二十六章 月浜の英雄たちが立ち上がる
同年、五月二十日。
政府が広がり続けるデモクラシーを再度武力で鎮圧しようとしているという情報を手に入れた三崎装甲師団がクーデターを起こした。
字江摩野島の領有を主張して滞在していた月浜軍人たちは本件を対処をするため本土へ帰還を余儀なくされた。
字江摩野島から月浜人がいなくなると、これがチャンスだと目を輝かせた中立諸国の商人たちが字江摩野島の民たちに武器を売り始めた。
防衛戦力がなく不安で震えていた字江摩野島の民たちは喜んで武器を買い、大量の貴金属が中立諸国の商人たちに渡った。
午後六時七分。
三崎装甲師団によるクーデターの一報がシゼルたちが居る月浜基地にも届いた。
大臣命令によって三崎装甲師団の話は禁止になったが、月浜基地の奇妙な盛り上がりは消えない。
「クーデターを起こす気でしょうか・・・」
眉を顰めたパトリシアはシゼルとローラを見て心配そうに言った。
「三崎装甲師団は高宮基地の部隊だったな」
ローラはパトリシアを見てそう言った。
「うん・・・」
眉を顰めたパトリシアはローラを見てそう言った。
「高宮基地は辺境基地だったはずだが、なぜそこの部隊が動いただけでここまでの雰囲気になる」
「三崎師団長は第一期高咲政権で陸軍大臣を務めてたし、第一次国境戦線でアーヴァン連合軍を返り討ちにした月浜の英雄だからね」
二つのマグカップを持ったシゼルはローラを見てそう言うと、ローラの前にマグカップを置いた。
「それに加えて人望もすごく厚い・・・だから、こんな雰囲気に」
パトリシアはローラを見てそうった。
「副総帥が謝罪する程度では事態は収束しないだろうな・・・」
ローラはシゼルを見てそう言うと、マグカップを持ってお茶を飲んだ。
午後十時八分。
第一次高咲政権で月浜国総帥高咲 重海と共に月浜を築き、支えてきた三条戦車大連隊、睦神特別歩兵師団、島岩水雷戦隊が次々とクーデターを決行。
夜闇の中サーチライトなどを一切つけることなく行動する島岩水雷戦隊が行った魚雷攻撃によって字江摩野島から帰還する第十三艦隊が壊滅。
クアンサ中隊は沈没する重巡洋艦三条から急いで脱出して月浜本土に帰還した。
同年、五月二十一日。
ビゼル率いる月浜の英雄たちが高咲邸に乗り込んで月浜国総帥高咲 重海に第四期政権に解散を要求。
月浜国総帥高咲 重海は解散を受け入れクーデターは終わった。
重海は事件が起きた広場に赴き追悼を行った後、デモクラシーを行う民衆と話し合った。
字江摩野島の領有権がもうないことを説明し、月浜が受け取ったディールズリズを国民のために使うことを民衆に約束して五十六年デモクラシーは収束した。
ここから月浜は軍縮の時代に突入する。




