襲来! 転生勇者パーティが俺の街にやってきた!? 無スキル VS チートの宴!
「おいおい、聞いたか? 例の勇者パーティが、この街に来てるらしいぜ!」
「マジかよ!? 転生組だろ? 異世界最強ランキング上位常連の!」
「やば……サインもらえるかな……!?」
ギルドの酒場は朝から大賑わい。
ヒロトはそんな騒ぎを横目に、いつも通り、静かにパンとスープの朝食をつついていた。
(ふーん、ついに来たか……転生組)
この世界には、異世界からの転生者が年に数人のペースで現れる。
中でも最近話題の四人組――
【聖剣神速】勇者アキラ
【魔導機巧】天才メカ師ユイ
【重装無敵】盾騎士ガロウ
【万能奇跡】大司祭ミレイ
全員が日本からの転生者で、スキルもチート級。
(俺だけが転生してない世界で、いちばん関わりたくない相手なんだよな……)
そう、彼らは、転生してない俺がバレると面倒な存在だった。
「ヒロトさん!」
と、そこへ元気な声と共にやってきたのは、剣士ルミナと魔術師レイナ。
「ギルドから連絡がありました。勇者アキラ一行が、ヒロトさんに会いたいそうです!」
「……は?」
スープが吹き出る音とともに、ヒロトは硬直した。
ギルドの応接室。
そこにいたのは、噂通りの眩しい連中だった。
「やあ、君がヒロト君か! 無スキルで迷宮制覇、海魔退治まで成し遂げたって聞いて、ぜひ会いたかったんだ!」
まばゆい笑顔で手を差し出す少年――アキラ。高校生くらいの外見に、神々しいまでの聖剣が背にある。
「……いやいやいや、俺なんて大したこと――」
「いやいやいや! スキルなしでそれだけのことができるなんて、超かっこいいっしょ!? マジ尊敬するわ!」
と横から割って入ったのは、黒髪の少女ユイ。背中にはドリルと歯車がうなる謎メカが詰まったリュック。
「……ご本人、めちゃくちゃフレンドリー!!」
ヒロトはパニックに陥っていた。
「君、もしかして……転生してない?」
その言葉が、静かに放たれたのは、パーティの中で最年長らしきミレイだった。金髪に白いローブ、まさに聖女のような雰囲気。
「へっ!?」
「だって……転生者特有の魔力のゆらぎがないの。私、こう見えても元・看護師だから、そういうの感じ取れるのよ」
「なにその転生職スキル!!」
ヒロトの心がズタズタになりかけたそのとき――
「でもさ、ヒロトさんってさ、転生してないのにめっちゃ活躍してるじゃん? それって超強くね?」
アキラが言った。
「俺らさ、最初から強くて当然だったから、あんまり努力とかしてこなかったけど……ヒロトさんは違うんだよ。『努力型主人公』ってやつでしょ? そういうの、一番アツいって!」
「まさかの称賛!? しかも、異世界メタ目線から!?」
その日の夜――
酒場で、勇者パーティ歓迎会が開催されていた。
「ヒロトさん! 料理、めっちゃうまいっすよこの街!」
「ちょっとユイ、スチームチキンにドリル刺すのやめて!? 破壊料理人じゃないんだから!!」
「レイナさん、ヒール魔法と私の回復術、どっちが早いか勝負しません?」
「勝負の意味が医療事故なんですけどぉ!?」
カオスな宴の中、ヒロトはぽつりと呟いた。
「……案外、悪くないな」
ルミナが隣で笑う。
「ね、勇者パーティって言っても、結局は、同じご飯食べる人たちなんですよね」
「……そうか。異世界でも、飯がうまけりゃ世界は平和か……」
「そこ!? 着地点そこなんですか!?」
だが――
そんな夜の終わりに、アキラが小声で言った。
「ヒロトさん。実は一つ、お願いがあって」
「ん?」
「この先、俺たちが行く北方の封印地帯――そこに、一緒に来てくれないかな」
「……は?」
「チートスキルだけじゃ通用しない、何かがある気がするんだ。君の普通の目線が必要なんだよ」
ヒロトは絶句した。
(チート勇者が、チートなしの俺を頼る日が来るなんて……)
そして彼は言った。
「……旅費と食費、出してくれるなら考えるよ」
「即答かい!!」




