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三章 試作一号機

同年、五月十七日。

S.520試作一号機の設計書が完成した。

しかし、紫羅陸軍大臣はこの設計書を見て激怒する。

「なんだこれは!!」

紫羅陸軍大臣はそう怒鳴ると、シゼルに設計書を投げつけた。

「これが二十七万リズで運用できる装備ですよ」

シゼルは顔に張り付いた設計書を剥がしながらそう言った。

「・・・」

紫羅陸軍大臣は怒りで震えている。

「陸軍大臣が言う兵器を運用しようと思ったら七億リズは必要です。国産パーツだってただじゃないんです」

シゼルは別の設計書を見せてそう言った。

紫羅陸軍大臣は二つ目の設計書を奪い取ってじっくりと見始めた。

「・・・」

紫羅陸軍大臣の肌から時が経つにつれて冷や汗を滲み出てくる。

「ここのバリア!もっと安くできるはずだ」

設計書を指さした紫羅陸軍大臣はシゼルを見て威圧するようにそう言った。

「バリアの構造は意外と複雑でしてね。実は同じ構造のものが重ねられてたり、分厚いのが一枚あるわけじゃないんですよ」

シゼルはお茶を淹れながらそう言った。

「基礎膜に耐衝撃膜、その上に防火膜、跳弾膜、耐刃膜を重ねて初めて強力なバリアになるんです」

シゼルは紫羅陸軍大臣を見て淡々とそう言った。

「どれか一つくらいなくても大した変わりはないだろう!?」

紫羅陸軍大臣は机を何度もたたきながら威圧するようにそう言った。

「基礎膜が無ければ操縦士は重力負荷と暴風に耐えなければいけません。髪を長くするなんて絶対にダメ。ちょっとしたことで墜落事故に繋がります」

シゼルがそう言うと、紫羅陸軍大臣の動きが止まった。

「た、耐衝撃膜は!?」

紫羅陸軍大臣はシゼルを見て大声でそう言った。

「耐衝撃膜が無ければ操縦士は爆発の衝撃を直で受けることになります。体はバラバラにならなくても、内臓は全部破裂します」

「防火膜は!?」

紫羅陸軍大臣はシゼルを見てそう言った。

「防火膜が無ければエネルギーが切れるまで半永久的に燃えることになります。バリアは燃料の塊みたいなものですからね」

「跳弾膜は・・・!?」

紫羅陸軍大臣はシゼルを見て弱弱しくそう言った。

「跳弾膜が無ければ砲弾や榴弾片がバリアに突き刺さります。別種のエネルギーや金属の破片が深く食い込んでしまった場合、バリアの性能が大幅に低下します」

「耐刃膜は・・・」

紫羅陸軍大臣は元気を失った。

「耐刃膜が無ければバリアが簡単に切り裂かれます」

「・・・ど、どうにかこれを安価に運用できないか?」

頭を抱えた紫羅陸軍大臣はシゼルを見てそう言った。

「無理です」

シゼルがそう言うと、紫羅陸軍大臣が机に突っ伏した。


同年、五月二十三日。

何だかんだで生産されたS.520一号機の試験走行が始まった。

結局、採用されたのは二番目の設計書の機体である。

試験操縦士はシゼル。試験場は三番試験滑走路だ。

海軍軍人たちはS.520一号機の性能を見て大爆笑。

やはり、低出力エネルギー砲をバカにしている。

「・・・」

多くの陸軍軍人が恥ずかしそうに見守る中、S.520試作一号機が動き出した。

試験走行を開始したS.520試作一号機は徐々に速度を上げ始める。

(十五キロ・・・まだまだ大丈夫だ・・・)

パトリシアは端末に映る情報を見た。

「車輪式・・・」

「古すぎるだろ!」

海軍軍人たちはS.520試作一号機を見て大笑いしながらそう言った。

しかし、試験走行が進んでいくと笑いは一気に止んだ。

S.520試作一号機は途轍もない速度と機動力で飛行場を駆け回り、エネルギー弾を上空にばら撒いて標的機を一瞬で火の玉に変える。

標的を撃墜したS.520試作一号機は最高速度からブレーキをかけて綺麗にドリフトしながら停止する。

この時にはもうバカにする者はいなかった。

「流石だ!流石はフィトミア博士だ!」

悔しがる海軍軍人を見た紫羅陸軍大臣はシゼル・S.520試作一号機を見て嬉しそうに笑みながら言った。

「強いのは確かだよ。でも、新兵が使うには癖がある」

シゼル・S.520試作一号機は紫羅陸軍大臣を見てそう言った。

「そ、そうなのか?」

紫羅陸軍大臣はシゼル・S.520試作一号機を見てそう言った。

「もう少し改良しなきゃ」

シゼルはS.520試作一号機から降りながらそう言った。

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