一章 めんどうな開発依頼
「技術者は白衣はしっかり着なくちゃいけないの」
師匠はそう言って私の白衣をよく整えてた。
私の辛い記憶を肩代わりしてくれた師匠、私に前を向く機会を与えてくれた師匠。
そんな師匠は、私の胸の中でずっとずっと生きている。
千六百五十五年、五月十五日。
月浜国金城大都にある月浜基地。
この月浜基地内にあるS.開発局に月浜陸軍大臣が来ていた。
「新型兵器ねー・・・」
ティーカップを持ったシゼル・フィトミア・カーリンはそう言うと、お茶を飲んだ。
「そうだ。疑似神姫をサポートできて、煌桜を撃墜できて、広範囲に移動が可能でステルス性能がある兵器を高咲総帥閣下が求めておられる」
紫羅陸軍大臣はメモを取るシゼルを見てそう言った。
「総帥閣下に言うも言わないも自由だけど、要望を全部叶えるのは無理だよ」
ペンを握ったシゼルは紫羅陸軍大臣を見てそう言った。
「総帥閣下も私もそこまでバカじゃない」
紫羅陸軍大臣はシゼルを見てそう言った。
「私が思うに、月浜陸軍に必要なのは対空砲としても使えるエネルギー砲だ」
紫羅陸軍大臣はそう言うと、ティーカップとティーポットを引き寄せてお茶を淹れた。
「それはそう」
「しかし、現在の技術では対空車両にエネルギー砲を乗せるというのはほぼ不可能だ。熱問題があまりに厄介でな」
ティーカップを持った紫羅陸軍大臣はそう言うと、お茶を飲んだ。
「低出力エネルギー砲ならすぐ用意できるけど」
シゼルはそう言うと、メモ帳をしまった。
「低出力ではダメだ。煌桜を一撃で粉砕するような兵器が必要なのだよ」
「あのバリア、よく燃えると思うよ?確実に撃墜できるなら燃やしてでもいいんじゃない?」
「とにかく、対空砲としても使える高出力なエネルギー砲だ。君だけが頼りなんだぞ」
紫羅陸軍大臣はシゼルの肩を叩いてそう言うと、立ち上がって開発局から出た。
「無茶苦茶言いやがる・・・」
シゼルは頭を抱えながらそう言った。
同年、五月十六日。
S.開発局で新型兵器の開発が始まった。
新型エネルギー砲とそれを動かすための装備、project S.520。
一門のエネルギー砲と超広範囲索敵レーダーと誘導レーザーを搭載した小型で機動性に優れた疑似神姫。これがproject S.520だ。
「局長って毎回無茶を言いますよね。終わってるよ・・・」
パトリシア・ポリー・リーは蔑んだ目でシゼルを見てそう言った。
「これが軍部からの要望なんだよ・・・」
鉛筆を握ったシゼルは設計書とにらめっこしながら言った。
「本当にめんどうな奴らだ・・・」
鉛筆を握ったシゼルはそう言いながら設計書を書き始めた。
「局長、休憩の時間です」
休憩から戻って来た技術者1はシゼルを見てそう言った。
「もうそんな時間か」
鉛筆を握ったシゼルはそう言うと、鉛筆を置いて立ち上がった。
「うぅ・・・私も休憩したい・・・」
パトリシアは机に突っ伏しながらそう言った。
「一時間後ね」
コートを着たシゼルはそう言いながら部屋から出た。