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二十二章 ジェルドフドス改対橘花国海軍第一艦隊

同年、五月十三日の深夜、橘花国海軍第一艦隊が字江摩野島沖へ進攻した。

これを探知した月浜字江摩野島陸海軍共同基地から第一水雷戦隊(すいらいせんたい)潜水艦隊(せんすいかんたい)が出撃した。

そして、午前三時七分。第一水雷戦隊と潜水艦隊が橘花国海軍第一艦隊を迎え撃ち、字江摩野島の攻防が始まった。

海軍の戦力差は約五倍・・・各国の専門家が出した情報を見て艦隊戦は前哨戦だと考えた橘花海軍第一艦隊だったが艦隊戦での戦況は劣勢となった。

字江摩野島の攻防の戦況を聞いたパトリシアは、この戦況をやや疑問に思ったのかシゼルに疑問を問いかける。

「どうしてこんな状況に?戦力差五倍ですよ?」

パトリシアはシゼルを見てそう言った。

「確かに専門家たちは海軍の戦力差は五倍であるという見解を出した。これは中立陣営の専門家も同じ考えで揺るぎない」

シゼルはボードを見ながらそう言うと、駒を持って駒を動かした。

「じゃあ、どうして?」

パトリシアはシゼルを見てそう言うと、ボードを見た。

「橘花軍も都合のいい部分だけしか見なかった」

シゼルはボードを見てそう言った。

「海軍差は約五倍。こんな一文しか書かれてない分析書は分析書じゃなくて子供の日記だ」

シゼルは動かされる駒を見てそう言った。

「中立陣営ディールズ貴国の民間向け第一号東部海軍戦力分析書には例の文の次にこう書かれてる」

シゼルはそう言いながら駒を動かした。

「しかし、海兵の練度は月浜の方が遥かに上である。僅か二十秒の間に戦艦の砲弾を装填して三十秒で装填可能な状態まで持ち込めるこの練度は我々の脅威となるだろう」

シゼルはパトリシアを見てそう言った。

「・・・練度の違い・・・」

パトリシアはそう言いながら駒を動かした。

「まぁ、今回は戦力のほとんどを投入してるから月浜海軍の優勢ってだけだけどね」

シゼルはそう言いながら駒を動かした。

「はッ!」

パトリシアはボードを見て頭を抱えた。

第一艦攻部隊クアンサ中隊が月浜軍字江摩野島基地から離陸すると、戦況はさらに傾いた。

今回の主戦力だった空母高山は潜水艦から攻撃を受けて轟沈、逃げ回っていた補給船美高は疑似神姫に見つかってエネルギー砲で沈められた。

危機に陥った橘花国海軍第一艦隊の旗艦、戦艦泣代(せんかんなくしろ)は字江摩野島への突撃を敢行。

約三千八百人の海兵が歩兵銃を持って上陸準備を始めた。

クアンサ中隊から猛攻撃を受ける中、最大戦速で字江摩野島へ突撃する。

戦艦泣代へ攻撃を続けていたクアンサ中隊の隊長レイダー・シー・クアンサ陸軍大尉は全く沈む気配を見せない戦艦泣代を見て一度爆弾を補給するという選択をした。

一時帰還したクアンサ中隊から報告を聞いた十全(じゅうぜん)海軍少尉兼月浜字江摩野島陸海軍共同基地指揮官は、戦艦泣代が採掘場に向けて突撃していると勘違いした。

この勘違いがさらに橘花国海軍第一艦隊を苦しめることとなる。

「ジェルドフドスだ!ジェルドフドスに救援要請を送れ!最近フィトミア博士によって攻撃姫に改良されたと聞く!」

冷や汗を垂らす十全海軍少尉は海軍軍人たちを見て大声でそう言った。

字江摩野島陸海軍共同基地から救援要請を受けて飛び立ったロージー・アーカー・ギブソン陸軍少尉搭乗ジェルドフドスが戦艦泣代に到着するまで一分もかからなかった。

「月浜本土方向より一機の疑似神姫飛来!」

観測士は小さな黒い点を見てそう言った。

「対空戦闘用意!このまま全速力で突っ込む!!」

戦艦泣代の艦長、八雲(やくも)がそう言った瞬間、大きな揺れが戦艦泣代を襲った。

「状況!!」

八雲艦長は大声でそう言った。

「ロケット弾が多数直撃!船尾大破!!」

甲板の乗組員1は伝達管を掴んで叫んだ。

次の瞬間、戦艦泣代の甲板に爆弾が直撃して大爆発を起こした。

「武装交換」

ロージー・ジェルドフドスがそう言うと、三番、四番爆弾倉が開いて魚雷が出てきた。

「ぎょ、魚雷だ!!あの疑似神姫、魚雷を積んでやがる!!」

観測士は冷や汗をかいて叫んだ。

「不味い・・・」

八雲艦長は冷や汗を垂らしながらそう言った。

船尾に重大な損傷を受けて速力が大幅に低下した戦艦泣代は的でしかない。

戦艦泣代は低空飛行を始めたロージー・ジェルドフドスに凄まじい勢いで対空砲火を行う。

しかし、対空砲火は全くと言っていいほど通じず魚雷は無事に全弾投下された。

ロージー・ジェルドフドスは急上昇して雲の中に消えていく。

その数秒後、戦艦泣代が大爆発を起こす。

そして、爆発の衝撃が雲を消し飛ばして爆炎が空高く昇った。

改良型ジェルドフドスの登場と戦艦泣代の沈没は東和連合に衝撃を与えた。

東和連合加盟国の動きが鈍り、近隣の中立国へ併合を求める国も現れる。

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