがままにボタンを押すと、棒の両端が"バチバチ"と音を鳴らす。どうやらスタンガンの機能らしい。


「こんな機能付けられるなら伸縮機能もいけたろ」


 呆れまじりにボヤけば芽衣が答える。


「それに関してはアイツが言っていたぞ。なんでも"あのエース君は不服かもしれないけど、効率を考えるとコレが限界なの。ゴメンネ"とな」


「絶妙に似てる声真似ヤメろ」


 脳裏に両手を合わせ、猫被りして謝るメカニックの姿が思い浮かぶと夏輝は身震いする。彼女の厄介さを身をもって体験しているからである。


「他にもあるのか?」


 夏輝が聞くと、芽衣はスマートウォッチを投げ渡す。


「スマートウォッチ?」


「装着してみろ」


 言われた通り装着する。画面には夏輝の心拍、体温、現在の時刻と天気、それから気温が表示されていた。


「別に普通だな。どこが新装備なんだ?」


「画面を2回タップして、時計を剥がすように手の甲へ持っていけ」


「はぁ……了解……」


 困惑しつつも芽衣の言う通りに操作すると、時計が分解。瞬時に金属製のグローブになった。


「なんだコレ……!すげぇな……!」


「だろう?時計に扮した、緊急事態用のグローブだ。制圧用のフラッシュライト、音響装置を備えている」


「技術は?」


「金属のナノテクノロジーだ」


「アイア○マンかよ」


「まさにそれだ」


 芽衣は夏輝に近づくとグローブの手首付近を2度タップする。するとグローブは瞬時にスマートウォッチに戻った。


「ハイテクだな……あの人、天才なのに絶対性格で損してるだろ……」


「言ってやるな。私も感じてるんだ……」


 呆れたような物言いの芽衣が続けて言う。


「ただ弱点もある。2つとも電力を使用するから定期的に充電が必要だ」


「そんなことだろうとは思ったよ……稼働時間は?」


「三節棍がフル充電で約2日。時計の方は……普段からの使い方にもよるがフル充電、付けっぱなしで1週間ってところか」


「思ったより長いな……」


「さて……新装備がいくつか渡されたわけだが……夏輝。テストプレイの時間だ」


「だと思ったよ……とりあえず三節棍だけか?」


「いや、時計の方も試す。一応、防弾ではあるらしいがまだ試していないからな。実弾で撃ってみる。着替えたらトレーニングルームに来い」


「はいはい」


 夏輝が更衣室に消えると同時に、新たな来訪者があった。


「こ……こんにちは……」


「やぁ、雅君。ようこそ」


 顔を見せたのは雅であった。太陽に照らされていたからか少し汗ばんでいた。


「あの、夏輝君来てますか?」


「あぁ、ちょうど今着替えているところだ」


 芽衣が雅に麦茶を渡しながら言うと更衣室のドアが開く。


「ボス。準備完了……って雅も来てたのか」


「たった今な。ふむ……ちょうどいい。この際だから見ていくといい」


「何をですか?」


「我々の新装備のテストだよ」


 芽衣と夏輝は困惑する雅を連れて、地下のトレーニングルームへと向かうのだった。

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