第2話
喉がつかえる様な、息が出来ない様な。とにかく発語を完遂出来ない。窒息感。何度も試みては、その都度余計に苦しくなって脳が酸欠状態みたいになって行く。そのうちに自分が何を言いたかったのかわからなくなってしまう。喉の苦しさ、酸欠による白痴化。それが永遠みたいに続くなか、いつしか伝えるべき相手は居なくなって一人きり。それでもその苦しさは終わらない。
目が醒めた。7月14日日曜日。今年は三連休の中日にあたる。道の駅の駐車場は、夜中だというのに車中泊で8割がた埋まっている。
その中の1台。僕のねぐらは車だ。街には車中生活者らしき者を度々見かけるが、観光地であるここに僕以外にそんな奴が居るのだろうか?寝汗をぐっしょりかいて、寝ても覚めても悪夢、小用に便所へ、少し夜風に当たる。
人口300人の寒村に、今夜どうだろう、少なくとも50台は車中泊している。キャンピングカーの家族連れから軽自動車まで、一人は少数派。滞在人口は100人程増えているかもしれない。あの震災以降増加の一途を辿る車泊人口。皮肉な事に「タダで車中泊出来るのであれば、過ごしやすい時期には」こんなにも人が集まるのであって、それが村の宿泊施設へのニーズとイコールで結ばれる事はない。そんな搾取的に夜間の駐車場を占有する非日常を楽しむ群れの中で、僕の「日常としての車中泊」も、そこで見る悪夢も異質である。紛れたい夜に馴染む事なく、僕はいつもの僕のねぐらを駐車場から出し、住所を置いてある先日閉めた飲食店舗の駐車場へと移動して、また布団を被った。