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二十章 ジェルドフドスの第一次改修その一

同年、五月十日。

陸軍がS.開発局に疑似神姫の改良を改良するよう命令を出した。

選ばれた疑似神姫はかつてのH.開発局が開発・製造を行ったTT-42B-23 ジェルドフドス。

軍部の無茶を聞いて超出力砲を二基も搭載したことでエネルギーと循環剤を大量に消費して長く飛べず碌に戦闘もできない迷機になってしまった疑似神姫だ。

「どんな感じに改良するんですか?」

パトリシアはシゼルを見て笑みながらそう言った。

「対地攻撃姫かな」

シゼルは塗装と外装が剥がされたジェルドフドスを見てそう言った。

「通常の疑似神姫ではなく?」

パトリシアはシゼルを見て首を傾げながらそう言った。

「こんな大きな疑似神姫が空戦するなんて無茶だよ」

シゼルはそう言うと、柵を掴んで二階から一階に飛び降りた。

パトリシアも続いて二階から一階に飛び降りた。

「これ、なんで直結式(ちょっけつしき)なんですか?」

パトリシアはエンジンを見てそう言った。

「当時のH.はコンピューター系に弱かったからね。高度なコンピューター制御が必須な多重制御式(たじゅうせいぎょしき)は採用できなかった」

シゼルはマーカーペンでパーツに印をつけながらそう言った。

「じゃあ、今回は多重制御式にするんですか?」

パトリシアはシゼルを見てそう言った。

「そう」

マーカーペンで印をつけるシゼルがそう言うと、開発局にローラが来た。

「持ってきた」

箱を持ったローラはシゼルを見てそう言った。

「オケ、ありがとう」

シゼルはローラを見て笑みながらそう言った。

「それが例の迷機か」

ローラは塗装と外装が剥がされたジェルドフドスを見てそう言った。

「そう」

「名前を挙げただけで整備士が泣いて逃げ出すと言われるだけのことはあるな」

ローラは笑いながらそう言った。

「何持ってきたの?」

パトリシアはローラを見て笑みながらそう言った。

「チップセットだ」

ローラはパトリシアを見てそう言った。

「海軍のチップセットを使うんですか!?」

パトリシアはシゼルを見て驚きながらそう言った。

「そう。うちには五十四ナノメートルプロセスルールのチップセットなんてないからさ」

シゼルは部品を外しながらそう言った。

「ないなら作ればいいじゃないですか!大臣に怒られますよ!?」

驚くパトリシアはシゼルを見て大声でそう言った。

「どこで作ったチップセットかなんてあいつらにはわかんないよ。調査能力がないんだから」

シゼルはそう言うと、部品を投げ捨てた。

「しかし、同じ国籍の軍隊がいがみ合うとは・・・この国の程度が知れるな」

椅子に座ったローラは滑り転がって来た部品を見てそう言った。

「またそんなこと言って・・・」

眉を顰めたパトリシアはローラを見て呆れたようにそう言った。

「列強と呼ばれる国々は統率が取れている」

「project.S.520が大きく進展し、字江摩野島侵攻が成功してからアーヴァン決戦などと軍部は言うが現状はただの寝言だ」

ローラはそう言うと、投げ捨てられたエンジンを踏みつけた。

「統率力を同等にしなければ話にならない。アーヴァン決戦前に衰退して崩壊するのが先だろう」

ローラはパトリシアを見てそう言った。

「・・・フィトミア博士・・・」

パトリシアはシゼルを見て助けを求めるように言った。

「衰退して崩壊するかは別として、アーヴァン陣営と同じ土俵に居ないのは確かだよね」

シゼルはそう言いながら伸びをした。

「国の広さも生産能力も全く違うわけだし」

シゼルはそう言いながら棚まで移動し、棚から箱を取り出して台車に乗せた。

「流石の滑らかさだ」

箱を開けたローラは大小様々大量のベアリングを見て笑みながらそう言った。

「ベアリング?」

パトリシアは大小様々大量のベアリングを見てそう言った。

「疑似神姫に使うベアリングは半導体と同じくらい精密さが求められる。そんなものを新規で作れるほど余裕はない」

ローラはパトリシアを見て笑みながらそう言った。

「・・・」

パトリシアはローラを見て驚きながら黙った。

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