十九章 陸海軍技術競争
同年、五月八日。
陸海軍の開発局が同時にproject.S.520の開発を行い始めたことで陸軍対海軍の技術競争が始まった。
シゼル率いるS.開発局は従来の技術を生かしてS.520を設計し、ローラ率いるハ-18番開発局は革新的な技術を使ってS.520を設計する。
しかし、この方針を天府陸軍大臣は激しく否定した。
「こんな古いものではダメだ!!海軍に負けない革新的な技術を詰め込むんだ!!」
天府陸軍大臣は机を叩き、設計紙をグシャッと握ってそう怒鳴った。
「予算に縛りがあるうちには無理」
鉛筆を握ったシゼルは天府陸軍大臣を見てそう言った。
「技術者ごときが口答えをするな!!」
天府陸軍大臣はシゼルを見て怒鳴った。
「海軍は新型戦艦の建造を中止してまで予算を開発局に回してるのに・・・」
シゼルは天府陸軍大臣の手を退かして設計紙を捨てた。
「陸軍は口を開けばコストカット。海軍みたいな開発なんてできるわけないじゃん」
シゼルは天府陸軍大臣を見てそう言った。
「・・・」
怒筋を浮かべた天府陸軍大臣は怒りで震えている。
その時、シゼルが机を思いっきり叩いた。
パトリシアたちと天府陸軍大臣は驚いて腰を抜かした。
「怒る暇があるなら制限解除しろよ。何に使ってるのかわからないけどさ」
シゼルは天府陸軍大臣を見て淡々とそう言った。
「・・・」
天府陸軍大臣は少し動揺しながら黙り込んだ。
「制限解除出来たらまた来て」
シゼルは新しい設計紙を机の上に置いてそう言った。
同年、五月九日。
S.開発局にかけられた開発費用の制限が解除された。
制限が解除された瞬間、シゼルは新しい工作機を大量に輸入して凄まじく精密で精巧で高品質な部品を生産し始めた。
これらの部品が使われたS.520試製四号機はS.520試作三号機の性能を大幅に超えていく。
多くの実験を基に算出された新造部品の性能値を見た陸軍軍人たちは欲を出し始める。