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四章 新時代を築く天才

同年、五月二十四日。

S.520試作一号機の試験走行が終わるとすぐにS.520試作二号機の開発が始まった。

最初は全て順調に進んでいた。

しかし、紫羅陸軍大臣が小型化や軽量化、運用コストの低さなどを求めて首を横に振るようになってから全くと言って良いほど進展しなくなった。

試験的に軽量化したS.520試作一号機も少しでも接地力を失えばコケてバラバラになる駄作と化した。


千六百五十六年、一月十四日。

S.520試作二号機の小型化が成功しないまま時間が過ぎている。

S.開発局の局員たちは全員へとへとだ。

「・・・バァァァァ!!!!」

鉛筆を握ったパトリシアは叫びながら机に突っ伏した。

鉛筆を握った局員たちは黙ってパトリシアを見つめた。

「もう限界!外出てくる!!」

鉛筆を投げ置いたパトリシアはそう言うと立ち上がって全速力で開発局から出た。

「・・・私たちも息抜きしよう。これ以上は厳しいだろう」

シゼルは鉛筆を置いてそう言うと、立ち上がって開発局から出た。

「・・・はぁ・・・」

局員たちは鉛筆を置くと各々休み始めた。


開発局から出たシゼルはいつもの定食屋に行った。

ドアを開けて店に入ったシゼルはため息をつきながら椅子に座った。

「随分と荒れていますね」

梨々香はシゼルを見て笑みながら言った。

「陛下・・・本日もいらしていたんですね」

シゼルは梨々香を見てそう言うと、立ち上がった。

「そちらのお子さんは陛下とウェンディさんのお子さんですか?」

シゼルは金髪の少女を見て笑みながらそう言った。

「キツイ冗談ですね。ただのお客さんですよ」

「君、名前は?」

「ローラ」

「君、親は?」

「居ない」

ローラはそう言うと、お茶菓子を食べた。

「孤児か。私たちは良いけど、月浜政府が黙ってないぞ」

シゼルは椅子に座ってそう言った。

「言葉が少し足りなかった。親と呼べる親は居ない」

ローラはシゼルを見てそう言った。

「そうか」

シゼルは興味なさそうに言いながら設計書を取り出した。

「シゼル」

梨々香はシゼルを見てそう言った。

「はい」

シゼルは梨々香を見てそう言った。

「この子に仕事を紹介してくれませんか?」

「仕事ですか?」

「どうも技術職がしたいようで」

梨々香はローラの頭を優しく撫でながら言った。

「技術職ですか」

シゼルは考えながらそう言うと、ローラを見た。

「君、計算はできる?字はかける?」

シゼルはローラを見て淡々と質問する。

「一度に質問をするな。答えたところでどうせ聞き直すのだから」

ローラはシゼルを見てそう言った。

「計算はできる?字は書ける?」

シゼルは間髪入れず同じ質問をする。

「計算は一応できる。字も書ける」

「わかった。紹介しよう」

シゼルはローラを見てそう言った。

「陛下、これを見てください」

シゼルは梨々香を見てそう言った。

「君も見て」

シゼルはローラを見てそう言った。

梨々香とローラは設計書を見る。

「軍部がまた無茶を言ったんです。小型・軽量化しろって」

シゼルは梨々香とローラを見てそう言った。

「軍部の悪評か聞いていたが、ここまで無茶なことを言うのか・・・」

ローラは設計書を見てそう言った。

「まさかここまで衰退するとは・・・」

梨々香は設計書を見て驚きながらそう言った。


お茶を終えたシゼルはローラを連れては開発局に戻った。

しかし、一般人であるローラが開発局に入るというのは極めて重大な犯罪行為だ。

「なにしちゃってるんですか!?」

ジャネットはローラを見て驚きながら言った。

「連れてこられた」

ローラはジャネットを見てそう言った。

「今日からここの局員になるローラ・エリザベス・アディ。まぁ、私の後継者だと思ってよ」

シゼルは紫羅陸軍大臣と局員たちを見てそう言った。

「ま・・・まぁ、フィトミア博士がそう言うなら・・・」

紫羅陸軍大臣はローラを見て少し考えながらそう言った。

「紫羅陸軍大臣、少し聴きたいことがある」

ローラは紫羅陸軍大臣を見てそう言った。

「聴きたいこと?あぁ、構わない」

紫羅陸軍大臣はローラを見て笑みながらそう言った。

「パンクハースト合金は月浜にあるのか?」

「パンクハースト合金を使った装備は運用コストが高すぎる。月浜には必要ない」

紫羅陸軍大臣はローラを見て笑いながらそう言った。

「重量があって神気に耐性があって丈夫。装備の小型化に必要だろう?」

「それは・・・運用コストがだな」

「コストに拘るのなら試製一号機をベースに改良を重ねていけば良いではないか」

ローラはどんどん小さくなっていく紫羅陸軍大臣を見てそう言った。

「しかし・・・小型化も・・・」

紫羅陸軍大臣は弱弱しくそう言った。

「なぜそこまでして小型化に拘る。小さくしても軽くしても安くはならない。むしろ高くなる可能性だってあるだろう?」

「それは・・・海軍の奴らをぎゃふんと言わせたくて・・・」

紫羅陸軍大臣の言葉を聞いたシゼルたちは呆れてため息をついた。

「疑似神姫をサポートできて、煌桜を撃墜できて、広範囲に移動が可能でステルス性能がある疑似神姫で納得してくれない?海軍って戦姫はあっても疑似神姫はないでしょ?」

シゼルは紫羅陸軍大臣を見てそう言った。

「・・・疑似神姫か・・・まぁ、そうだな。それならいいだろう」

紫羅陸軍大臣はシゼルを見て笑みながらそう言うと、開発局から出た。

「無茶はするな。めんどくさいことになる」

シゼルはローラにそう囁いた。

「・・・そうだな」

ローラはシゼルを見てそう言った。

「軽量化は中止!安定性を求めて突き進むよ!」

シゼルは局員たちを見て笑みながらそう言った。

「やったー!!やっと進む!!」

パトリシアは嬉しそうに言った。

「じゃあ、とりあえずこのコードを覚えて」

シゼルはローラを見てそう言うと、資料を差し出した。

「わかった」

資料を受け取ったローラはシゼルを見てそう言った。

資料を持ったローラは立ち上がり、パソコンに向かって歩き始めた。

パトリシアたちはローラに続いてパソコンに向かって歩いた。

ローラはパソコンの前に座ると、キーボートを使ってプログラムコードを入力し始めた。

何百、何千通りの数字と文字を組み合わせ、ローラはプログラムコードを作っていく。

シゼルたちはローラの行動を見てローラという子は途轍もない天才だと確信した。

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