六章 S.520試製二号機
同年、四月十七日。
S.520試製二号機の試験走行が行われた。
試験操縦士はジャネット。試験場は一番試験滑走路だ。
今回は月浜国の総帥、高咲 重海も見ている。
「疑似神姫だと・・・?」
高咲 重海はS.520試製二号機を見てそう言った。
「は、はい・・・この方が低コストでして・・・」
紫羅陸軍大臣は重海を見てそう言った。
「安定性は?」
重海は紫羅陸軍大臣を見てそう言った。
「変わりません」
シゼルは資料を見ながらそう言った。
「お、おい!フィトミア博士!」
紫羅陸軍大臣はシゼルを見て焦りながらそう囁いた。
「・・・」
冷や汗をかいた紫羅陸軍大臣はS.520試製二号機を見る重海を見て安堵した。
「A2」
無線を持ったシゼルはS.520試製二号機を見てそう言った。
ジャネットはレバーの持ち手にあるボタンに押してS.520試製二号機を加速させる。
「二十五キロ維持」
ローラはしばらくの間パソコンの画面を見てからそう言った。
「A3」
無線を持ったシゼルは資料を見ながらそう言った。
ジャネットはレバーの持ち手にあるボタンを押してS.520試製二号機をさらに加速させる。
「五十キロ維持」
ローラの言葉を聞いたシゼルは無線を置いて資料に文字を書き込んだ。
「A3に入れたまま射撃開始」
シゼルが無線で指示を出すと、S.520試製二号機がエネルギー対空砲を高角に向けた。
標的物に狙いを定めたエネルギー対空砲は低出力エネルギー弾を放った。
ばら撒かれるように放たれた低出力エネルギー弾の弾幕は遥か遠くの標的物を一瞬で火の玉に変えた。
「フゥーッ!!」
シゼルは嬉しそうに歓声を上げた。
「これは煌桜キラーだな」
ローラは墜ちる火の玉を見て笑みながらそう言った。
「これで良いんでしょうか・・・」
ジャネットはシゼルを見てそう言った。
「良いんだよ」
無線機を持ったシゼルはS.520試製二号機を見てそう言った。
午後六時十八分。
S.520試製二号機の試験が終わって開発局に戻ると、ローラは外装を外したS.520試製二号機を装備し、内部構造を見ながら動かし始めた。
「もっと小型のジャイロを造れないだろうか」
ローラはジャイロスコープを見てそう言った。
「ジャイロセンサーチップならあるよ」
シゼルはそう言うと、ネックレスの鎖を掴んでペンダントトップを見せた。
「ジャイロセンサーチップ?ジャイロスコープと同じことができるのか?」
ローラはペンダントトップを見てそう言った。
「できるよ」
シゼルはローラを見てそう言うと、ネックレスの鎖から手を離した。
「ここで作れるか?」
ローラはシゼルを見てそう言った。
「作れるよ。でも、超精密部品の新規製造はコストが高すぎる」
シゼルはローラを見て笑みながらそう言った。
「コストというものはすこぶる厄介だな」
ローラは腕を組んでめんどくさそうに言った。