八章 強襲
同年、四月二十一日。
紫羅陸軍大臣を乗せた六式飛行艇は夜中に月浜国を抜け、サリタン国上空を飛行していた。
「高度一万メートルを維持。周辺に異常なし」
機長はレーダー波、速度計、高度計を見てそう言った。
「あの小娘には確かに利用価値がある。しかし、気にくわん」
紫羅陸軍大臣は秘書を見てそう言った。
「え?」
秘書は紫羅陸軍大臣を見てそう言った。
「私を含め、多くの技術者が人生のほとんどを勉強に捧げ苦労して来た。博士という地位は苦労の末に手に入る。それをあんな小娘はあざ笑うように平然と手に入れた・・・」
紫羅陸軍大臣はグラスにワインを注ぎながら言った。
「そうですね・・・」
秘書はワインを飲み干す紫羅陸軍大臣を見て笑みながら言った。
「それに、奴は貧困街出身の小汚いドブネズミのような存在だ。あれほどずば抜けた才能さえなければ即刻」
紫羅陸軍大臣がそう話していた時、装甲が爆発して機内に煙が充満した。
「だ・・・い・・・じん・・・」
金属片などを受けた秘書は即死した紫羅陸軍大臣を見てそう呟くと息絶えた。
「クソ!なんで煌桜が!」
戦斧を握ったフィゼル・ヘンデクラークはL-51 雪風を見ながら飛び回る。
端末から次々と疑似神姫の情報が消えていく。
「信じられねぇ・・・こ、これが現実かよ・・・」
フィゼル・ヘンデクラークは雪風を見て絶望的な表情を浮かべてそう言った。
一機の雪風がフィゼル・ヘンデクラークに向かって飛んできた。
「おりゃぁぁぁぁ!!!!」
フィゼル・ヘンデクラークは正面から雪風に向かった。
両者エネルギー砲を撃ち合っていたその時、突然正面で爆炎が広がった。
「こざかしい!!」
フィゼル・ヘンデクラークはそう言いながら戦斧を振った。
しかし、戦斧が斬ったのは爆炎だけだった。
「・・・」
フィゼル・ヘンデクラークは冷や汗を垂らしながら多くの雪風に追撃される六合飛行艇に向かった。
「やめろぉぉぉぉ!!!!」
フィゼル・ヘンデクラークは悲鳴を上げながら雪風に攻撃を開始した。
その時、上空から一機の雪風が急降下して来た。
「ッ!?」
フィゼル・ヘンデクラークは咄嗟に戦斧を使って防御態勢を取り、刀を受け止めた。
「・・・」
フィゼル・ヘンデクラークは雪風の操縦士を見て冷や汗を垂らした。
東和連合軍所属のエースパイロット、秋谷 明子が目の前にいたのだ。
雪風秋谷専用機はいとも簡単に戦斧を弾き飛ばし、フィゼル・ヘンデクラークの片翼を踏みつけて足の裏全体で押すように蹴った。
(体勢が立て直せない・・・)
姿勢制御が行えず複雑に回転しながら墜ちるフィゼル・ヘンデクラークは視界の中に入る六式飛行艇を見た。
操舵能力を失った六式飛行艇は急上昇し、激しく燃えながら垂直降下を開始した。
六式飛行艇は空中分解し、爆散し始めた。
「紫羅搭乗の飛行艇を撃墜。任務完了」
雪風秋谷専用機はそう言うと、上昇して雲の中に消えた。
残りの雪風も上昇して雲の中に消えた。
午前十時七分。
紫羅陸軍大臣を乗せた六式飛行艇が撃墜されたという一報がS.開発局に入った。
「紫羅陸軍大臣・・・」
ジャネットは落ち込みながら言った。
「そのため、開発は一時中断だ。わかったな?」
月浜軍の軍人はローラを見てそう言った。
「了解」
シゼルは月浜軍の軍人を見てそう言った。