4.最終的にものをいうのは歩兵なのである-スープ出来たのデスヨ、シュエメイ-
全46話予定です
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地上での戦闘は、基本的にレイドライバーが行う。先ほども言ったが、レイドライバーが展開している戦場では、動きの遅い機械化部隊は足手まといにしかならないのである。
では、いっそ連れて来ない方がいいのでは? と言われるかもしれないが、それは違う。全方位観測システムがあるから大丈夫、といたいところだが、時に手数が足らなくなる場合がある。特に対空への警戒である。なので機械化部隊には対空兵装をした車両がいるのだ。
それに、レイドライバーだけで戦場は語れない。拠点の制圧にしてもそうだが、最終的にものをいうのは歩兵なのである。それは何十年経とうが昔から変わらない戦場のセオリーなのである。
そして、こうやって休息が取れるのは機械化部隊が警戒してくれているのと、二個あるコンピューターが交互に警戒をしているからである。
シュエメイたちには[人の脳を使った生体コンピューターが二台積まれているから、警戒はほぼ任せてもいい]と言われている。もちろん人の脳を使っている、と言われた時には多少の動揺もした。だが、そんなのでいちいち驚いていてはこのレイドライバーのパイロットは務まらない。それに、人体実験の話なら軍事教練時代から話題に上っている。自分たちが、その人体実験の結果を受け入れ、使いこなさなければならないのも。
なので直ぐに、
[了解しました]
と返事を返したものである。
「流石にスープくらいは作らないとね」
シュエメイたちはがれきを集めて簡単なコンロを作り、スープを温める。
今回の改修の一部である。それは、単独行動が執れるようにレイドライバーの背中側に、足された装甲板とリュックのようなものを下げている。その中にレーションやスープ、飲料といった食事が入っているのである。この装備で背中に被弾しなければ一か月の作戦行動が執れるように出来ている。飲料に関しては尿をろ過して真水に戻して足しに使っている。それはどの国も考える事は同じ、という事なのだろう。
外見で言えばそれくらいであるが、パイロットたちは休憩時は外に出るのを想定して防寒具をパイロットスーツの上から着ている。これはコックピット内の暖房の節約にも一役買っているのだ。
この戦地は寒冷地での戦闘である。そのデータ取りという側面も大きいのだろう。
「スープ出来たのデスヨ、シュエメイ」
そうライラが言ってスープの入った大き目のマグカップを持ってくる。
「しかし、前から気になっていたんですが、少し言葉に変な訛りがあります?」
シュエメイがそう指摘すると、
「私は、元々は孤児院出身だったんデスヨ。そこで軍に見いだされてここに来たのデス。言葉も孤児院の時に教わったよ。なので、母国語は帝国のモノとは違うのデス」
と言ってライラは話し始めた。
元々ライラは中東出身だ。だからだろう、シュエメイに比べて若干肌の色が濃い。
今でこそ鳴りを潜めはしたものの、三国になって間もない頃は内戦、それに続いてその土地から逃げる人々、また内戦、場合によっては他国との戦闘と、混乱を極めていた。現在の三国がやっと内政にリソースを割けるようになってまだ数年しか経っていないのである。それまでは混乱の時代が続いた。
混乱に次ぐ混乱、内戦に続く内戦で一時期、国境線はあって無いも同然だった時期がある。その時代に内戦を避けて大陸の国々に移住してきたのがライラである。
内戦を避ける理由。
それは人殺しに巻き込まれたくない、というのが一番大きいだろう。何と言っても内部戦乱なのだから。そんな弾が飛び交っている土地になんていられるか、というところである。
もう一つの理由。
それが拉致や婦女暴行といった[人間の黒い部分]である。特に女子供はその標的にされやすい。そして、残念ながら男女差で言えば圧倒的に女性の方が、大人と子供で言えば圧倒的に子供の方が腕力などの力が弱いのである。必然、一度組み敷かれればまず逃れることは出来ない。
だからこそ、どさくさに紛れてそんな犯罪が横行するのである。いわゆる無法地帯である。そんな場所には人さらいなども出やすい。というか、軍の関係者が率先してやっているような場所もあると聞く。
そんな中ライラは難を逃れようと他の難民と一緒に四方八方へと散らばった。ある者はヨーロッパの方へ、ある者は旧インド方面へ、そして、ライラたちは大陸の国へと渡っていったのだ。
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