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三十六章 人員再編

同年、六月二十一日。

国境戦線が再度激化する中、シゼル率いるS.開発局は操縦士の選別を行う。

「このミッキー・ウォートリー・フォックスっていう子能力値低くないですか?」

パトリシアは資料を見てそう言った。

「まぁ、特記事項がある時点でなしですね」

サラは資料を見ながらそう言った。

「採用。ジェルドフドス級の操縦士で」

シゼルがそう言うと、ビゼルがミッキーの書類にハンコを押した。

「えぇ!?」

パトリシアたちは驚きながらシゼルとビゼルを見た。

「フィトミア博士・・・流石に怒られますよ!」

サラはシゼルを見て焦りながらそう言った。

「シーモア元帥閣下様もどうしてそう簡単にハンコを押すんですか!?」

焦るパトリシアはビゼルを見てそう言った。

「お師匠様は高咲総帥閣下の予想と考えを否定してまで私、キッド、サスキア、アンティーナを選んだ。名が通る疑似神姫の操縦士も全てお師匠様が選んだ」

ビゼルは資料を見てそう言った。

「不敬を承知で申すが、お師匠様の予想と考えは高咲総帥閣下やそこらの有識者より信用できる」

ビゼルはパトリシアたちを見てそう言った。

「発言が強いよ~・・・」

パトリシアは少し怯えながらそう言った。

「お師匠様が居なければ月浜四剣士も極東連合も生まれなかった」

ビゼルがそう言うと、シゼルがビゼルの肩を裏拳でノックするように叩いた。

「仕事しろ」

シゼルは書類を差し出してそう言った。

「すみません・・・」

ビゼルはそう言いながら書類を受け取った。


同年、六月二十五日。

疑似神姫の一斉改修が始まり、人員入れ替えを知らせる紙が貼り出された。

一喜一憂する者たちがいる一方、安堵する者たちもいる。

安堵するものたちのそのほとんどは激戦と化した国境戦線やサンティラ国境防衛戦を経験してしまった者たちである。

(あね)さん・・・」

フィゼル・フィトミア・カーリンはシゼルを見てそう言った。

「滞納四ヶ月目だぞ。ギャン中」

腕を組んだシゼルはフィゼルを見てそう言った。

「もう疑似神姫に乗りたくないです。鉄屑(てつくず)拾いでも何でもするんでもう勘弁してください」

「はぁ・・・」

ビゼルはフィゼルを見て呆れたようにため息をついた。

「その鉄屑が一キロいくらで売買されてるか知ってて言ってる?」

「いや・・・それは知らないですけど・・・」

「百スー。直近の最高額四百七十スー」

シゼルがそう言うと、フィゼルは黙り込んだ。

「戸籍買ってあげるよ。それで借金はチャラ、旅の銭も渡す。どこにでも行くと良いよ」

シゼルは呆れたようにそう言った。

「・・・月浜からは出たくないです・・・」

「店を開けるわけでもなければ商人の下で働けるわけでもないでしょ?どうすんのさ」

「・・・どうすれば良いんでしょうか?」

フィゼルは弱々しくそう言った。

「人生設計書を書いておいでよ。あんたは半年以上暇になるんだから」

シゼルは紙を差し出しながらそう言った。

「はい・・・」

フィゼルは紙を受け取りながらそう言った。


同年、七月一日。

疑似神姫の改修が次々と終わって初回飛行が始まると、戦意を喪失していた疑似神姫たちがやる気を取り戻して元気になった。

ジャイロセンサーチップセットを利用した高精度飛行安定化システムが搭載されたことで安定性が大幅に向上し、警告センサーが危険を知らせる範囲が前方上側六十度から前方上側百八十度になったことで回避行動がとりやすくなった。

「すげぇ!!これがジャイロセンサーチップセットの力!!」

墜落するように激しく複雑に回転したフィゼル・ヘンデクラークはいとも簡単に復帰して飛び回った。

「で、人生計画書は書けた?」

無線機を持ったシゼルは飛び回るフィゼル・ヘンデクラークを見てそう言った。

「あぁ・・・いや~もうちょっと続けたいかな~って・・・」

フィゼル・ヘンデクラークは笑いながらそう言った。

「そっか」

シゼルはフィゼル・ヘンデクラークを見てそう言うと笑んだ。

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