十七章 月浜の双翼
同年、五月一日。
新しい陸軍大臣が決まったためシゼルとローラは月浜に戻った。
シゼルとローラは天府新任陸軍大臣に挨拶を行い、S.開発局に入った。
「八日ぶりだけどなんだか久しぶりな気がするね」
パトリシアはローラを見て笑みながらそう言った。
「そうだな」
ローラはパトリシアを見てそう言った。
「S.開発局の技術者諸君、S.520の計画を見直したいと思っているんだ」
天府陸軍大臣はシゼルたちを見て笑みながらそう言った。
「開発資金増やしてくれるとか!?」
パトリシアは目を輝かせながらそう言った。
「高咲陸軍省長官閣下はコストカットを求めておられる。開発規模を縮小させるように」
天府陸軍大臣の言葉にパトリシアが泣き始めた。
天府陸軍大臣が開発局から出ると、パトリシアが文句を言い始めた。
「今以上に資金を絞るなんて鬼畜だ!もうどうすればいいんだよ~」
パトリシアは泣きながらそう言った。
「結構困ったことになったね」
シゼルはローラを見てそう言った。
「紫羅以上の無能がいるとはな・・・」
ローラはドン引きしながらそう言った。
「よし、こうなったら双翼計画だ」
シゼルは立ち上がりながらそう言った。
「双翼計画?」
パトリシアたちはシゼルを見てそう言った。
「政治には右翼と左翼、二つの派閥があるでしょ?」
シゼルはパトリシアたちを見てそう言った。
「あるな」
ローラはシゼルを見てそう言った。
「それを真似て開発局を二つに分けるんだ」
「従来技術派と革新技術派って感じで」
シゼルがローラを見て笑みながらそう言った。
「でも、そう簡単にはわけられませんよ?他の開発局を吸収合併する方が良いと思います」
ジャネットはシゼルを見てそう言った。
「必要なのは開発費だけだ。そんな状況でそんなことをすれば多くの技術者が路頭に迷うことになる」
ローラはじぇねッとを見てそう言った。
「任せなって。私に良い考えがあるから」
シゼルはジャネットを見て笑みながらそう言った。
そうと決まるとシゼルは黒田海軍大臣の所へ行った。
海軍は陸軍と違い疑似神姫を保有していない。
そして、それが強烈な劣等感になって人が集まらない状況が続いている。
「私たち月浜海軍は疑似神姫の保有を長年夢見ていてね」
黒田海軍大臣はシゼルを見て嬉しそうに笑みながら言った。
「陸軍ばかり威張り散らして、私たち海軍は肩身が狭い」
黒田海軍大臣は腕を組んで悔しそうに言った。
「費用は我々海軍が全て負担しよう。数千億程度で海軍に人が集まるなら断る理由はない」
黒田海軍大臣はシゼルを見て笑みながらそう言った。
「ありがとうございます」
シゼルはそう言うと、頭を下げた。