第1話
白眼視
冷たい目で見る事。冷遇する事。悪意を持って人を見る事。
またあの夢だ。僕は何かを必死に訴えようとしている。状況は様々で、今回はたくさんの人の前で雑草の有効利用についてスピーチしている。山菜として馴染み深い蕨は、春の新芽から折り採ったり刈ったりすればいくらでも新たに新芽を出して秋まで食用として利用出来る。また、延びて開いた葉や硬くなった茎は強靭で腐敗しにくく、そこにも何らかの利用価値をみいだされるだろう。彼らの生活の主な舞台は地中の根であり、しっかり根を張った場所では地上部はさして重要ではないし、衰退する様なら数年に一度収穫や刈り取りを制限すれば良い。発見され尽くした様に感じられる世の中で新たな物に目移りするよりも、既存の資源の利用価値に目を向ける事が諸々良い影響を及ぼすのではないか?実際に蕨製品は通年流通し、その多くは輸入品である。また国内産のものも低単価で安定して産業として破綻している現状から、そこへの打撃への配慮も要らないどころか、輸入品との単価の逆転が起きたとしても資源量の爆発的増加によりむしろ有望な部分が勝るであろうし、蕨の輸入を停止したところで外圧があるとも考えづらい。そして蕨は食用文化が東アジアに限定された、伝統的な土着の食資源でもある。
聴衆は興味深く聴いている。さあいよいよ核心部分。
蕨に限らず、また食用としての利用に限らず、僕らが限定もしくは淘汰してしまった天然資源は枚挙にいとまがない。そこに着眼出来ないのは僕らが捉われたイ…メージ…で、あっ…て、それ…は、単なる…う…うわ…う…わ…