三十三章 シーモア元帥の判断
同年、六月十一日。
高咲第五期政権が始まった。
シゼルは月浜に戻るため久しぶりにホテルから出て船に乗った。
船はレムフィト国とアウス共和国を経由して月浜に行く。
同年、六月十三日。
シゼルがS,開発局に戻って来た。
シゼルを出迎えたのは山岸新任陸軍大臣と塩田新任海軍大臣だった。
「フィトミア博士、これからよろしくお願いします」
山岸陸軍大臣はシゼルを見て笑みながらそう言った。
「よろしくお願いします」
塩田海軍大臣はシゼルを見て笑みながらそう言った。
「よろしく」
シゼルはそう言うと、S.開発局に入った。
山岸陸軍大臣と塩田海軍大臣はシゼルに続いてS.開発局に入る。
「フィトミア博士、S.520のことなのですが・・・」
山岸陸軍大臣はシゼルを見て笑みながらそう言った。
「また悪い話?」
シゼルは荷物をしまいながらそう言った。
「軍縮で予算が確保できず・・・」
山岸陸軍大臣は申し訳なさそうに言った。
「酷いですよ・・・ご飯が雑穀粥と練り物だけになったんですよ?」
パトリシアはシゼルを見てそう言った。
「これが月浜の国力なのだよ」
ローラはパトリシアを見てそう言った。
「国民に貧しい思いをさせないと兵器の一つすら作れない。今までが異常だったのだ」
ローラは腕を組んでそう言った。
「まぁ、開発局を吸収して技術者解雇して陸海軍が協力すれば何とか開発続けられるでしょ」
シゼルはホワイトボードを見てそう言った。
同年、六月十四日。
陸軍の開発局がほぼすべて閉鎖されて技術者の八割が解雇された。
解雇された技術者たちは、文句を言うどころか喜んで去っていった。
「国民ばっかりいいもの食べて・・・」
海軍開発局の技術者はそう言いながら雑穀粥を食べた。
「国民は休みを減らし工夫を凝らして金を稼ぐ必要がある。何もしなくたってお金が手に入る私たちとは違うのだ」
ローラはそう言いながら雑穀粥を食べた。
「辛い・・・色々と・・・」
パトリシアは雑穀粥を食べながらそう言った。
「しょうがないよ」
シゼルは雑穀粥を食べながらそう言った。
シゼルたちがご飯を食べていると、廊下から焦ったような大声が聞こえてきた。
その時、食堂のドアが開いてビゼルが入ってきて食堂内に緊張が走った。
「お、驚かせてすまない!」
焦る上層軍人はみんなを見て苦笑いしながらそう言った。
「シーモア元帥閣下、下級軍人が驚いておられます」
焦る上層軍人はビゼルの腕を掴んだままそう言った。
ビゼルは上層軍人の手を振り解いてシゼルたちに近づいた。
「この汚らしいものは何だ?」
雑穀粥が入ったお椀を持ったビゼルは上層軍人を見てそう言った。
「そ、それは・・・今回は食料品の調達が間に合わず・・・」
冷や汗を垂らす上層軍人はそう言うと、助けを求めるように料理人たちを見た。
「何日も食料が調達できないっていうのはどうなの?」
シゼルは上層軍人を見てそう言った。
「貴様!!」
上層軍人がシゼルに向かって怒鳴ると、ビゼルが上層軍人の肩に懐剣を突き刺して悲鳴が上がった。
「一週間以内に改善しよう」
ビゼルは泡を吹いた上層軍人の襟首を掴んでそう言うと、上層軍人を引きずりながら食堂から去った。
同年、六月十七日。
上層軍人・官僚の報酬が大幅に減額されることが発表された。
総帥と元帥は九割減、上級官僚は七割減と大幅に減らされた。
報酬の大幅減額と同時に月浜四剣士を交代させようという動きが上級官僚たちの間で起き始める。




