表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/12

俺だけ転生してない!? それでも世界を救っちゃった件について本気で考える

「――というわけで、また遺跡調査、ですね」


ヒロトはどこか悟った顔で、遠くに浮かぶ南方空中遺跡スカイフォートを見つめていた。


「ヒロトさん、元気出して! 今回は浮遊島だし、あったかいし、眺めも最高だよ!」


「だからって空飛ぶ魔法船に乗せられて、命綱一本で空中作業はやめてぇぇぇ!!」


今日も今日とて、転生してない俺だけがアナログ作業担当である。




空中遺跡の中心部には、謎の水晶塔が立っていた。

勇者アキラの【聖剣】も、ユイの【メカスパナ】も、まるで歯が立たない。


「どうも、この遺跡、文明の境目らしいんだよね。魔法と科学が共存してたっていうか……」


「つまり、また機械ってことですね、ええ、わかってましたよ……!」


ヒロトはげんなりした表情で水晶塔を観察し、すぐ気づいた。


「これ、スキル入力じゃなくて、言葉で動作するタイプだ」


「言葉? 古代語?」


「いや、たぶん……これ、日本語だ」


一同「「「えっ」」」




ヒロトはゆっくりと、塔に触れながらつぶやいた。


「起動……」


カチリ――


水晶塔が震え、天を突く光が放たれた。


同時に、周囲に巨大な映像が投影された。


それは――かつてこの世界に転生した無数の日本人たちの記録だった。




【――我々は、数千年に渡り、異世界に転生者を送り込んできた】


【これは、文明と文明をつなぐ実験であり、進化の観測である】


【最後の鍵は、スキルを持たぬ者。魔法にも祝福にも頼らぬ、ただの人間だ】


【彼/彼女が真の継承者である――】


「……なにこれ、俺って仕組まれてた存在?」


ヒロトは呆然とつぶやいた。




アキラが言った。


「ヒロトさん……まさか、君が世界の起動キーだったってこと?」


「いやいやいやいや、そんな美味しい役割、主人公すぎるでしょ!? 俺ずっと地味ポジだったよ!? なぜ今さら主役待遇!?」


ミレイがつぶやく。


「でも、腑に落ちるわ。スキルを持たない者が、世界の根幹に触れられるって、ある意味一番純粋よ」


「ちょっと待って、これ絶対フラグ立ったやつじゃん。転生者が世界の主導権を持っていいのか問題、始まるやつじゃん!」


ユイが興奮しながら叫んだ。


「つまり、ヒロトさんがこの世界のマスターキー!? どっかのメカが喋り出したらもう確定演出だよ!」




直後、水晶塔が語り始めた。


『……マスターキー認証完了。文明連結計画、最終フェーズに移行します』


『統合ネットワークを開放します――』


風が吹き、空が色を変え、世界のレイヤーが入れ替わっていくような感覚。


(ああ……本当に、俺だけが転生してないのに――)


(なんで、俺がこの世界の扉を開けちゃってるんだろうな……)




目を覚ましたとき、ヒロトは街の病院のベッドにいた。


ルミナが涙目で駆け寄る。


「よかった……意識、戻った!」


「……俺、死んでない?」


「ギリギリです。光の過負荷で意識だけ飛んだらしいです。で……あなたが世界の鍵だったって、いま世界中が大騒ぎですよ?」


「うわぁ……こりゃ、当分目立つなぁ……」


「でもね、ヒロトさん。みんな、スキルがなくても世界を救えるって証明してくれて、すっごく希望になってるんです」


「そうかな……だったら――」


ヒロトは、ゆっくりと笑った。


「俺は、転生してないただの人として、もうちょっと、この世界にいてやるよ」




【その後】


・ヒロト、《無スキルの英雄》として教科書に載る

・転生勇者アキラたちと共に世界復興プロジェクトに参加

・ルミナとレイナがヒロトを取り合って修羅場が日常化

・スピンオフで『転生勇者ガロウの鍋探訪記』が始まる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ